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体験価値経営ができる会社は、採用でも勝てる


はじめに

近年、優秀な人材の確保が企業の最重要課題の一つとなっています。労働人口の減少、働き方の多様化、そしてZ世代を中心とした価値観の変化により、従来の「待遇」や「安定性」だけでは、もはや採用市場で勝ち抜くことは難しくなっています。
そんな中、注目されているのが「体験価値経営(CX: Customer Experience)」です。CXを重視する企業は、単に顧客に優れた体験を提供するだけでなく、その企業文化が社内にも浸透し、結果として「働きたい企業」としても選ばれるようになります。
「なぜ体験価値経営ができる会社は採用でも勝てるのか?」を具体的な事例とともに解説していきます。


1. なぜ採用市場において体験価値経営が重要なのか?

当社のクライアントの宿泊事業者では、新卒3名の枠に100名を超える応募があるとのことでした。もちろんブランディングや丁寧なリクルーティングは勿論ですが、現役社員の生の言葉がリクルーティング資料にも多く盛り込まれており、実際のイメージが容易にできるように工夫がされています。この辺のアイデアも、入社数年目の社員の方の意見で行っているとのことでした。そのことを、詳しく分析したいと思います。

1.1 企業ブランドの価値は「顧客体験」と「社員体験」の積み重ね

企業ブランドは、単なる広告やマーケティング戦略によって作られるものではありません。顧客が企業との接点で感じる「体験価値(CX)」と、社員が日々の業務や職場環境で感じる「社員体験(EX: Employee Experience)」の積み重ねこそが、企業のブランド価値を決定します。
現代の求職者は、企業の実態をSNSや口コミサイト、社員の発信からリアルに把握できる時代です。顧客に素晴らしい体験を提供し、同時に社員にとっても働きやすい環境を整えることで、自然と「ここで働きたい」と思わせる力が生まれます。

1.2 Z世代の価値観の変化

Z世代は、給与や安定性だけでなく、「企業のミッション」「働く環境」「成長の機会」を重視する傾向があります。彼らにとって、企業選びの基準は以下のように変化しています。

  • モノ消費 → コト消費 → イミ消費

    • 「どれだけ稼げるか?」よりも、「どんな意義を持って働けるか?」

  • 安定 → 挑戦

    • 大企業志向よりも、スタートアップや社会的意義のある仕事へ関心が移行

  • 権威 → 共感

    • トップダウンの指示型よりも、共感を大切にする組織文化を好む

このような変化の中で、CXを重視し、社員体験(EX)にもこだわる企業は、「この会社で働きたい!」と思われやすくなるのです。


2. 体験価値経営が採用競争力を高める3つの理由

2.1 「働く環境」そのものがブランドになる

企業の採用ブランドは、企業側が作るものではなく、社員が日々どんな体験をしているかによって決まります。例えば、

  • 社員が自社のことをSNSでポジティブに発信している

  • 職場環境がオープンで、風通しが良い

  • 「この会社で働くと成長できる」と実感できる制度がある

これらが「働く体験」として認知されることで、企業ブランドが強化され、求職者にとって魅力的な職場として映ります。少し前であれば、職場に和室をつくるとか、お菓子が食べられるとか、目に見える職場環境などでもモチベーションを高める施策として用いられていました。

また、企業の文化や環境が優れていれば、社員自身が自然とリクルーターとなり、知人や友人に自社を勧めることが増えます。こうした「社員からの推奨」は、求人広告以上に強力な採用ツールとなります。

2.2 求職者との接点自体が「体験価値」になる

求職者が最初に企業と接点を持つ場面(採用ページ・説明会・面接など)は、企業の体験価値を示す重要な機会です。ここで「良い体験」を提供できる企業は、求職者に強く印象付けることができます。

例えば、

  • 応募からのレスポンスが迅速で、親切な対応をしている

  • 面接が「一方的に評価される場」ではなく、「企業と求職者の相互理解の場」になっている

  • オファー後のフォローが手厚く、入社前からエンゲージメントを高める取り組みをしている

これらのプロセスがスムーズでポジティブな体験であればあるほど、求職者は「この会社なら大切にしてもらえる」と感じ、入社意欲が高まります。
先の知人の紹介で入るリファラル採用では、離職率は低く出るということも言われています。

2.3 CXを重視する企業は、社員のエンゲージメントも高い

顧客体験を重視する企業は、自然と社員体験(EX)にも力を入れています。なぜなら、優れた顧客体験を提供するためには、社員自身がその企業の価値観や理念に共感し、意欲的に働ける環境が必要だからです。

EXの向上は、

  • 離職率の低下(社員が「ここにいたい」と思う)

  • エンゲージメントの向上(モチベーションが高い社員が増える)

  • 生産性の向上(自発的に考え、動ける組織になる)

という好循環を生みます。結果的に、優秀な人材が定着しやすくなり、企業の競争力が向上します。


3. 採用に活かせる体験価値経営の実践方法

では、具体的に「体験価値経営」を採用活動に活かすためにはどうすればよいのでしょうか?
採用ページや求人広告にCXの考え方を反映する

  • 「企業が求める人物像」よりも、「社員がどんな体験をしているか」を伝える

  • 実際に働く社員の声やストーリーを前面に出す

選考プロセス自体を「良い体験」にする

  • 候補者一人ひとりに丁寧な対応をする

  • 選考のフィードバックを必ず行う

  • 入社後のオンボーディング(研修・サポート)を充実させる

社内のEX(社員体験)を向上させる

  • 社員の声を定期的に吸い上げ、職場環境を改善する

  • 柔軟な働き方や、成長支援制度を取り入れる

  • 「社員が働くことを誇りに思える」企業文化をつくる


まとめ

CXを重視する企業は、採用市場でも強いブランドを持つ
求職者は「企業の提供価値」よりも「社員がどう感じているか」を重視する
採用プロセス自体を良い体験にすることで、より優秀な人材が集まる
EX(社員体験)を向上させることで、エンゲージメントが高まり、企業成長につながる
これからの時代、「顧客だけでなく、社員にも最高の体験を提供する企業」こそが、採用でも勝ち抜いていけるのです。

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