期日前模擬選挙、学童でやってみたらこうなった!40人のこどもたちが臨んだ初の"投票”。 「ちがさきこども選挙」活動レポート
2022年10月30日に投開票が行われた茅ヶ崎市長選挙。「こども選挙」は、それと同時開催という形で、小学生〜17歳のこどもたちによる模擬選挙を開催した市民発のプロジェクトです。
こどもたちは、有権者ではないけれど、立派な主権者。政治や選挙を身近に感じられず投票率も低い現状がある日本で、投票権よりも⼤切なのは、⼀⼈ひとりが未来について考えを持ち、 その声が政治に届くことなのではないか。
今そういう機会がないのであれば、私たち市民が、子どもの声を政治や社会に届け、こども自身が社会と関わる空間を生み出していこう。
そんな思いを抱いた茅ヶ崎市の大人たちが実行委員会を結成し、公募で集まった「こども選挙委員」のこどもたちとともに、草の根的に活動してきました。
この記事では投票日の6日前、本当の選挙の告示直後に開催した茅ヶ崎市内の放課後児童クラブ(学童保育)での期日前模擬投票の様子をお伝えします。40人のこどもたちは、初めての「選挙」そして「投票」にどのように向き合ったのでしょうか?
学童に、本物の投票箱と投票台がやってきた!
10月24日(月)、令和4年茅ヶ崎市長選挙が告示された翌日。茅ヶ崎市内の小学1年生〜6年生47人が在籍する放課後児童クラブ「ちがさKID’S~みんなのヒミツキチ~」に、本物の投票箱と投票台が設置されました。
この日登所しておやつを食べていた約40人のこどもたち、興味津々といった様子です。
職員の方の合図で、いつもはみんなの遊び場となっている広いフロアに集合。いつもとは違う雰囲気に、みんなワクワクしている様子です。
「こども選挙」のスタッフからの唐突な問いかけにも臆することなく、「茅ヶ崎で一番偉い人!」「茅ヶ崎で一番お金持ちの人!」と元気に答えるこどもたち。「佐藤光さん!」と、現職市長の名をあげる子も。スタッフはみんなの意見をひとつ一つ受け取りながら、こう解説しました。
わかったようなわからないような…。
再びスタッフが問いかけました。
「市長を選ぶ!」「大人がやってる!」「投票して誰がいいか決めることかな…」再び元気な回答がたくさん。みんな大人をよく見て、よく知っています。
「20歳!」「30歳!」「えっと、17歳?」…
こちらについては正解が出ませんでした。
「あと10年!」「私は8年!」とみんなワクワク。大人になって投票してみたいという気持ちがどこかにあるのでしょうか。
みんな真剣に耳を傾けます。
投票すると、自分の思った未来に変わるかもしれない。
実はこの「ちがさKID'S」には、「こども選挙委員」の「さいちゃん」が通っています。2ヶ月間にわたり、勉強会やワークショップ(詳細は「こども選挙マガジン」過去記事をご覧ください)に参加し、候補者への質問も考えてきたさいちゃんから、みんなにメッセージを送りました。
2ヶ月間の学びを自分の言葉で披露してくれたさいちゃん。聞いているみんなも、いつも一緒に遊んでいるさいちゃんの言葉に、心が揺さぶられた様子です。
ここからはいよいよ、投票の準備に入ります。さいちゃんをはじめ15名の「こども選挙委員」が3人の市長候補者に投げかけた3つの質問と、その回答ビデオをみんなで鑑賞することに。
でもここで、大事な約束です。公職選挙法の「未成年の選挙運動禁止」に抵触しないよう、スタッフから注意事項が伝えられました。ビデオを見て「市長には✖️✖️さんがいい!」や「〇〇さんの言っていることはダメ」などを言うことはNG。思ったことは、心の中でメモをするように伝えました。
ついに動画再生の時間です。ビジョンの前に集合し、食い入るように候補者の声を聞き、目で確かめるこどもたち。
こどもたちが見た動画は、こちらの3本。ポスターが貼られる順番と同様の「届出順」に再生しました。
藤村ゆかりさん
佐藤光さん
桂秀光さん
約15分の動画も、飽きることなく真剣に見終えたこどもたち。
さあ、いよいよ投票です!
メッセージ記入に大行列!投票済証を握りしめて。
3人の動画を観て、こどもたちはいろいろと話したくなったことでしょう。でもきちんとルールは守ります。お友達とも話さず、スタッフに促されて投票受付へ。投票用紙を受け取り、投票台へ向かいます。
仕切りのある本物の投票台につくと、真剣な面持ちに。鉛筆を握り、投票用紙に丸をつけ、大事そうに折り畳みながら、投票箱へ。
自分で考え、自分で決めた、かけがえのない1票が投じられました。
中には、こんな子もいました。学童の職員さんの元へ行き、切にこう訴えました。
大切な1票だから、適当に入れることはできない。1票の重みは、こどもたちにもしっかりと伝わっています。それでも彼女は、自分なりに一生懸命考えて丸を付け、投票を済ませていました。
通常の選挙はこれで終わり。でもこども選挙では、結果よりも「なぜその候補者に投票したのか?」という理由の方が大事だと考え、任意で「候補者へのメッセージ」を書いてもらうことにしました。こどもたちから預かったメッセージは、候補者のもとに確実に届ける、と約束をして。
この日のメッセージ記入台は、大行列となりました。「伝えたい」が溢れ、用紙を埋め尽くすほどぎっしりと記入する子も。
最後には、投票済証も手渡しました。「本当の選挙の結果が発表されるまでは、誰に入れたかは誰にも言わないで」と大切な注意書きも添えられています。
投票とメッセージを通してしっかりと意思表示をしたこどもたちは、誇らしげに受け取ってくれました。
大人になったら、絶対投票に行く!
この日、さまざまな子どもたちの声を受け取りました。
投票を終えた子どもは、
と目を輝かせて話してくれました。
帰ったあと、保護者の方にそう伝えた子もいたそうです。
投票済証に書かれた注意書き(公職選挙法「こどもの選挙運動の禁止」に抵触しないよう考慮したもの)を真剣に、しっかりと受け止めてくれたことを実感し、とても心強く感じました。
この日預かった40票は、大切に保管し、10月30日、市内各所で開催する「ちがさきこども選挙」と同時に開票しました。
選挙の結果、こどもたちはどんなふうに受け取っているのでしょう。親子で、どんな話をしたのでしょう?きっと今までとは、違う景色が見えているはずです。
私たち「ちがさきこども選挙実行委員会」は、このような模擬投票が、学校で、まちで、広く行われることを願っています。
「ちがさKID’S~みんなのヒミツキチ~」のみなさん、ご協力ありがとうございました!
貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。