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9歳の娘、ひとり漁村留学行きを決意。「私はできる」という尊い想いを胸に。

娘の旅立ちまで、あと10日。

期待とか興奮とか、ちょっとの不安とか、やっぱりの寂しさとか。
いろいろな気持ちとともに過ごしています。

企画好きで人懐っこい茅ヶ崎っ子


私の娘は間も無く小学4年生になる9歳。

茅ヶ崎市で生まれ育ち、自由な空気とオープンマインドな茅ヶ崎人に囲まれ、のびのびと成長してきました。

小さい頃からたくさんの人に囲まれて育ったため、人との壁がなく誰とでも臆することなく話ができる子に。自分の思いを口にするのは苦手だけど、人一倍意志が強く、時に頑固で、幼い頃から「自分で」が口癖。

小学生になると、放課後や休みの日はたくさんの友達と自由に駆け回るように。読書がとにかく大好きで、ピアノが好きで、お友達が好きで、踊るのも好きで、イベントも大好き。

4歳の弟と

そして大の企画好きで、イベントは参加するよりも企画する派。「うみべのとしょかん」の館長をやったり、こどもマーケットに出店したり、「ちがさき・さむかわ こどもファンド」のこども審査員として活躍したり。

ある時は、こどもマーケットの店主に
またある時は、大人に混じって「うみべのとしょかん」としてイベント出店
そしてある時は、こどもがこどもを審査するファンドの審査員に挑戦

リーダータイプではないけれど、あふれ出るほどの好奇心で、ちょっと人と違う裏方的な働きに力を発揮してきました。

「自分で」が大事な娘と、MORIUMIUS


そんな彼女が毎年夏休みに必ず訪れる場所があります。津波でまちの8割が流されてしまった宮城県石巻市雄勝町の高台にある「MORIUMIUS(モリウミアス)」。森と海、美しい自然に囲まれたこの場所は、一言で言ってしまえば、サステナブルをテーマにした子どもの宿泊体験施設です。

廃校を多くの人の手でリノベーションし、2015年にオープンした「モリウミアス」

6泊(コロナ以降は5泊)という長期に渡り小学生以上の子どもが親から離れて滞在し、釜戸でご飯を炊き、鶏や豚のお世話をして、地元漁師さんのお手伝いをして、魚を捌いて、森で旱魃を体験し、薪割りをしてまたご飯を炊いて。

うまくいかないこともたくさん。失敗だらけ。

そんな繰り返しの中で、仲間と一緒に、心も体も丸ごと使って、自分たちの手で暮らしをつくっていく、唯一無二の場所に身き、たくさんのものを受け取ってきました。

他のサマーキャンプなどにも参加経験のある娘ですが、モリウミアスには毎年必ず参加したいと言います。その理由を聞くと、「自分でやることを決められることがいい」と。(ついでに「ご飯が美味しい♡」も。笑)

6歳で初めて1泊にチャレンジした時は号泣だったのに。

いつしか娘の価値観にぴったりハマる大切な場所になったんだなと感じ、そんな家以外の居場所があることに、親として感謝の気持ちを抱いていました。

「漁村留学?行きたい!」

今やMORIUMIUSの常連になった娘。3年生の今年も夏のプログラムを終え、秋にも家族で再訪。そこには3人の「漁村留学生」の姿がありました。

2022年度から新たにスタートした「漁村留学」は、親元を離れて1年間に渡りモリウミアスで暮らしを営み、地元の公立小中学校に通う制度。初年度は3人の中学生が参加していました。

朝ご飯も夜ご飯も自分でつくり、薪ボイラーでお風呂を炊いて、鶏と豚のお世話をして。学校の勉強もある中で、中学生たちは自分たちの暮らしを手作りしながら共同生活を送っていました。週末は雄勝のまちの人と触れ合ったり、漁業の手伝いをしたり。これからはまちづくりにも参加していくと聞いています。

そんな留学生のみなさんの姿を横目に、1泊のプログラムを終えた娘。帰りの電車の中で「漁村留学は4年生から行けるんだって」なんて家族で話をしていたら、娘は「4年生から?行けるの?行きたい!」と。

えっ、マジ?

耳を疑った私たち。その時はノリで言ったのかもしれないし、「まあまあ、ゆっくり考えよ」なんて流してみたりして。「まさか本気じゃないだろう」という正直な気持ちも抱きながら、内心ドキドキしていたのを思い出します。

今年秋のプログラムにて。薪割りも上手に。
漁船に乗って漁に同行し、漁師さんのお手伝い

それから1ヶ月後の12月、漁村留学に特化した4泊のプログラムが開催されるとのことで、娘に「行く?」と聞くと速攻「行きたい!」と。いつものプログラムよりもより、本当の留学生活に近い暮らしを送るらしく、「これに参加してから考えてもいいかもね」なんて言いながら見送りました。

そのプログラムではご飯作りも風呂たきもやりながら、狩猟体験もしたり、なかなかハードな内容だった様子。

参加者の中でダントツ小さかった娘(右端)

迎えに行った際にスタッフの方に様子を聞くと、「楽しそうに過ごしていて、漁村留学生活も特に問題なさそう」とのこと。スタッフの方が来年度への意志確認をしたところ、「行きたい」と言っていたという。ただ、「理由ははっきり出てこない」とも。帰宅後に改めて聞いてみると、やはり彼女から出てきた言葉は、「行きたい」。

おぉ、マジですか。

この時、夫も私も「真剣に娘の想いに向き合ってみよう」と心に決めたのです。

帰りに立ち寄った松島で。

「難しいのが面白い。」


こうして迎えた2023年の年明け。

2023年の初日の出。いつものサザンビーチで

1月末までの応募期間までに、娘といろいろと話し合ってみることに。「行きたい」という気持ちをもう少しよく理解してみたくて、ゆっくり対話をしてみました。

私「今まで3年間かな、モリウミアスに行ってきてどうだった?」

娘「楽しかった」

私「どういうところが楽しい?」

娘「えっとね、自分で決めるところ」

私「なるほどね。小夏にとっては、自分で決められるかどうかが大事なんだね。でも面倒臭いことも多くない?薪割りとか釜戸でご飯炊くとか」

娘「なんかねー、面倒臭いけど、なんか面白いんだよー」

私「なんでだろうね?」

「うーん、難しいからかな。難しいのが面白い」


酔いやすいため、漁船に乗るのは苦手らしい。笑

はっとした。「難しいのが面白い」。

便利なものやサービスに囲まれて暮らしている日常に比べて、モリウミアスの暮らしでは、度々難しさに直面する。

スタッフのみなさんは、子どもを信じて先回りせずに見守る。どうすればいいか、自分で考えなければならない。

そんな暮らしを「面白い」という感覚で捉えているとは。

「この感性はとても大事だ」

直感的に私はそう思いました。

モリウミアスに通い、カマドの火付けも上手になりました。

「なぜ?」に答えられなくても。理由よりも大事なこと

「行きたい」と言うけれど、「なぜ?」にちゃんと答えられないことが気になっていた私たち。スタッフの方々も、それを懸念されていました。

でも対話の中で「難しいのが面白い」と言う言葉に辿り着き、何度聞いても「行く」と言う意志を曲げない娘と過ごす中で、彼女にとっては「今」なんだろうなと思うようになりました。

理由なんてはっきりわからないけれど、「今行きたい」と感じる。
そんな娘を引き止める理由なんて、一つもない。
「面白そう」「行きたい」。それでいい。それがすべて。
「行っておいで」って言ってあげよう。

そして、いっぱい失敗してきたらいい。
もしも挫けたら、本当に無理だったら、帰ってきたらいい。
それもかけがえのない経験になる。

大好きなピアノも娘の成長を支えてくれています

そんな結論に辿り着き、私たち家族は娘の冒険を応援しようと決めました。愛娘と1年も離れて暮らす寂しさをグッと堪えながら。

「できる」って尊い

それからは怒涛の日々。

エントリーシートを提出し、オンラインで面談し、ありがたいことに娘の留学を受け入れていただけることに。スタッフの方々には、感謝でしかありません。

すぐに担任の先生にもお話しして、転校手続きをして。

登校最終日には、企画好きを発揮。手作りの段ボールガチャガチャを学校に持ち込み、クラスのみんなに一つずつ手作りのキーホルダーをプレゼント。


大好きな友達に囲まれて、残りの茅ヶ崎生活を謳歌しています。

そんな日々の中で、改めて気づいたことがあります。それは、彼女の中にある大きな自信。「どこに行っても友達ができる」「親と離れても暮らしていける」と言う揺るぎない自信が彼女を突き動かしているのだなと。

本人に「どこでも友達できる自信ある?」と聞いてみたら、ニヤリとして「ある」と。なんて頼もしいんだろう。

なんでも「私なんて、できない」と思ってしまいがちだった私の子ども時代とは大違いの娘が、眩しくて眩しくて。

もちろん1週間の体験プログラムと1年の生活は大きく違う。全校生徒30名ほどの学校に小さな小中学校に転校して、暮らしも大きく変わる。娘もまだ想像できていないだろうし、途中で挫けてしまうかもしれない。帰りたいって言い出してしまうかも。

でも。


たとえ根拠なんてなくても、「私はできる」と言えるその自信が宝物だと母は思うのです。「できる」って、本当に尊いよ!

そんな宝物を胸に、彼女は間も無く旅立ちます。
たったひとり、石巻へ。

いや、ここまでの娘の成長を見守り続けてくれた信頼できるスタッフのみなさんがいるから、ひとりじゃないね。

行ってらっしゃい。あなたなら、大丈夫。
でもダメだったら、いつでも帰ってきていいよ。
あなたには、いつでも戻って来られる場所があるからね。

間も無く訪れる東北の春。
娘の大冒険が始まります!!

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池田美砂子/株式会社be・Cの辺り
貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。