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災害時の飲み込むチカラが弱くなっている方の避難の対策と準備

大雨で大きな被害が出ています。台風シーズン真っ只中で心配は続いています。災害時の「飲み込むチカラが弱くなっている方」などの配慮が必要な方の嚥下(えんげ)食の非常食の備蓄をしている自治体はまだまだ少ないようです。

家庭ではどのようなことに気をつけて準備したら良いのか、専門家に教えていただきました。

🎙インタビュー :  歯科医師 増田貴行さん (摂食嚥下リハビリテーション認定士)

3回に分けてお届けします。気になるパートからご視聴いただいても大丈夫です。最後の③で全体のふりかえりをしています。

①避難所での飲み込むチカラが弱くなっている方の嚥下(えんげ)食の対応
②食器の工夫・口の中の衛生を保つコツ
③経口補水液の作り方・リハビリ体操・全体のふりかえり

①避難所での嚥下(えんげ)食の対応

災害時に活用できる嚥下(えんげ)食対応のレトルト食品は色々ありますが、増田さんが「これ便利」とオススメしてくださったものがこちらです👇

〈増田さんオススメ非常時の嚥下食〉
★ホリカフーズ(株)

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★ヘルシーフード(株)
[パンがゆミックス]

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[エナチャージ160〕

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★まつや(株)
TEL 025-387-3325

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試食してみました!!

写真の掲載許可をいただこうと電話をしたら「ぜひ実際に味わってみて!!」と試食品を送ってくださいました。まつやさんは1907年の創業時から米粉の美味しさを追求され続けていらっしゃいます。否が応でも期待が高まります…。

「料亭監修」シリーズの「ほたて」と「たい」の2種類をいただいてみました。...もう非常食という概念が吹き飛んでしまうほどの美味しさ!! お出汁もきっちり効いています。それもそのはず「災害食大賞2021うまみ部門」で「たいぞうすい」が最優秀賞を受賞されていました。

スプーンもセットされていて、袋も安定感があったのでそのままいただけました。5年保存ができるとか...。非常食のためだけでなく、体調不良時の備えとしても常備しておきたくなりました。

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注文の前には専門医の相談を

様々な種類があるレトルトタイプの嚥下(えんげ)食ですが、刻みやペーストなど一体どれを選んだら良いのか迷ってしまいそうです。注文の前に嚥下の状態をきちんと見極めてもらえる専門医に相談することを増田さんはすすめていらっしゃいます。


全国の口腔リハビリをしてくれる訪問歯科を探せる「摂食嚥下関連医療資源マップ」

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摂食嚥下(えんげ)にくわしい全国の医療機関を簡単に検索できて、増田さんのような口腔リハビリに詳しい先生に出会えます。我が家もこのマップで素敵な訪問歯科との出会いがありました。

嚥下食対応のレストランの情報もありますよ。ご活用ください。


一般的に出回っている食品も非常時に活用できます

赤ちゃん用の粉ミルクは栄養価が高く非常食になると増田さんはおっしゃいます。

一般的なお菓子を非常食として代用するときには、大豆などが含まれているものを選ぶと良いそうです。栄養バランスが整いやすくなるそうですよ。お菓子をふやかすときには野菜ジュースもオススメなんだそうです。

 歯科医師 増田貴行さん (摂食嚥下リハビリテーション認定士)

「避難所では野菜が不足しがちなので、野菜ジュースなどでお菓子をふやかすとビタミン補給もできて一石二鳥です」



②食器の工夫・口の中の衛生を保つコツ

身近なものを工夫すれば避難所でも便利に快適に過ごせそうです。

歯科医師 増田貴行さん (摂食嚥下リハビリテーション認定士)

◆紙コップの代用 
→鼻に当たる部分をカットする

首に損傷がかる方の水分摂取がスムーズにいくように、紙コップの鼻にあたる部分をカットすると良いとそうです。紙コップの写真がないので、イメージしていただきやすいように市販のコップの写真を引用させていただいています。

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歯科医師 増田貴行さん (摂食嚥下リハビリテーション認定士)

◆口の中の衛生を保つグッズ
→歯ブラシ、歯間ブラシ、フロス、スポンジブラシ、口腔内ウェッティ(口の中をふける濡れたティッシュ)

◆食品用の重曹のうがい水 

→ 重曹2g  / 水100g

◆液体はみがみを使った後のうがい

→ペットボトルのフタ1~2杯で30秒ぐらい

◆歯磨き粉はチューブ、ペーストタイプは避ける

→研磨剤入りは吸湿作用があるため大量のうがいの水が必要になるので避けた方が無難

◆何もなければ歯も入れ歯もブラシで磨くだけでも良い

→入れ歯の洗浄は中性洗剤でも大丈夫


避難所では紙皿が使用される事が多いと聞きます。やわらかい嚥下食を紙皿でいただくのはとても難しそう...。増田さんは日頃から使い慣れている食器やハシなどを使うことをおすすめされています。


〈増田さんの避難所でのオススメ品〉
★りそふ 

歯ブラシを洗えない状況でもこの除菌スプレーを振りかけておけば歯ブラシを衛生的に保てるそうです。

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★オーラルピース 

飲み込んでも安全な殺菌剤を配合した歯磨きだそうです。

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オーラルピースさんのサイトに災害とハミガキに関する記事がありました。



③経口補水液の作り方・リハビリ体操・全体のふりかえり


経口補水液のレシピ

歯科医師 増田貴行さん (摂食嚥下リハビリテーション認定士)

◆経口補水液

水1ℓ 砂糖40g(大さじ4.5) 食塩3g(小さじ半分) レモンなどの果(お好みで) 重曹少々(水分の吸収がよくなる)


災害時に市販品がすぐに手に入らなくてもこのレシピがあればしのげます。
作ったらその日のうちに飲んでほしいと増田さんはおっしゃっています。

嚥下(えんげ)機能のリハビリ

避難所でも手軽にできる体操を3つ教えていただきました。

① 開口訓練

口を最大限までああけ5秒以上維持 1セットを5回として3セット


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 この開口訓練ならマスクをしたままでも出来きますね。

②シャキア訓練

寝た状態で首を持ち上げてヘソを見る
・30秒して30秒休む 5回ぐらい または
・60杪して60杪休む 3回ぐらい


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③ デコ押し訓練

10秒維持 1セットを5回として3セット


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どれも見た目には簡単そうですが、現在要介護3でとろみ食の義父と一緒に開口訓練とデコ押し訓練をしてみましたら「かなりきついな」との反応がありました。

首の筋肉が飲み込むチカラに関連しているとは驚きの発見でした。避難所での限られたスペースでも出来きる体操ばかり…お試しくださいね。


配慮が必要なかたの「災害時に備えた食品ストックガイド」


特殊食品(嚥下食など)の備蓄をしているのは自治体は1.5%(2017年)


家庭での備蓄は一人一週間分は準備したいと言われていますが、増田さんの調べによりますと、嚥下食など配慮が必要な方の支援物資が届くのには一週間以上かかると言われています。備えは二週間分あるのが理想だそうです。

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農林水産省が乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの方に分けて災害時の食事の注意点などをとりまとめたガイドを公開しています。参考になさってみてください。



嚥下食の方の準備は「早め・多め」が大切

歯科医の増田さんは摂食嚥下リハビリテーション認定士として訪問診療を通じて様々な患者さんと向き合っていらっしゃいます。

身近なものを災害時に活用できるというアドバイスは、日々の診療で患者さんの日常を把握しているからこそできるものだと感じました。オススメしてくださった市販のものも、さすがプロならではの逸品ばかり・・・。

情報を活用して非常時の準備を早めにスタートしたいと感じました。非常時には手に入りにくい嚥下食などは多めに準備することを意識しておきたいものです。

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【増田貴行さん プロフィール】

歯科医師 摂食嚥下リハビリテーション認定士
2016年 大阪歯科大学大学院(高齢者歯科学講座)卒業。2016年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下 リハビリテーション学分野 研修登録医(現在に至る)。戸原 玄先生に師事。 2017年~ 増田歯科医院、医療法人顕樹会本田歯科クリニック勤務(現在に至る)  その他多数の医院で歯科治療を研鑽。 

◆連絡先 prosthesis.dysphagia@gmail.com

◆勤務先 
https://kenjukai-hondashika.com/http://www.shoji-family.dental/

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