勉強初心者に本居宣長が教えたこと5
以下の文章は『勉強初心者に本居宣長が教えたこと4』の続きです。
最初から読む場合はこちらから『勉強初心者に宣長先生が教えたこと。』
登場人物
先生:本居宣長(もとおり のりなが)〈享年71歳〉
生徒:春 ひみの(はる ひみの)〈高1〉
原文を参照できるよう、本文内に「岩波文庫『うい山ふみ 鈴屋答問録』本居宣長著 2007年4月13日第39刷」のページ番号を記載しています。
※本作に登場する宣長先生は、あくまで実際の本居宣長をイメージしたキャラクターとお考え下さい。
法律と儀式から日本を知る
22~25ページを参照
ひみの
「先生、日本を知るための学問が国学だというのはわかりましたけど、具体的にどんなことを勉強すればいいんですか?」
宣長
「そうだね。まず国のありかたを知るには法律を勉強する必要があります」
ひみの
「いきなり法律ですか?絶対無理です」
宣長
「まあ上級者向けではあるね。古代の法律は律令といって、日本の古い制度と中国から学んだ法律の知識を混ぜて作られている。そのため日本のことだけでなく、古代の中国のことも知らないと理解が難しいので、相当な覚悟をもって臨まないと難しいかもね」
ひみの
「もっと見た目に分かりやすいのが良いです」
宣長
「それなら『有職』はどうだろう。古代の役人の制度や儀式での作法を研究する学問で、当時の服装や暮らしにも関わるから、知っておけば古文のテストでも役に立つと思うよ」
ひみの
「服装って十二単(じゅうにひとえ)とかのことですか?」
宣長
「他にも男性の装束などだね。天皇から下級役人にいたるまで、儀式の種類や身分によって事細かに決められているから面白いよ。あと、儀式や作法の中には現代でも宮中や神社に残っているものもあるので、見に行けるものは見に行ってみると良いね」
ひみの
「いまでも続いてる儀式があるんですね。でも具体的に『有職』を勉強するにはどうしたらいいんですか?」
宣長
「これも古典から勉強するのが一番大事。儀式や作法も時代によって変わってくるのでなるべく古い記録を調べることが重要になる。具体的には『貞観儀式』『内裏式』『江家次第』『延喜式』などを読むといいよ」
ひみの
「またそんな難しい本ばっかり、読めるわけないじゃないですか」
宣長
「いきなり原文を読むのは無理かもしれないけど、初めのうちは古典全集に載ってる現代語訳だけを読むのもいいよ」
ひみの
「自分の国を知るのも大変ですね」
宣長
「そうだね。でも、外国を知ることばかりに労力を使うより、私は自分の国を知ることに力を使いたいと思うな。これは、日本のほうが外国より優れていると言いたいわけではなくて、外国のことは詳しいのに、自分の国のことは知らないということを残念に思うからなんだ」
あとがき
ひみの
「今回は特に内容が難しかった気がします。もう寝ていいですか?」
宣長
「まだ終わってないよ。あとここで寝ないで」
ひみの
「もう無理……」
宣長
「今日の内容をまとめると、古代の日本の姿を理解するには法律や様々な儀式を学ぶことが必要です。これらの学問も中国との関係が深いので大事なのはしっかり区別できること、これは優劣の問題ではなく、自分の国のことを全く知らないのはとても残念なことだからです。
これらの内容はとても難しいので簡単な所から入りましょう。最近は現代語訳があるものも多いし、装束の絵や図解もあるので理解しやすと思います。『律令』や『有職』といったものは現代の生活とかけ離れているので勉強するのも大変でしょう。でも、当時の考え方や暮らしに直接かかわる部分なので、よく知っていれば古代の日本の様子を理解するのに役立ちます」
ひみの
「……………ぐぅ」
おわり
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