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いつでも誰でもふらっと来てね。Cの辺りが、誰も来なくてもハッピーアワーを続ける理由
ハッピーアワー。
ビールをプシュってしたくなる響きですね。
(写真はノンアルコールですが。笑)
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Cの辺りで2週間に一度開催している平日夜のハッピーアワー。
今日はその想いについて書いてみたいと思います。
予約不要、出入り自由、参加費ゼロのフリータイム
Cの辺りはコワーキングスペース兼セレクト図書館。いつもは夕方に閉まってしまいますが、2週間に一度、「ハッピーアワー」の日は夜まで灯りが灯っています。
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夕方、仕事を終えた後のメンバーさんはそのまま残り、一度お子さんを保育園にお迎えに行ってからまた戻ってきたり。メンバーじゃないけれどCの辺りを応援してくださっている方が、ビールを片手に顔を出してくれたり、習い事を終えたお子さんとお母さんが、ちょっとだけ顔を出してくれたり。
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いつもはメンバーさんたちのお仕事と読書の場であるCの辺りが、この日ばかりは誰でもごちゃ混ぜで自由に集い、一緒にご飯を食べて語らって、ときにはゲームや映画に興じて。そんなオープンでゆるやかな空間に変わります。
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冬はおでんを煮込んだり、焚き火を囲んだり。
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春は夕暮れ時にテントサウナも登場し、ととのった後は、ビールとタコ焼き。子どもと大人がボードゲームにハマって真剣対決していたり。
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予約不要、出入り自由、参加費ゼロ、持ち込み大歓迎。
その時の気分によって、地元飲食店のテイクアウトのオーダーを事前に受け付けて用意したり(この時は割り勘)、誰かが持ち込んだ材料をみんなでお料理したり。
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飲み物は、店内販売のものを各自購入して飲んだり、ボトルごと持ち込んでくれた方のものをみんなで分けたり。もちろん手ぶらでふらりと来て、ちょっとだけ飲んで帰るなんてかたちの参加もOK。
海辺の立地をいかして、知っている人も知らない人も、ゆるやかに混じり合う時間・空間をともに楽しんでいます。
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職場でも家庭でもなく、地域で気軽なつながりを
コワーキングスペースと図書館なのに、Cの辺りがこのような場づくりをしている理由。
それはもちろん、まずわたしたちオーナーが楽しいから。Cの辺りを通して出会ったみなさんと、せっかくなら仕事の枠を越えて仲良くなれたらという思いがあります。2人の子どもたちも、地域の楽しい大人たちとの出会いを存分に楽しめるし、母としては夕飯もここで済ませちゃえるし。海辺のこんなに恵まれた立地にあるCの辺りの美しい夕刻を、より多くの人とよりハードル低く一緒に楽しめる機会があったらと思って考えた企画です。
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もうちょっと真面目に解説すると、私たちが根本に据えている「関係資本主義」という考え方に行き着きます。
金銭的な豊かさよりも、人と人との関係性が豊かな方が、幸せ度が上がる。
私たちはさまざまな出会いと経験からそう確信し、Cの辺りを「人と人が豊かな関係資本を育む場」として運営しています。イベントもプロジェクトも、金融資本が増大する、つまり儲かることよりも、関係資本が最大化することを「成功」とみなして企画運営をしています。
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もちろん仕事の場、読書の場として、それぞれの方のニーズに合った使い方をしていただけたら、私たちオーナーとしては幸せです。でも、せっかく空間をともにするのなら、言葉を交わしたり、ご飯を食べたり、そんな時間をご一緒できたら。そこからつながりが生まれて、参加された方の地域での暮らしがもっと豊かになっていったのなら、私たちはもっともっと、幸せを感じます。
リモートワークになって職場にも行かず、友だちとの飲み会も気軽にできなくなってしまったいま、日々の暮らしを営んでいる地域で気軽な関係性を育んでみませんか?
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そんな密かな提案を、このハッピーアワーを通じて、そっと差し出しているのです。
誰も来なかった夜の訪問者
冷たい雨が降り続いた春先のハッピーアワー。開始時間になっても誰も現われず、「今日は私たち家族だけかもねー」なんて話しながら、子どもたちとドラえもんの映画を見ながらご飯を食べていました。
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終わりがけの頃、入口のドアが開く音が。目を上げると、Cの辺りを気に入って何度か足を運んでくださっていた方が、缶ビール1本とおつまみを持って立っていました。
今からでもいいですか?
遠慮がちにそう尋ねた彼を「どうぞどうぞ」と招き入れ、小さく乾杯。世間話を一通り終えると、彼は近況を語り始めました。
配属が変わり、新しい職場のあり方にしんどさを感じていること、異動希望を出すことになった経緯と後悔の想い、そして今日はたまたま早く終わったので「もう遅いかな」と思いながらも足を運んだ、と。
なんだか、嬉しさが込み上げました。仕事でしんどい思いを抱えて、たまたま早く終わった夜にCの辺りのハッピーアワーのことを思い出してくれたこと。しんどさを抱えたまま足を運び、ありのままに話してくれたこと。
私たちは「そうなんですね、それはしんどいですね」としか言えなかったけれど、最後に彼はこんな言葉を贈ってくれました。
今日来て良かったです。
なんか明日からまた頑張れそうな気がしてきました。
「頑張らなくていいですよ、また来てくださいね」
私たちはそれだけ伝えて、雨の中家路に着く彼の背中を見送りました。
サードプレイスのような、まちの縁側のような
彼の他にも、ワイワイみんなで話している合間にふと、子育てのしんどさや体の不調、仕事の不安を打ち明けてくれる人がいます。さっきまでの笑顔から一転、涙が溢れ出てしまう人もいます。
そんな方々には、ただただ、「来てくれてありがとうございます、また来てくださいね」と伝えています。弱さや痛みも持ち寄ってくれたことに、心からの感謝の気持ちとともに。
これが、私たちがハッピーアワーを続けるもう一つの理由。
これまで16回開催してきましたが、正直、雨の日や寒い冬の夜なんかは閑散としていることもあります。「たくさんの人と知り合えるかも」なんて期待を携えて足を運んでくださった方の中には、「なんだ、あまり賑わってなかったな」ってガッカリさせちゃったこともあるかもしれません。
そういった期待にお応えできていないのは私たちの力不足でただただ申し訳ない気持ちです。でも私たちは、企画を作り込んだり魅力的な料理を提供したりすることなく、細々と緩やかに手作りのこの場を続けていきたいと考えています。なぜなら、主催である自分たちが気楽に楽しめる場でありたいし、必要な人が、予約なしにいつでも気軽に足を運んでくれる場所であり続けたいから。
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いま、誰もが自分にとってのサードプレイスのような場所を求めていると思います。普段弱さを表に見せない人も、何かの拍子にふと、心に余裕がなくなってしまうこともあると思います。そんな時、受け止めてくれるのは、これまでなら家庭や職場でした。でも、そのどちらもが揺らいでいるのが現代の社会の現実だと思います。
それならば、地域の誰もが気軽に足を運べる時間・空間がまちにあればいい。職場や家庭とは違う素の自分でいられて、ほっと一息つける、まちの縁側のような場所を差し出すことができたら。もっと言えば、これを真似してまちのあちこちで「ハッピーアワー」のような時間・空間ができていったら。そうなればきっと、心が壊れてしまいそうなとき、まちに救われる人々も増えるのではないでしょうか。
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そんな想いで、たとえ誰も来なくても、この場を必要としてくれている人がいる限り、私たちはハッピーアワーを続けていきます。まだまだみんなにとって居心地が良い空間を作れているとは言えない私たちですが、少しずつ少しずつ、みなさんのお力を借りてあれこれ実験を繰り返しながら、回を重ねていきたいと思っています。
そして私たちCの辺りが大切にしている5つのbe「つくる・つながる・もちよる・たすけられる・おもしろがる」に、ひとつでも共感してくれる人々が増えたら、こんなに嬉しいことはありません。
よろしければ、足を運んでみてください。
どうぞどうぞ、お気軽に。
これからのシーズンの夕暮れは、もう最高ですから。
第2・第4金曜日、17時半〜20時。
Cの辺りは誰にでも、開いています。
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