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【続】『これからは「一番最初に思い出してもらえる第一想起ブランド」しか生き残れない』▶15業界のEvoked Set(想起集合)および第一想起ブランド調査結果大公開!!
(2024年11月22日 追記)
この記事が含まれる内容がNewsPicks動画になりました!
(追記ここまで)
書籍出版翌日に大幅増刷が決まり、だいぶ緊張している今日このごろです。
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本記事では、大幅増刷御礼企画として、トライバルメディアハウスが2022年2月に延べ15,000人を対象に実施したEvoked Set調査2022の調査結果を大公開しちゃいます。
宣伝、(狭義の)PR、販促の役割はメンタルアベイラビリティを最大化させること
売上は、バイロン・シャープ氏が『ブランディングの科学』の中で提唱している通り、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティによって決まります。
ストアカバレッジとインストアシェアが売上の大部分を規定する一般消費財の場合、メンタルアベイラビリティよりもフィジカルアベイラビリティの方がより重要となります。
しかし、チャネル戦略は事業部や営業部の仕事。
となると、宣伝、広報、マーケティングなど「伝える仕事」に従事する人たちの役割は好意度(プレファレンス)を高めた上でメンタルアベイラビリティ(想起のされやすさ)を最大化することこそが最終ゴールであり、あらゆるマーケティングコミュニケーション(マーケティング全体における「伝える仕事」)はターゲット顧客の意識や態度を変容させ、メンタルアベイラビリティを向上させることに収斂すると言っても決して言い過ぎではないと思います。
メンタルアベイラビリティを表す想起集合
横文字よくわからない!という方は下記の記事を読んでください。マーケティングは人間の営みを科学することなので、それほど難しいことではありません。いつも私たちが考えたり、行動していることを整理しているだけです。
想起集合および第一想起の重要性は、こちらの記事で詳しく書きました。
売上を増やしたいのなら「想起の入口」を増やすべし、についての記事はこちら。
想起集合、第一想起、カテゴリーエントリーポイントは(当たり前ですが)私たちの脳のはたらきが大きく関わっています。詳しく知りたい方はこちら。
Evoked Set(想起集合)調査2022の概要
調査はこのような形式で実施しました(転記が大変なのでKindleのキャプチャです)
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データの見方
本調査は、知名集合、処理集合、想起集合のすべてにおいて助成想起ではなく純粋想起解答としているため、調査結果には会社名やブランド名が混在しています。「ビールといえば?」と聞かれて、商品名を想起する人もいれば、メーカー名を想起する人もいます。これは、消費者の頭の中ではブランド情報が正確に整理整頓されていない証拠ともいえます。グラフを眺めながら、カテゴリーごとにプロダクトブランド優勢なのか、コーポレートブランド優勢なのか、確認してみてください。
※なお、想起集合は、消費者の購買時にメーカーによる選好が強ければメーカー名を、プロダクトブランドによる選好が強ければプロダクトブランドで数えて差し支えないと思います。
想起集合に格納されているブランドの数
15カテゴリー別、想起集合の個数がこちら。
想起集合の平均値は、最多の温泉地が2.42個、最少の歯磨き粉が1.48個で、すべてのカテゴリーで3個未満でした。米ハーバード大学のジョージ・ミラー教授は「人間が選択肢を正確に順序付けできる刺激数は7個±2個(5個〜9個)」と示しましたが、実際はだいぶ少ないことがわかります。
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カテゴリー別、想起集合+第一想起調査結果
本の中では想起集合までしか記載していませんが、本記事では第一想起までを含めた結果をご共有します。
概ね、想起集合ランクの上位3つが、その順位のまま第一想起ランクになるカテゴリーが多いですが、中には知名集合に入っていても処理集合に進めなければ想起集合には入らないカテゴリーや、想起集合の上位3つに入っていても第一想起ランクでは順位が下がってしまうカテゴリーなど、それぞれに特徴があります。そのあたりにも着目しながら見ていってみてください。
カテゴリー別のグラフ下には、本に記載しているテキストも貼りました。ただ、本記事のグラフは(本のグラフとは異なり)第一想起ランクで降順したもののため、若干補足コメントも入れてあります。
ビール
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ビールはメーカー名の想起が多いことから、一定の度合いでコーポレートブランドによる選好が行われていることが分かる。ビールの想起集合平均値は2.17個。プロダクトブランドに限定した場合、アサヒスーパードライ、サッポロヱビスビールまでが入り、キリン一番搾りが次点となる。第一想起から第三想起までの購入率がいずれも高いことに、「いろいろな種類を試したい」という消費者のバラエティーシーキング行動が現れている。
ビールは、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位がキレイにそのまま。
チューハイ
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ビールとは異なり、プロダクトブランドの想起が優勢。チューハイの想起集合平均値は1.62個と少なく、2位と3位の差が大きいため氷結、ほろよいの2強といえる。ただし、ビール同様、バラエティーシーキング行動が強いため、2位、3位でも購入率は高い。
想起集合と第一想起で1位「ほろよい」と2位「氷結」が逆転。ただし9票0.9%の差。
チョコレート菓子
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明治、ロッテ、森永とメーカー名が強い印象を受けるが、プロダクトブランドはキットカット、アルフォート、ポッキー、ガーナ、たけのこの里の順であり、メーカー順位との関連はさほど見られない。「チョコレート」と聞いたときの想起はメーカー名だが、購入時における想起はプロダクトブランドでなされていると推察される。
ビール同様、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位は変わらず。
アイスクリーム
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アイスクリームの想起集合平均値は2.21個と多い。チューハイ同様、プロダクトブランドの想起が優勢。想起ではハーゲンダッツが独り勝ちである。ビール、チューハイ、チョコレート菓子同様、バラエティーシーキング型のため第三想起でも購入率は高い。そのため、想起集合に加え、ストアカバレッジやインストアマーチャンダイジングが売上の重要変数といえよう。
ビール、チョコレート菓子同様、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位は変わらず。ハーゲンダッツ強し。
衣類用洗濯洗剤
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衣類用洗濯洗剤の想起集合平均値は1.55個と少なめ。チューハイ、アイスクリーム同様、プロダクトブランドの想起が優勢。購入率が2位からガクンと下がるため、第一想起のアタックが強いことが分かる。
想起集合3位「トップ」が、第一想起で5位になった。ただし12票1.2%の差。
歯磨き粉
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想起集合平均値は1.48個と15カテゴリーの中で最も少ない。チューハイ、アイスクリーム、衣類用洗濯洗剤同様、プロダクトブランドの想起が優勢。知名集合のランキングが高くても処理集合に入らないと想起集合に入らないことが分かる。また、購入率は想起順に右肩下がりとなるため、想起順位が重要であることが分かる。
ビール、チョコレート菓子、アイスクリーム同様、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位は変わらず。
マスカラ
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マスカラの想起集合平均値は1.81個で、購入率は想起順に右肩下がり。商品の特性上、メーカー名が想起されている。想起順位4位のケイトは知名集合では2位にランクインしているためもったいないポジション。処理集合に入ることへの努力とフリークエンシー強化で想起集合入りを目指したい。
ビール、チョコレート菓子、アイスクリーム、歯磨き粉同様、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位は変わらず。
掃除機
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想起集合平均値は1.87個。マスカラ同様、メーカー名が並ぶ。ダイソンが強く、以降、パナソニック、日立と続く。第一想起の購入率が低いのはダイソン商品が高価格であることが起因していると推察される。ただし、数値が示すとおり購入率は第一想起ブランドが圧倒的に高い。
ビール、チョコレート菓子、アイスクリーム、歯磨き粉、マスカラ同様、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位は変わらず。ダイソン強し(我が家もダイソンです)。
ドライヤー
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掃除機同様、メーカー名が並ぶ。知名、処理、想起集合のいずれもパナソニックの独り勝ちとなった。ドライヤーの想起集合平均値は1.50個と、15カテゴリーの中で3番目に少なく、購入率も第一想起ブランドが圧倒的に高いため、想起の重要性が極めて高いカテゴリーといえよう。
ビール、チョコレート菓子、アイスクリーム、歯磨き粉、マスカラ、掃除機同様、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位は変わらず。パナソニック強すぎ。
デジタル一眼レフカメラ
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掃除機、ドライヤー同様、メーカー名が並ぶ。デジタル一眼レフ市場はキヤノンとニコンの2強だが、近年はミラーレス市場が拡大していることから当該市場シェア1位の「α」を持つソニーまでが入った三つどもえの戦いとなっている。想起集合平均値は1.78個で、1位と2位の購入率の差が激しいため、第一想起ブランドが有利であることが分かる。
ビール、チョコレート菓子、アイスクリーム、歯磨き粉、マスカラ、掃除機、ドライヤー同様、知名集合→処理集合→想起集合→第一想起におけるTOP3の順位は変わらず。
クレジットカード
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VISAは、処理集合で楽天カードに大きく水を開けられるも想起集合で は 1位を獲得。長年をかけて蓄積してきた圧倒的な知名度によるものだ ろう。一方、カード会員数2000万、累積2.5兆ポイントの発行を突破 した楽天カードの伸長が目覚ましい。第一想起と第二想起の申込率の差が比較的小さいのは、検討時におけるコミュニケーションチャネルの強さに加え、楽天カードの「 お得さ 」訴求が効いているものと推察される。
第一想起における楽天カードの追い上げがすごい。
自動車保険
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19年連続売上No.1(2022年5月時点)のソニー損保が圧勝している。自動車保険の想起集合平均値は1.49個と15カテゴリーの中で2番めに少ない。特筆すべきは想起順位ごとの契約率で、1位と2位の差が2.5倍も開く15カテゴリーの中でも特異な結果となった。「想起→検索→納得→契約」というフローが確立されていることがうかがえる。
想起集合と第一想起で3位「SBI損害保険」と2位「セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険)」が逆転。ただし2票0.2%の差。
住宅メーカー
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住宅メーカーの想起集合平均値は1.80個と中間的位置。テレビCMなどの出稿によって知名集合に入ったとしても、処理集合に入らないと想起集合にも入らないことが分かる。一方、高価格で購入リスクが高い商材のため、想起集合に入ったメーカーが横並びで検討されており、想起順位による契約率にさほど差が生じない結果となった。住宅メーカーは想起集合に入ること、商材の差別的競争優位性、営業力の3点が重要といえよう。
想起集合と第一想起で2位「大和ハウス」と3位「一条工務店」が逆転。ただし1票差(0.1%)
動画サブスクリプションサービス
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想起順位はAmazonプライム・ビデオ、Netflix、huluの順となった。 想起集合平均値は1.62個で、第一想起ブランドの契約率が高い。Amazonプライム・ビデオはECサイト利用者特典の色彩が強いため、Netflixとhuluが善戦しているといえよう。
近くの温泉地
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想起順位は、草津温泉、箱根温泉、別府温泉郷の順となった。温泉地の場合、居住地からの近さが大きく影響するため、実際はエリア(商圏)内での想起順位が重要となる。想起集合平均値は2.42個と15カテゴリーの中で最も多く、住宅メーカー同様、想起順位による来訪率にさほど差が生じない結果となった 。2 ~ 3カ所の選択肢(想起集合)の中から横並びで比較検討されるため、旅行地を検討する際、ほぼ確実に行われる旅行地情報検索、観光地や旅館などのクチコミ検索、Instagramのハッシュタグ検索が重要な役割を果たしているといえそうだ。
想起集合3位「別府温泉郷」が、第一想起で4位になった。ただし15票1.5%の差。
まとめ
いかがだったでしょうか。
売上を上げるためには消費者に買ってもらう必要があり、買ってもらうためには選択肢に入らなければなりません。そしてその選択肢は、だいたいの場合、ニーズが顕在化した瞬間に脳内に思い浮かぶ「いくつかの純粋想起ブランド(=想起集合)」であり、最も買ってもらえる確率が高いのは言うまでもなく第一想起ブランドであることがおわかりいただけたと思います。
想起順位が高いからマーケットシェアが高いのか、マーケットシェアが高いから(=一番多くの人がいつも買っているブランドだから)想起順位が高いのか。因果なのか、相関なのか。
いずれにせよ、多くの消費者に買ってもらうためには、「○○と言えば△△」と真っ先に思い出してもらえるブランドポジションを目指す必要があります。
「じゃあその肝心の想起順位はどうやったら高められるのさ?!」
ヒントは新刊『売上の地図』の中に!(ドカーン)
ということえで、もっと詳しく知りたい方はぜひ本書をご確認ください!m(_ _)m
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