見出し画像

映画『ファイト・クラブ』の解説

画像1

映画「ファイトクラブ」 写真左:エドワード・ノートン 右:ブラッド・ピット


 ”映画『ファイトクラブ』とは?”

本作はデビッド・フィンチャー監督による作品であり、1999年に公開。小説の映画化。主役はエドワード・ノートンとブラッド・ピット。

主役の2人がとにかくカッコ良い。

画像2

まずは、エドワード・ノートン。アメリカンヒストリーX(1998)とは違った、気弱な役を本作では演じている。アメリカンヒストリーX(1998)のために15キロの増量をした彼だが、本作ではその姿は無い。彼のことだし、減量したのだと思う。恐ろしい役者魂。

 次にブラッド・ピット。本作では破天荒な役を演じている。彼の肉体美を見るシーンが多いため、ブラピを愛する私にとってはご褒美。彼が坊主になるシーンがあるのだが、それでもなおカッコイイ。

_____________________________________

どんな映画?【ネタバレ】

 先にネタバレをします。一言でいうと、二重人格の主人公が暴れ回る映画。もう一つの人格(タイラー・ダーテン)のときに、日々の生活で溜まる鬱憤を晴らす。

 終盤にかけて、もう一つの人格のときの行動などの伏線が回収され、タイラー・ダーテンは実は自分のもう一つの人格だったと気付く。

 映画「ファイトクラブ」は特徴のある始まり方であり、ラストシーンの描写から始まります。そこから一旦本編に戻り、最後に再びそのシーンが出てくるのです。フィンチャー監督恐るべし。

 終盤に再び流れるラストシーンでは、そこにたどり着くまでの過程がわかっているので、最初に見たラストシーンとは、感じ方が全く違います。

 ラストシーンから始まる映画は他にも、ノーラン監督の「メメント」(2000)、タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」などがあります。こちらもオススメなので是非。

_____________________________________

 ”映画「ファイトクラブ」のあらすじをわかりやすく!”

 今の説明だけではわかりにくいと思うので、あらすじをわかりやすくまとめました。

物語は、「僕」の視点で進行する。「僕」(エドワードノートン)は、ごく平凡な会社員である。しかし精神的に不安定であり、不眠症に悩まされていた。 

精神科に通っても治らなかった僕は、癌や結核などに苦しまされている患者たちのグループへ、ニセの患者として参加する。そこで励まし合うことによって一度は改善した。

画像3

治った後も通っていた僕は、色々なセラピーに病気と偽って参加する。そこで僕と同じく、病気を偽って参加している女・マーラ(ヘーレ・ボナム=カーター)と出会う。嫌悪感を抱いた僕は、居心地に違和感を感じ、不眠症が再発する。

画像4

そんなある日、出張中に僕の住んでいるアパートが火事になる。出張帰りの飛行機の中で、住む家がなくなり途方に暮れる僕は、隣に座っていた石鹸の行商人タイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)に助けを求める。タイラーは僕とは真逆の性格で、ユーモアあふれ、危険な男だった。待ち合わせたバーを出た後、タイラーは「力いっぱい俺を殴ってくれ。」と言い出す。僕と彼はふざけ合いながらも、バーの駐車場で本気の殴り合いをはじめる。

 

殴り合って痛みを感じることで生きている実感を取り戻した2人は、ときどき駐車場で殴り合いをすることになる。それを見ていた周りの人たちも参加するようになり、地下に1対1の殴り合いができる部屋を借りる。タイラーはその集まりを「ファイトクラブ」と名付けた。そこでのルールが、「ルールその1:ファイトクラブのことを決して口外するな。」である。

画像5

↑ 地下に作られた、「ファイトクラブ」

「ファイトクラブ」の中では社会的地位は関係なかった。会社では使えない男であっても、そこでは自分より強い相手に勝つことができる。僕は日に日に野蛮になっていき、会社の中でも上司に強気になったりした。その頃から僕とタイラーは同居し始めた。

ある日、マーラから電話がかかって来た。僕は無視したが、タイラーが受け、マーラの元へ向かう。2人は親密になり、三人での同居生活が始まる。 

タイラーはある日、「ファイトクラブ」の男たちに対して、昼間の平凡人としての時間に、ケンカを売ってわざと負けろという「宿題」を出す。 

「宿題」はだんだん過激になっていく。タイラーは「ファイトクラブ」のメンバーたちとともに、「スペース・モンキーズ」と称すテロ軍団へと変貌していく。このテロ軍団の目的は「騒乱計画(プロジェクト・メイヘム)」という、現在の社会的権威や社会構造をぶち壊すことだ。そして僕はタイラーと会うこともなくなっていった。

画像6

「騒乱計画」を進めていくタイラー


ある日僕は、タイラーが去った部屋から全米を飛び回った使用済みの航空券を見つけ、足跡をたどった。タイラーは全米に「ファイトクラブ」を作り、「騒乱計画」のメンバーも増やしていた。そんな中、レストランの店主が「ファイトクラブ」のメンバーであり、僕は声をかけられた。僕は、自分は何者なのかと店主に問うと、「あなたはタイラー・ダーテンさんです」と答える。

僕は何が起きているかわからなくなり、マーラに電話上で自分の正体を聞こうとしたとき、タイラーが目の前に現れる。タイラーは自らの正体を、「『僕』にとっての理想の姿、もう一つの人格だ。」と明かす。僕が不眠症になっていたのは、もう一つの人格であるタイラーが夜中に働いていたからである。マンションの火事もタイラーとしての僕が行ったことであり、タイラーとの殴り合いも、僕が自分で自分を殴っていただけである。「騒乱計画」も、スペース・モンキーズを率いているのも、タイラーとしての自分が行っているものであった。僕はそれを聞き、気を失う。

意識を取り戻したときにはタイラーはいなかった。彼の残したメモから、タイラーは銀行・大企業各社のビルなどの同時爆破テロが計画されていることを知る。

メモや資料から爆破が起きるビルを突き止めた僕は、爆破の場所である地下の駐車場へ行く。そこで僕は再びタイラーに出会う。僕は爆破を止めようとするが、タイラーが妨害する。タイラーと僕は「殴り合い」を始める。僕はタイラーとの殴り合いに敗れ、タイラーに身体の支配を奪われる。

意識を取り戻すと、僕はタイラーに銃を突きつけられていた。勝ち目はないように思えたが、僕は「タイラーが銃を持っているということは、僕が持っているのと同じことだ」と気づく。そして僕はそのまま自分の喉を銃で撃ち抜いた。

画像7

弾丸は急所をそれ、僕は生きていた。スペース・モンキーズに連れてこられたマーラと再開するが、爆破テロを阻止する時間はもう無かった。

僕とマーラは手を繋ぎ、高層ビルが爆破されていく様を、ただ見つめていた。 

_____________________________________

”映画「ファイトクラブ」の解説”

 ザックリとあらすじを読んでみて、どうだったでしょうか。恐らくみなさんが思っていることは

   結局タイラーって誰?二重人格って?

だと思います。わかります、私も1回目はそうでした。

ここからは、好きすぎて何回見たかわからない私が解説していきます。


1.タイラーの正体は?

結局、タイラーとは誰だったのか。結論をいうとタイラーは、「僕の理想像であり、それを写したもの」です。身体は僕のもの一つだけです。

 理想像なので、もちろん他の人たちからは見えません。タイラーがレストランで働いている描写などは、寝ている間に僕が働いていたのです。(それが原因で不眠症を引き起こしていた)

2.騒乱計画とはなんだったのか?

タイラーが計画していた「騒乱計画(プロジェクト・メイヘム)」とはなんだったのか。

 そもそも、ファイトクラブに訪れる男たちは少なからず今の生活に満足していない男たちである。社会的地位が無用である場所で、本気の殴り合いをする男たち。彼らは現在のストレス社会や、ブランド品などで見栄を張るくだらない消費主義の社会構造に嫌気がさす。それらをぶち壊すことを目的としたものが、「騒乱計画」であったのでしょう。

 この映画では「騒乱作戦」を通して、盲目的に消費主義、ストレス社会などに慣れてしまった私たちに対しての警鐘であり、生きた実感を取り戻させることが目的だったのかな、と私は感じました。(他の人の解説もめっちゃ読みました。)

3.「僕」はなぜ生きていたのか

映画終盤で喉元を撃ち抜かれた僕。だが生きている僕。

 ここからは私の考えですが、「銃を持っているタイラーは、自分自身である。」と気付いた僕は、自身の中にいるタイラーを殺そうとしたのだ。タイラーは、まさか僕が自ら発泡するとは思わなかったため、喉元に発泡した瞬間死を悟ります。しかし、僕はわざと急所をそらし生きていた。

 このシーンは僕ではなく、「タイラーを殺すこと」が目的だったのでしょう。

 理想像であるタイラーを殺すことができたのは、僕自身が、理想像であるタイラーのようになることが出来た、ということなのだと思います。

4.サブリミナル効果

 映画「ファイトクラブ」では、サブリミナル効果(一瞬だけ関係のない写真を挿入するなどの手法)が使われています。私も解説記事を読むまでは全く気付きませんでした。

 ①会社でコピーをとるジャックのシーン(4分過)で、左側に一瞬タイラーの姿。

 ②精神科医がジャックに冷たく対応する瞬間(6分過)、背後に一瞬タイラーが。

 ③睾丸がん患者の集まりで慰めの言葉を言う男(7分半)の背後にタイラー。

 ④空港のベルトコンベアーで移動中に僕が語っているとき(19分過)、逆方向からサングラスをかけているタイラーが。このシーンは気付きやすいです。

 「タイラーは僕である」という結末の伏線

 タイラーと僕が会ったあとはサブリミナルは無くなります。代わりに、僕=タイラーと言わんばかりの伏線がいくつかあります。

 全てはあげませんが、いくつかわかりやすいものを紹介します。

 ①機内で隣り合わせに座った2人の足元にあるカバンが、全く同じ型だということ。(23分過)

 ②駐車場で殴り合いをした後に、タイラーが「俺は夜型の人間で、人が眠る時間に働く」と言う。

 ③僕がマーラに対して「僕は二重人格みたいだっただろ?」と問いかけると、「えぇ、ジキルとハイドみたい。」と答える。

 ④ファイトクラブの元メンバーの、「タイラーは睡眠時間が1時間」と言うセリフ。

 これらのように、作中には僕が二重人格という伏線が多く貼られています。

 2回目以降も楽しめるのがいいですよね。

_____________________________________

”まとめ”

 いかがだったでしょうか。映画「ファイトクラブ」の魅力は伝わったでしょうか?

 この映画はまさに男の大好き欲張りセットだと私は感じます。男らしいキャストたち、シンプルな「殴り合い」、そして自身に溢れ破天荒なタイラーの性格。

 そりゃ何度でも見てしまいますよね。まだ一回しか見てないという方は、伏線なども探しながら、もう一度見るのもいいかもしれませんね。

長々と読んでいただき、ありがとうございました。

映画「ファイトクラブ」の解説でした。

 


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集