テレビレビュー『地面師たち』(2024)鬼畜・ハリソン山中の存在感
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Netflixドラマで『極悪女王』が
出てくるまでトップだった作品
「地面師」とは土地の所有者になりすまし、売却を持ち掛け、代金を騙し取る詐欺のことです。
'17年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルにした作品となっています。
フィクション作品でありながら、同事件に詳しい筋の人によると、6~7割は現実にあったことをベースにしていると言っていいそうです。
「事実は小説より奇なり」とも言いますが、現実にあったことを元にしているからこそ、このようなヒリヒリとした感覚の作品に仕上がったのではないでしょうか。
本作の不思議なところは
悪者たちが主人公で、これがとんでもなく悪い奴らなので、普通に考えれば、その悪者たちが捕まってこそ、「痛快」に感じるはずなのですが、本作ではこれと逆の感情も生まれます。
なんせ、主人公たちが本作で挑む大型詐欺は、100億ものお金が絡む大型物件で、途方もないほどの困難に満ちているのです。
悪事とは言え、そんな逆境に挑む人間に、エールを送る気持ちも沸いてしまうのが人情というところでしょうか(時には『ミッションインポッシブル』のように、時には『オーシャンズ11』のように)。
そういった意味では、とても不思議な感覚の作品でした。
本作を語るうえで忘れてはならないのは
豊川悦司演じる「ハリソン山中」という人物です。
彼はこの地面師グループのボスであり、影からメンバーを操る役割を担っています。
この男がとんでもない鬼畜で、見ていて吐き気を催すほど不快な人物ではあるのですが、なんとも言えない魅力に満ちた人物でもあるのです。
人の生き死にをなんとも思わない、とにかくヤバい奴で、実は仲間たちもどこかで警戒している人物でした。
そこに関わってくるのが本作の主人公とも言うべき、綾野剛演じる辻本拓海で、彼には家族を失った過去がありました。
ハリソンに抜擢されて地面師となった辻本でしたが、物語が進むにつれて、この二人の間に、当初は見えなかったつながりが徐々に明かされていくんですよね。
こちらの物語の展開も目が離せません。
映像を手掛けたのは大根仁監督、音楽は石野卓球(そして、俳優としてピエール瀧も出演)です。
この組み合わせは確信犯的なもので、映像作品としても質の高い作品になっています。
ぜひ、耳を澄ませて音楽にも注目してみてください。
(なお、残酷な描写、性描写が過激なところもあるのでご注意を)
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