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音楽レビュー『Second Coming』The Stone Roses(1994)ハードでディープなサウンドと穏やかなサウンドのバランスが絶妙


「マッドチェスター」を牽引したバンド

はじめに断っておきますが、
もともと、私はギターを
サウンドの中核に据えた
ロックバンドを

それほど多く聴いていないので、
的外れな話が多いかもしれません。

そのことを了承したうえで、
読んでいただけるとありがたいです。

ロックには詳しくない私ですが、
ストーン・ローゼズの名は、
もちろん知っていて、
ずっと気になっていたバンドでした。

たぶん、18歳の頃には
知っていたと思うんですが、

実際に聴くまでに、
20年以上も経つとは、
当時は思いもしませんでしたね。

ストーン・ローゼズは、
’83年に結成された
イギリスのロックバンドです。

初期の頃は、
マンチェスターを中心にして起こった
「マッドチェスター」という
ムーブメントを牽引するバンドでした。

ロックにそれほど詳しくない私でも、
なぜ、このバンドの名前を
知っていたのかというと、

この「マッドチェスター」
というムーブメントが、
私が好きだったダンスミュージックと、
深い関りのあるムーブメントだったからです。

私が10代の頃から好きだった
ニュー・オーダー、
808ステイトといったバンドも
このムーブメントに属するバンドでした。

といっても、ニュー・オーダーや
808ステイトの音楽性と、
ストーン・ローゼズの音楽性を比べると、

まったく重ならない、
とまでは言いませんが、
かなりサウンドが異なります。

ニュー・オーダーも808ステイトも、
ロックバンドではありますが、
打ち込みを使ったサウンドが特徴的です。

一方のストーン・ローゼズは、
それと比べると、
王道のロックらしい、
ギターを中心にしたサウンドですね。

「マッドチェスター」は、
「マンチェスター」という場所が
拠点になったムーブメントであり、

そこに「クラブカルチャー」の影響による
「ダンス」を主体にした、
ライブのステージの在り方に
大きな特徴があったんですね。

それは音楽性というよりは、
観客の音楽への向き合い方が、
(ダンスを通して音楽を楽しむ)
共通しているのであって、

音楽性が共通している
ということではないんです。

ですから、ニュー・オーダー、
808ステイト、ストーン・ローゼズは、

同時代のマンチェスターの
バンドでありながら、
それぞれの音楽性は異なっていて、

なおかつ「ダンス」を主体にした
という点では、共通のムーブメントに
括られたということなんですね。

ブリットポップ期に再び登場

ストーン・ローゼズが
1作目のアルバムを発表したのは、
’89年です。

その後、2作目である本盤を発表したのが、
'94年の12月でした。

この間に、イギリスの音楽シーンは、
大きな変化を見せており、
「ブリットポップ」という
新しいムーブメントが起こっていたのです。

’80年代の終わりに、
アメリカのニルヴァーナなどが台頭し、
「グランジ」という新しいロックが
世界のロックチャートを席巻していました。

一方、イギリスのロックは、
やや停滞気味になっていたんですね。

そこへ登場したのが「ブリットポップ」でした。

ブラーやオアシスといった
新しいバンドが登場し、
イギリスのロックが
再び注目を集めた時代です。

そんな中で発表された
ストーン・ローゼズの
2作目のアルバムは
どんな作品だったのでしょうか。

ハードでディープなサウンドと
穏やかなサウンドのバランスが絶妙

私はストーン・ローゼズの
1作目のアルバムを
聴き込んではいないのですが、

はじめて聴いたのは、
そちらのアルバムでした。

’80年代のイギリスらしい
パンク色が強いサウンドで、

その時代のサウンドを若い頃に
聴いていた私としては、
聴きやすさを感じました。

そして、今回聴いた
2作目のアルバムですが、
1作目ともまた違う感じで、

最初は「苦手かな?」
という感じもあったんですが、
いくつか聴きやすい曲もあり、

聴き込んでいるうちに、
自然と耳に馴染んできました。

特に、最初に私の耳を掴んだのは、
⑦『Begging You』ですね。

この曲は、リズムトラックに
打ち込みも使われたサウンドで、
同時代の「ビッグビート(※)」を
先取りしたような曲に感じました。

(※ビッグビート:
  生楽器をサンプリングした
  ビートで奏でられるロック的なテクノ。
  テクノの派生ジャンル。
  「デジタルロック」などとも言われる)

打ち込みが目立つのは、
この1曲のみで、

それ以外の曲は、
ギターが主体のサウンドです。

しかし、そのサウンドは、
変化に富んでおり、
サイケデリックなサウンドもあれば、
フォークロック調のものもあります。

ハードでディープなサウンドと
ブルースやカントリーを彷彿させる
穏やかなサウンドが
交互に繰り返されるようなアルバムですね。

それらの異なるサウンドが
違和感なく構成されており、
1曲ごとの完成度もさることながら、

アルバムとしての構成も
素晴らしい作品になっています。

そして、このアルバムを最後に、
新しい作品が作られなかったというのが、
彼らをまた「伝説」にしている
ゆえんでもあるのでしょうね。


【作品情報】
リリース:1994年
アーティスト:The Stone Roses
レーベル:ゲフィン・レコード

【アーティストについて】
’83~’96、'11~'17年に活動した
イギリスのロックバンド。

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栗英田テツヲさんの記事がきっかけで、
ストーン・ローゼズに興味を持ちました。
ありがとうございます。

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