3月18日 イタリアから生中継して!急遽OA
突然の出演依頼
「明日出られる?」と、ディレクターから急に連絡があった。
もちろん、予定が一切ないため二つ返事。
この時、たまたま買い物のためにスーパーへ来ていた。
いつもと同じように、入り口で20人くらい待っている。
買い物リストを考えていたが、明日の放送について構成を練り始めた。
近所の小さいスーパー。行列を作らないイタリアでは、
毎度「最後尾は誰ですか?」と質問しなければならない。
そして、次来る人には「私が最後尾です」と申告する必要がある。
入り口では、ドアの開閉とコントロールする警備が誘導してくれる。
ディレクターから、今の様子を伝えてと言われた。
日本に届いているニュースは、大手メディアから翻訳されている。
ちなみに、イタリアからのニュースは直で訳されることもあるが、
フランスやイギリス、アメリカのニュースを変換したのも少なくない。
さて今回は、急遽とあっていつもより5分短く10分しかない。
私が伝えられることは、2週間の軟禁生活の現状だろう。
リスナーは何を知りたいのか。他では放送しない様子を伝えたい。
そして、買い物や食事を済ませ、一気に仕込みに没頭した。
イタリア時間 午前8時 いざ、本番!
早朝に、スタンバイし目を覚めさせる。
家の電話がなり、スタジオの副調整室と繋いで待っている。
いよいよ、私の出番だ。
意外にもスタジオにいるMCの二人は、
深刻な様子でイタリアのニュースについて語り出した。
ここでハッとした。(内心:思っていたテンションと違う!)
名前を呼ばれ、いつものように話し出す。
「Buon giorno a tuttiiiiiiii!!」
「みなさんおはようございまーす!」と言う。
日本時間16時なのに。決まり文句だからまあいい。
で、これが、思った以上に元気に聴こえたらしい。
しかし、私のテンションは最初だけで、
二人のレベルにまで抑えてしゃべることにした。
それは、死者が出ている悲しい出来事だから。
【放送の内容】
持ち時間10分で私が構成したのは、
3分:① イタリアでの新型肺炎のおさらい
3分:② 私の軟禁生活のルーティーンと結果
3分:③ 日本のみなさんに伝えたいこと
1分:④ まとめと感想
2月下旬に一度出演したこともあり、その時の情報は割愛し、
3月18日時点の話をした。
① イタリアでの新型肺炎のおさらい
1月末に、中国人旅行客の感染が確認され、ローマですぐに隔離治療。
この時点で、イタリアに大混乱を招くことはなかった。
2月中旬、北部のロンバルディア地方でイタリア人で初となる
30代の男性が感染したと発表された。
ここから、瞬く間にコドーニョという小さな町から感染者が拡大。
4日後には、最初の死者が出たことで、イタリア中に衝撃が走る。
私は「第一次 スーパーマーケットショック」と読んでいる。
客がドッと押し寄せ、パスタやミネラルウォーターなどが消えた。
私はというと、その2日後に普通に買い出しをした。
会計の際に、レジの女性に当日の様子を尋ねてみると、
スーパー内の空気は緊張状態、人は押し寄せ、商品が尽きては追加。
これを一日中行ったようだ。
最後に彼女は”apocalisse"「黙示録」という言葉を使って説明した。
つまり、世界が終わる瞬間だったと。
感染者の数は、急激に増えていき、
一人目のイタリア人感染発覚から
1週間後に、約300人、死者11人。
2週間後に、約2200人、死者79人に激増。
20日後に、一日の感染者数が1千人を超えるようになり、
政府は緊急で首相令を発表した。
感染者の多い地域だけでなく、イタリア全土での外出禁止。
許可証なしに町を出ることができなくなった。
そして、レストラン、カフェの営業を停止させた。
これにより、「第二次 スーパーマーケットショック」が起こる。
外食できないと焦った人たちがスーパーへ駆け込んだ。
商品は棚からなくなったが、前回のショックから私たちは学んでいた。
スーパーは閉まらず、商品は爆買いしなければ安定して手に入ると。
客の様子も随分落ち着いているように感じた。
私も、夫に言われてすぐさまスーパーに向かったが、
同じ考えを持つ人が20人ほど待っていた。
スーパーのパスタ売り場。上から二段目の棚にはスパゲティが並んでいた。
左側に積まれているのは、女性が追加している最中だから。
パスタではなく、スパゲティが消えるというのがポイント。
最初のイタリア人感染者発覚から
3週間後に、約8500人、死者631人に。
1月後には、約26000人、死者は2500人となった。
OAでは、ここまでの情報だが、3月26日(木)の最新の情報を加えると、
5週間後は、約54000人、死者は6800人にまで上昇。
6週目に突入した現在、1日の感染者数は、ここ数日で減少している。
とは言え、毎日3000人以上の感染者と、
600人以上の死者を連日出し続けている。
最初に感染者が出た町でも未だに出ているのが現状。
イタリアの経済を牽引するミラノでも拡大は止まっていない。
② 軟禁生活のルーティーンと結果
私は、日本食レストランで昼と夜にウエイトレスとして働いている。
もちろん、現在は休業しているので、家でただ過ごすことになる。
がしかし、日本のキュレーションサイトでライティングを行なっている。
気が向いた時だけなので、今回本腰を入れて作業することにした。
私も、在宅勤務を実行する。
そして、夫は輸出入の業者で仕事しており、市場はまだ止まらないので
早朝に出勤し夕方に返ってくる。(現在は、作業停止中)
【私のルーティーン】
8:00 起床
8:30 朝食
9:00 掃除
10:00 ライティング
12:00 昼食準備
14:00 ライティング/勉強/雑用
16:00 おやつ休憩
18:00 軽い運動とストレッチ
19:30 夕飯準備
21:00 ニュースチェック/映画鑑賞/読書
23:30 就寝
外出できないので、天気が良い日はテラスで朝食を摂っている。
勉強というのは、イタリア語・中国語・日本語教師のための時間である。
雑用は、家の中の整理整頓や修復、徹底的に掃除したい場所に手を入れる。
そして、ほぼ毎日欠かさず、有酸素運動と筋トレで身体が締まってきた。
このような生活を繰り返した結果、
規則正しい生活により、「健康的になった」というのが一つある。
食べてばかりに感じるが、エネルギーを消費しないため
食事の量も減らすことができている。
今は、夫が仕事で外出しなくなり、共同で作業するようになった。
食事の準備や片付け、また掃除や除菌する習慣がつき、
「家がキレイな状態に保たれている」のも良かった。
そして更に、性格について一つ気づいた点が。それは、
「優しくなった」
これは、思ってもいない現象だった。明日仕事がないということが、
時間と自由を与えられたことにより落ち着いて過ごしている。
そんな時もあれば、
来月の給料はもらえるのか、仕事が再開しても契約は続くのか。
果たしてレストランに客は戻ってくるのか。
再び外へ出ても感染しないのか、など。
不安をあげればキリがなく、
その時々によって気持ちが常に変動している。
これまで、不安に潰されるような時もあった。
が、今は現実を淡々と受け止めることしかできない。
妄想したところで何も変わらないと考えている。
外出できないと政府から発令されたが例外もある。
ここでまとめておこう。
休業している施設は、
レストラン、バールなどの飲食店。衣類や雑貨などの商店
美容関係のお店など。
営業しているの施設は、
スーパー、薬局、ドラッグストア、タバコ販売店、医療機関
ライフラインに関わる機関、動物にまつわる施設など
私が外出するのは、週に一度のスーパーへの買い物と、
数日に一度行く、ゴミ捨てだけだ。
この地域では、街角に大きなコンテナがあり、
いつでもゴミを捨てられるようになっている。
ちなみに、先週は紙ゴミとガラス類は回収しないので、
自宅に保持しておくよう市から指示があった。
この他、外出しているのは、
仕事がある人、医療機関を受ける人、そして犬の散歩をする人だけ。
この犬の散歩に関しては、犬のぬいぐるみに紐をつけて外出する人もいる。
そして、犬たちは家族それぞれが外へ連れ回すからくたびれているとか。
さすが、イタリアだと思わせる話題だ。
これを守られない人がいる。
海へ日光浴をする人、浜辺を散歩する人、自転車で運動する人など。
感染拡大が止まらない今、健康のために遠出する人を取り締まっている。
不要な外出をした者は罰金。今は36万円を支払うことになる。
③ 日本のみなさんに伝えたいこと
長く綴りすぎたが、みなさんに言いたいことは、
・爆買いしなくても、食料や生活雑貨は常に在庫はある。
・不要不急の外出は極力しない
・ゆっくり休む時間を与えてもらったと思おう
この街の感染者は、まだ少しずつだが増えて続けている。
周りに発症した人がいない分、現実味はあまりないが、
発覚してからでは遅い。
今、明日、明後日もしやと思う前に、事前に予防しておくしかない。
それと最後に、
イタリアで先日、日本の花見の風景が報じられた。
今のイタリアでは考えられない行動に驚いた人も多いだろう。
一方で日本人は他の国とは何かが違うのかもしれないと。
私の個人的な見解としては、
インフルエンザに対する日本人の予防策は徹底していて、
今回のウイルス除去にも役立っている思う。
手洗いはもちろん、「うがい」という習慣がセットになったのも特徴的。
イタリアでは、喉の痛みを感じてからうがいをするのが一般的。
他にも、玄関で靴を脱ぐ文化や、人とは距離を取って挨拶し、触れない。
除菌シートやウエットティッシュの使用もあるだろう。日本では
ポケットティッシュを広告とともに配るというのも注目する文化の一つ。
イタリアでは、鼻をかんだり拭ったりするのはハンカチだ。
私たち日本人の、見方を変えれば潔癖のように感じる衛生の文化は、
先人たちからの教訓であり、世界に発信すべき基準かもしれない。
世界でイタリアのような状況に陥らないことと、
日本が安全な国と言われるように個人個人が気をつけて
被害が拡大しないことを、ただただ祈るばかり。
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