木下龍也さんに短歌をつくっていただきました(「あなたのための短歌一首」)
歌人・木下龍也さんの短歌が好きです。
まず第一・第二歌集から3つずつ、紹介します。(素晴らしすぎてキリが無いので、敢えて3つ。特に好きな歌を選びましたが、たぶん選ぶ日によって変わります)。一首ごとの完成度が凄い。
全部屋の全室外機稼働してこのアパートは発進しない
盗聴の特集記事を思い出し「知っているぞ」と部屋でつぶやく
全員の姓が佐藤であることを知っているのは神と受付
あの虹を無視したら撃てあの虹に立ち止まったら撃つなゴジラを
虹 土葬された金魚は見ているか地中に埋まるもう半輪を
幽霊になりたてだからドアや壁すり抜けるときおめめ閉じちゃう
『天才による凡人のための短歌教室』
そして、圧倒的に感銘を受けた、この本。
短歌は過ぎ去った愛を、言えなかった想いを、見逃していた風景を書くのに適している。それらをあなたがあなた自身のために、あなたに似ただれかのために、結晶化しておくには最適な詩型だ。記憶の奥にある思い出せない思い出を書くことには最適なツールなのである。思い出とはこれまでだ。そして、これまでに起きたことはこれからも姿かたちを変えて必ず起こる。だから、これからを生きやすくするための御守りとして役に立つ。短歌をつくることの利点はそれくらいしかない。 p11
この中で、「あなたのための短歌一首」という作歌を木下さんが提供されているのを知りました。購入者からのお題で短歌をつくり、便箋に書いて封筒で送る、というものです。
お送りした短歌を作者である僕は一切公表しない。あなたのための短歌なので、どのように使っていただいてもかまわない、という簡潔なものである。 p.102
かっこいいです。
古いタイプの歌人には売文と言われ、批判を受けることもあったが、待つだけではなく自分から仕事を開拓していくことが、今後を生きてゆく歌人としては重要なことのひとつである。あなたもぜひ、あなたなりの方法で短歌を販売してみてほしい。 p.103
こういった木下さんの歌人としての生き方は、クリエイティビティ、テクノロジー、ビジネスの交差点を研究し、自分らしく(人らしく、あたらしく)生きる力を探求する私の公私において、たいへん参考になるものです。
「あなたのための短歌一首」
そう思って、いつか在庫(と言っていいのか、どうか)がある時に、購入したいと願っていたのでした。
募集開始次第、あっという間に売り切れになるので、毎日のようにチェックして、ある日、購入ボタンが押せる状態になっているのを発見。
それから、考えておいたお題をお送りして、本日。。。受け取りました。
お香の匂いがする便箋。ポストから出した時点で、心があたたまるようでした。手紙をもらうって、新鮮です。
ドキドキしながら封を切って、取り出したのがこの便箋です。
デジタルな牙でやさしく切りひらく
ありとあらゆる袋小路を
木下龍也
お題:私のTwitterプロフィールに掲載する一首
感想はあれこれ書きません。ただ、勇気が湧いてくるのを感じました。
大事にします。
木下龍也さんへの感謝と、自分のための関連情報まとめ、そしてまだ短歌を知らない誰かが、興味を持つきっかけになればいいなと思い、noteにまとめることにしました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
私も、つくります。
補足:
Twitterも、いつも素敵です。
私が現代短歌にキャッチアップしたときのnote記事。やはりプロの歌人で、素晴らしい短歌をつくっていらっしゃる(日々の日記のファンです)工藤吉生さんの「【300首】有名な現代短歌をいっぱい紹介したい!!!」という素晴らしいnote記事を読んで、感想・メモをまとめたものです。
現代短歌の入り口として、よかったらご覧ください。
追記(2021/11/15):
「あなたのための短歌一首」が短歌集になりました。私のつくっていただいた歌は掲載されませんでしたが、改めて自筆のサイン(短歌まで!)本を贈っていただきました。感激です。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。つたないものですが、何かのお役に立つことができれば嬉しいです。