【イタリア】シェフが投げた棒を私が取る?犬扱い
新しいシェフと働き出して2週間が過ぎました。
最初はお互いを支え補い合いながら営業していました。
今は、それぞれ担当の料理に必要な食材を揃えています。
私は、ドルチェやアペリティーヴォの材料は充分にあるか、
何を準備しないといけないか、買う必要があるか。
天気予報を確認しながら、週末には100食を目標に仕込みます。
2週間も経つと、距離も縮まり、隠れていた性格も見えてきます。
そしてある時気づいたんです。
名前を呼ばれる度に、イヤな気分になることを。
私、無駄に使われていないか…
「急いでアレ準備して!」
「それ取って!」
「コレ足しといて!」
最初は、食材や道具の場所を把握していないから
助けるためにやっていました。
呆れた同僚からは、「NO と言いな!」と。
そうですよね。
私は料理に携わるようになり、まだ一年も経っていません。
だから、学びたい一心でできる仕事をこなしています。
ところが同僚からすると、雑に扱われていると。
やっと気づけたんです。
断ってもいいんだ。
これまで、どこか仕事をしていて、心から支えたいと
思えなくなっていました。ましてや行きたくないなと。
シェフのいないところで、みんなに言ったんです。
「私、犬扱いされている」
「えっ、どういうこと?」
「シェフが投げた棒を、取りに行けと言われているみたいで」
「そんな言い方しないで!」
ここから、同僚らと団結。
「犬」という単語を交えた会話が広がるんです。
例えば、「そんなの、犬でも食べないヮ!」
「それより犬の方が賢いヮ!」というように、
私たちだけの流行語ができています。
男尊女卑?
この道の長い同僚からすると、この手の男性は多いとか。
助手という名の下に「手下」として扱う。
褒めて伸ばしているようで、ただの怠慢な人。
こんな人のことをイタリアでは、
「あいつは vagabondo: ヴァガボンドだ!」
と言います。
そう、漫画のタイトルと同じです。
あちらは放浪者という意味合いで使っているのかな。
こっちは悪口ですよ。カチン。
そんな気づきを知らないシェフは、
ある時、いつものように言ってきました。
「何で足してないの?」
「えっ!何で私が?自分の担当料理でしょ?」
(この時怒りは含めず、ただナゼ?という感情のみ)
シェフがその後何を言ったから覚えていません。
ですが、真正面から NO を突き返したことで、
同僚はウインクしながらグッドと手で伝えてきました。
彼女らにとっても不快な指示だったんでしょうね。
ここからシェフは、手のひらを返してきました。
「お腹空いた?作ろうか?」
「アレはここに置いてあるからね」
「これが必要なら言ってね」と…
マズイと思ったんでしょうね。
シェフとは距離を置いています。必要な時に話をかける。
冗談は言うけれど、それ以上踏み込まない。
私は、目の前の仕事をこなし、必要であれば手を貸し、
時間を無駄にせず、効率よく働き、質を上げる。
新たな目標が見えてきました。
自分の道を歩めばいいんだ!
盛り付けも、飾り付けも、縛られずもっと自由に!
またやる気がみなぎってきました!