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テレビレビュー『あなたの番です』(2019)疑心暗鬼が止まらない



秋元康の実生活から着想

もう5年も前の作品なので、
リアルタイムで観ていた方には、
少し懐かしく感じるかもしれませんが、

私自身は以前から気になっていて、
ようやく観ることができました。

普通のドラマは1クール(3か月)で、
大体、10話前後で完結するので、
気軽に観られるのですが、

本作は2クール放送されており、
全20話というのもあって、
「おもしろそう」と思いながら、
ずっと先延ばしになっていました。

(配信だと好きなタイミングで
 観られるのがいいところ)

秋元康が企画・原案というので、
話題になりました。

秋元康といえば、
どちらかというと、
バラエティ番組の監修や
作詞家のイメージが強いですが、

経歴を見ると、
結構、ドラマや映画にも
携わっているんですね。

なんでもこの原案を
思いつくきっかけになったのは、
秋元康自身が出席した
住民会だったそうです。

同じマンションに住んでいても、
年齢や職業がバラバラで、
そういう人たちが会話をするのを見て、
「交換殺人」という着想を得たんですね。

このエピソードは、
企画屋として流石!という感じがします。

それは入居1日目の夜に起こった

「住民会」「交換殺人」
というキーワードが
出揃ったところで、

すでに本作の説明は
終わったも同然ですが、

ストーリーについて、
もう少し詳しく書いてみましょう。

主人公は手塚奈菜(原田知世)、
手塚翔太(田中圭)の新婚夫婦です。

二人はマンションの一室に入居します。

5階建てのマンションで、
各階に4部屋あるので、
20世帯が暮らすマンションです。

入居早々、管理人(竹中直人)が
勝手に部屋に入ってきたり、
お隣さん(奈緒)が
ちょっと変わっていたり、

新婚生活のワクワク感もありつつ、
序盤から不穏な空気も
徐々ににじみ出ています。

はじめての住民会に出席したのは、
妻・奈菜でした。

その住民会で余興の一つとして、
あるゲームが実施されました。

そのゲームとは
住民会に出席した人たちに
小さな白紙を配り、

そこに自分が「死んでほしい」
と思っている人の名前を書き、
それをシャッフルして配り直す
というゲームでした。

つまり、住民会に参加した人は
その場にいた誰かの
「死んでほしい人」の名前を
知ってしまうことになったのです。

ただの悪ふざけでやったことでしたが、
ミステリー好きの奈菜は、
ついそこで「交換殺人」の話を
してしまいました。

この紙に書かれた人を
その人の代わりに殺害すれば、
疑われにくいという話ですね。

そんなブラックなジョークもありつつ、
その場はそこでお開きとなります。

しかし、その夜、
マンションの管理人が
屋上から転落し、
亡くなってしまいます。

管理人の自宅からは、
脳腫瘍の診断書が見つかり、
余命が長くなかったことから、
自殺と判断されました。

ところが翌朝、
マンションの掲示板に

「管理人さん」と書かれたメモが
貼られているのを住民たちが
発見します。

つまり、この紙を引いた住民が
管理人を殺害したのではないか、
という疑惑が浮上したわけです。

一見、普通に見えるのに、
とんでもなく怪しい人たち

住民会での交換ゲーム、
その直後に管理人が亡くなり、
住民同士は疑心暗鬼に陥ります。

そして、この住民たちの
キャストがいずれも曲者揃いで、
誰もが普通のようでいて、
誰もが怪しく見える、

そんな達者な役者陣を揃えています。

実際に自分の住むところで
こんなことがあったら、
普段は普通に見えても、
誰もが怪しく見えるのでしょうね。

本作はそういった人間の心理を
うまく描いています。

全20話という長大なボリュームですが、
最後まで飽きずに
観続けることができたのは、

俳優たちの巧みな演技だけではなく、
演出面によるところも
大きい気がします。

こういったミステリーでは、
「気持ち悪さ」「不快感」を
どうやってリアルに伝えるかが
重要だと思うんですが、

本作はその点がよくできていました。

映像のつなげ方、切り取り方が
常に視聴者の興味を惹くように
うまく計算されており、

なおかつ、その継ぎ目が、
漫然と観ている人には
気が付かない程度のことなんです。

このような作品こそ、
そういった何気ない配慮が
とても重要なんですよね。

そして、私が特に気に入ったのは、
音楽ですね。

これもものすごく
気持ち悪い音楽でした。

普通のドラマでは使わないような
電子音、特に人間の声を
サンプリングしたと思われる

不思議なサウンドは
一度聴いたら忘れられないほど、
インパクトがありました。

人間の怖さ、もろさを描きつつ、
純然たるミステリーとしての
ワクワク感、そわそわ感も
よくできています。


【作品情報】
2019年放送(全20話)
原案・企画:秋元康
脚本:福原充則
演出:佐久間紀佳
   小室直子
   中茎強
   内田秀実
出演:原田知世
   田中圭
   西野七瀬
放送局:日本テレビ
配信:TVer、Hulu

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