炊き立てのご飯を食べたい…母89歳で炊飯器ユーザーに返り咲き
炊飯器からシューシューと上がる音を聞き、甘いご飯の香りを胸いっぱいに吸い込む・・・それだけでお腹がぐーっと鳴るから不思議です。
母(90)には認知症があります。母の暮らしを立て直そうと、介護が始まった直後に断捨離をしました。その際、しばらく使っていなかった三合炊きの炊飯器を手放しました。小規模多機能の事業所と契約して、昼と夕の二回の配食弁当を届けてもらうようになり、母が作るのは朝ごはんのトーストだけ。自分で煮炊きをする必要がない生活になったのです。「もうええ、炊飯器はもういらん、もうご飯を炊くことはないじゃろ」と言ったときの寂しげな母の顔を思い出します。
断捨離でサヨナラした炊飯器
我が家の断捨離は「今使っていないものは手放す」がモットーです。でも「必要になったら新しく買い直す」という約束もしています。母が「使うかもしれん」と考えるものは膨大な数があり、その中には「いつか使うかもしれないけど、一生日の目を浴びることはないもの」も含まれていました。
断捨離の目標は、「母が物にぶつからずにスムーズに移動できること」と「必要なものをすぐに探し出せるように整理整頓をすること」の2つです。ガツンガツンと断捨離を進めてきました。3ヶ月はかかったかと思います。炊飯器を置いていたところは、ダイニングテーブルの横の「一等地」。空いたスペースにお茶や水のペットボトルを置いたら便利そうなので、使っていない炊飯器をいったん処分することにしたのです。
炊飯器復活のきっかけ
断捨離をして、不用品を処分し、コンパクトな家具に買い替えました。カーテンも一新したら、室内が明るい雰囲気に包まれました。住み心地が格段にアップした生活が続いてある日、母が「炊き立てのご飯は美味しかったなぁ~」と言ったのです。落ち着いた暮らしを取り戻すことができて心が安定して、「ああしたい、こうしたい」、と暮らしを楽しむ意欲がわいてきたのだと思います。
「これはチャ~ンス ! また炊飯器を使えるようになるかもしれない」と考えた私は、Amazonですぐに調べました。すると・・・あ~るではありませんか!!「MAX1.5合炊き」のミニミニサイズ炊飯器が。一人暮らしの母にぴったりサイズ。レビューも高評価で、操作が簡単、美味しく炊き上がるなど、魅力盛りだくさんの炊飯器でした。さっそく購入して母に送ってみました。すると・・・
「こりゃ~可愛い~♡」と母は大喜び。気に入って、すぐにお米を買って炊飯器でワクワクしなかせら「ご飯炊き」に再挑戦しました。自分でご飯を炊くなんて、「何年ぶりかしら・・・」という体験だったかもしれません。介護が始まったばかりのころの母は、コンビニのおにぎりやカップラーメンを食べる生活でした。認知症がゆるやかに進行していて、大丈夫だったことが難しいと感じることが増えて、ご飯を炊いて食べる心の余裕がなくなっていたのだと思います。
できることは自分でなんでもしたい
介護が始まり、色々なサービスに守られて暮らしに不自由がなくなる一方で、自分で何かを責任持ってするチャンスがどんどん減ってきていた最中、「お人形さんみたいに座っておけばいいんじゃろうか」と母が切なそうに言った言葉を思い出します。
認知症には誤解と偏見がいっぱい
認知症があると新しいことはできないという偏見が社会には深く根付いています。
母にはアルツハイマー型の認知症があり、今は要介護1です。できることはなんでも自分でしたいと思っています。介護サービスを受けることが、暮らしが整うと、生きる自信が復活し、「まだまだ大丈夫」と思えるようになりました。一度あきらめた炊飯を、もう一度してみようかという意欲が湧いてきました。
母が愛用している炊飯器はこちらです。
操作は簡単ですが、たまぁに「うんともすんとも動かん」と電話がかかってくることがあります。そんな時は、ヘルパーさんに見に来てもらい、操作方法を母と一緒に確認してもらいます。すると、また数ヶ月は一人で難なく使いこなせるようになります。
認知症は個人差が非常に大きいと聞きます。また、認知症だからと丸め込まれた症状の中には、薬の副作用が影響していることもたくさんあるとも聞きます。
やる気の応援は次の挑戦への意欲につながる
ほっこり炊き上がった炊き立てのご飯は「美味しゅうてすぐに半分食べた」と母は言います。お茶碗に山盛り一杯はぺろりなんだそうです。食欲がないときでも、梅干しや昆布の佃煮などとお茶漬けにすると、さらさらとお腹に入るそうです。1.5合を一日でサラリと平らげる食欲モリモリになった母でした。それまでは「たくさんは食べられん(食べられない)」と配食弁当を残しがちでした。
炊飯の利用が復活したことで、母の生きる喜びの光はさらにさらに輝きを増しました。この体験が、この後に続く「図書館で自分で本を選んで借りられる」体験の復活につながったのです。(詳しくは近々記事をアップ予定。お楽しみに~♡)
母の笑顔が増えると、周りのケアマネージャーさんやヘルパーさん、訪問の歯科衛生士さんの笑顔も増えました。もちろん娘の私も「あきらめの介護」から「やる気盛り返しの介護」への転換を目の当たりにして、大袈裟な表現になってしまいますが、深~い感動を覚えました。母や周りの笑顔が増えるのをもっと見たいと思い、自然と次にどんな工夫ができるのか考えるようになってきました。
あきらめたらMOTTAINA~I !!
もしあなたの大切な人が、もう一度炊き立てのご飯を味わいたいと思っていたり、自分で炊いてみたいと思っていたとしたら、応援してあげてほしい…と思います。炊飯器への再挑戦以外でも、なんでもいいのです。
きっかけは些細なことでも、「小さな成功は確実に次への挑戦の意欲」につながります。世間にはびこる認知症に対する誤解や偏見はいったん横に置いて、目の前の大切な人の興味と関心がどこにあるのか、「やってみたい」と言う思いの実現のために、どんなサポートが出来るのか、あきめる前にちょっと考えてみてはいかがでしょうか?
認知症があるからと、あきらめたら、あかんです。人生100年時代に突入しました。あなたの大切な人の人生は「まだまだこれから」なのではないでしょうか? そばにいるあなたも一緒に幸せを味わえるチャンスがまだまだあるのです。あきらめては、もったいな~いのです。
⇧ 自己紹介と我が家の介護のことをまとめました。最近アップしたnoteの記事もまとめています。
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