ノック7本目:プロフェッショナルマナー100本ノック~ユーザー視点の欠如の反省~
<プログラム概要>
プロフェッショナルビジネスパーソンに必要となるビジネスマナーを徹底的に身につける研修プログラム
プロフェッショナルマナー100本ノックについては、ぜひとも書いておかないといけないことがあります。
このプログラム開発は「失敗と反省の物語」だったことです。
開発時期は2007年1月~3月頃。プロフェッショナルコミュニケーション100本ノックA・Bやプロフェッショナルスタンスシミュレーションとほぼ同時期に開発しました。この頃にアルーの新入社員向け研修シリーズ「プロフェッショナルシリーズ」が形作られました。
DNAワークの項でも書かせていただきましたが、元々エデュ・ファクトリー時代に「ビジネスマナー100本ノック」という1日研修プログラムを開発していました。
ビジネスマナー100本ノック自体は極めてベーシックなマナー研修でした。しかし世の中にビジネスマナー研修は溢れかえっており、アルーは後発での参入でした。
ビジネスマナーを専業としている研修会社もあれば、CAご出身等のホスピタリティの高い講師の方が提供される講座も多く市場にあります。そうした状況において「差別化されたプログラムを如何に作るのか」、ということが本開発の命題であり、私の失敗経験につながっていきました。
①パートナーF社様からの依頼。どのように差別化した商品を作るか?
プロフェッショナルマナー100本ノックを作ることになった直接的なきっかけは、当時のパートナー企業F社様のW社長からの要望があってのことでした。
W社長の要望は、当社の新入社員向けメインプログラムである「プロフェッショナルスタンス100本ノック(プロスタ)」と双璧を成す、新しい「ビジネスマナー研修」を作ってほしいとことでした。
F社様が「プロスタ&マナー」の2日間セットで多くのお客様から受注をいただいていたという背景がありました。プロスタは2006年の段階でプログラムの開発が完了していましたが、マナーの方がその時点では完成していなかったのでした。
しかし本プログラム企画検討は難航しました。
F社のW社長や、アルーから出向・後にF社に転籍されたKさん(現在も人材育成のコンサルタントとして大活躍されています)を含めて、何度も会議を重ねましたが「ぱっとした商品設計」になりません。
難航した理由は差別化に苦慮したことでした。新しいマナー研修と言っても、どのような内容にするべきなのか、ヴィジョンが見えてきませんでした。
当時の私はあまりに悩みすぎていました。そこで渋谷にある有名な居酒屋さんの「本気の朝礼」という講座にも参加しました。そちらの居酒屋さんの朝礼なのですが、外部の方も参加することができました。朝礼の中で、店員さんから指名されて、その日の意気込みを本気で叫んだりしました。真剣に一日の業務について考えるよい経験になり、マナー研修に「本気の挨拶」という手法を取り入れてみたりしました。
ビジネスマナーの研修で伝えるべきラーニングポイントは、既に手元に洗い出すことができていました。ビジネスマナーは世の中に書籍も多く販売されており、企業の新入社員が身に着けるべきものは広く知れ渡っています。私にとっての問題は「そのラーニングポイントをどのように見せるのか」ということでした。
このプログラムは「差別化」にこだわって「斬新」な取り組みをしたのが、後の失敗につながっていったのです。
②臨機・定石・応変
研修プログラムのデザインが固まったのは「臨機」「定石」「応変」という全体のフレームワークが思いついたことでした。
ビジネスマナーには基本の型(定石)だけを覚えるのではダメで、状況に合わせて(臨機)、柔軟に応用すること(応変)が大切である、というメッセージを伝える枠組みでした。
これは、当時のアルーの渋谷オフィスの隣にあったファミリーレストランに私一人で篭って考えている時にひらめいた枠組みでした。
本研修の開発を進めるにあたり、競合他社のビジネスマナー研修についても徹底的に研究をしていました。他社のビジネスマナー研修の紹介が書かれているWEBサイトをじっくり読んでいるうちに、ビジネスマナーにおいては臨機応変が重要であるということが分かりました。その要素をアルーでも取り入れよう!と考えたのでした。
「臨機」「定石」「応変」という全体フレームワークが固まった後は、演習等を一気に形作りました。企画の方向性が固まるまでに全体の8割の時間を費やしました。
そうして形作られた「プロフェッショナルマナー100本ノック」の初期版にはインディアンポーカーというゲームが入っていました。
「臨機」(状況を読む)を体感的に学ぶためのゲーム型演習です。二人一組でペアをつくりお互いにトランプのカードを1枚引き、自分ではカードを見ることなく、相手から見えるように額の前で持ちます。ちょうどインディアンの羽飾りのように。
するとお互い相手のカードが見えるため、その表情を見ながら、カードの数字が相手よりも高いか低いかを考え、勝負するか降りるかを決める、というゲームでした。
ゲームとしては面白かったのですが、覚えるべきラーニングポイントが多数あるビジネスマナー研修の中で、このゲームに時間を費やすことはあまり有効ではありませんでした。
(※インディアンポーカーのワークは、翌年2008年の時点で廃止となり、別の内容に差し替えました)
③営業・お客様からのフィードバック
初年度は色々とありましたが納品は無事完了しました。
F社のW社長からは「受講生は楽しめたが、斬新すぎる内容だった」という評価をいただきました。ですが、私はそのフィードバックを真摯に受け止めていませんでした。
このフィードバックをきちんと受け止めすぐてに改善をするべきでしたが、当時の私は行いませんでした。
また自社アルーの2007年新入社員向け研修では、プロフェッショナルマナー100本ノックを使ってもらえませんでした。当社の人事責任者Iさん(現取締役CFO)がより実務に即したもの行いたいという判断したためです。
研修会社なのだから自社のプログラムを使ってほしいと思ったのですが・・・・振り返ればプロフェッショナルマナー100本ノックは、ユーザーのニーズにマッチしたものではなかったのでしょうね。
私がプロフェッショナルマナー100本ノックの開発の失敗に気が付いたのはそれから1年以上経ってからのことでした。
2009年4月向けの研修準備をする中で、大手情報サービス会社様の担当者であった方から指摘をいただいたことは忘れられません。
「臨機」「定石」「応変」というフレームワークの中の「定石」部分について指摘をいただきました。
「定石という表現があるけど、この言葉は本当に新入社員が使う言葉なのだろうか?もし研修として特徴を出すためだけならば、それは変えたほうがいいのではないか」
このお話を聞き、私は自分の目が曇っていたことに気付きました。まさしく指摘されたとおりでした。
プロフェッショナルマナー100本ノックの開発は「研修商品」として競合のプログラムと差別化することだけを考えて、受講者やお客様を見ていなかったことに気づきました。
ものづくりをする人間として完全に失格でした。プログラムを使う受講者と導入していただくお客様の視点が抜けた商品には、価値はありません。
プロフェッショナルマナー100本ノックはその後継続的に改定を続けていくこととなりました。
【2021年追記】その後、本プログラムは受講生にとって本当に必要なことを追求し続け、2017年に大きく改定を行いました。
ビジネスマナーは型を覚えるだけでなく、なぜ必要なのか?その理由を深く腹落ちしていただくこと、そして動画等を活用し細かいレベルで分かりやすさを追求したプログラムになっています。
2017年時の開発は商品開発部メンバーのIさん(現在は独立しアルーパートナー講師としてご活躍)にご尽力いただき開発を担当していただきました。
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プロフェッショナルマナー100本ノック 開発における教訓
DNA31:「研修商品差別化」だけを目的とした「差別化」はするべきでない
「研修商品」としてどのように競合と差別化するかしか考えていなかった
受講者が普段使わないような言葉を差別化のために選んでしまった
DNA32:従来テーマは、押さえるべき基本があることを認識する
ビジネスマナー研修では型の徹底的な反復トレーニングが求められている
DNA33:斬新さと、世間からの乖離は紙一重
臨機・定石・応変という新しい枠組みを考えたが、お客様のニーズと乖離してしまった
DNA34:お客様、営業からのフィードバックを真摯に受け止めて、すぐに改善につなげる
F社W社長からの初期のフィードバックを真摯に受け止めなかったため、後年他のお客様にも品質の低いプログラムを提供してしまった
DNA35:後発で参入したテーマは、既存企業向けの大型提案の一部という使われ方になることを認識する
プロフェッショナルマナー100本ノックは、他のプログラムとあわせた大型提案の一要素として活用することが多い
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