炭火が生まれるまでの物語 #2 窯入れ
和歌山県で紀州備長炭を焼いております、池渕木炭です。
第2回目は、「窯入れ」という作業についてお話してみようとおもいます。
ゆったり炭火を眺めながら、もしくは炭火を思い浮かべながら、
読んでいただければうれしいです。
#2 炭焼き工程の終わりであり、始まりでもある「窯入れ」
紀州備長炭は、備長窯と呼ばれるいちじくのような形をした登窯で焼き上げます。
材料は窯により様々ですが、池渕木炭の窯は石と赤土でつくられた昔ながらの窯です。
毎回1000℃の高温に耐えて、炭を産み出してくれる大事な窯です。
ここ紀州では、窯作りに適した粘り気の強い土が豊富にとれることも、備長炭作りが確立した理由だと言われています。
山で切ってきたウバメガシを、この窯に詰めていく作業を窯入れといいます。(そのままですねすみません。。)
もうちょっとくわしくお話していきます。
良い炭を作るための無限ループ
窯入れは、タイミングがとても大切です。
真っ赤に燃える炭を窯から出したら、まだ窯がアツアツのあいだに、次回用の原木を入れます。
窯入れ前に、窯に温度計を突っ込んで、中の温度を測ってみたのですが・・・
うーんまだしばらく入れません・・・
何秒間か、中にとどまれるような温度になったら、窯入れ開始です。
立詰めといって、窯に立てかけるように入れていきます。
窯出しで疲労がピークの時に、急いで原木を入れるのは、窯の余熱で原木にふくまれる水分をゆっくり飛ばしていくためです。
あらかじめ原木を乾燥させておいて、窯が冷めてから入れればよいのでは?と思われるかもしれませんが、そうそう楽はさせてもらえません泣
窯で加熱すると原木はギュッと締まっていくのですが、この時、原木に水分がないと締まりが悪くなってしまうのです。
炭は新鮮な方がいいですが、
炭にする原木も切り立てのみずみずしい生木がよいです。
曲がった木をまっすぐにする技
良い炭を焼くためには、窯の中になるべく隙間を作らないように原木を詰めていくことが重要です。
ですが・・・
ウバメガシは曲がりくねったものが多く、育つ過程でいったい何があったのか聞きたくなるような木も・・・
そこで、曲がった木をまっすぐにしていきます。
この作業を「木ごしらえ」といいます。
木の曲がった箇所に切り込みをいれてゆっくり曲げ、そこに楔をこめます。
ウバメガシは木質がとても硬いので、切り込みが浅いと全く曲がりませんし、深すぎると折れてしまうので、力加減がキモになります。
場所を見極めて、楔を何本かいれると・・・
ほら!こんなにまっすぐになります!
あと、枝や葉っぱをつけたままにすると木の水分を吸い取っていってしまうため、きれいに取っておきます。
細かい一手間が大切です。
ウバメガシを持ってひたすら往復!
池渕木炭では、原木を持って窯の中に入り、順番に立てていく方法をとっています。(窯の外から木を差し入れ、道具を使って、ヒョイっと立てていく方法もあります。)
窯の中は、未知の熱さです。いや、「熱い」ではなく「痛い」と言った方が正確かもしれません。
窯入れの日は1日中、汗をかきかき、原木置き場と窯をひたすら往復します。
全ての木を入れ終わると、やっと一息つけるのですが、あまり休んでもいられません。炭焼き工程の終わり=次の炭焼きのはじまりでもあります。
あくまでも、木の都合が最優先、人間の都合は二の次です。
ほら、窯の中のウバメガシが早くしなさいよとこっちを見ていますよ・・・
ここから徐々に窯の温度をあげていくと・・・?
この続きはまた次回に。
今回も長くなっていまいましたが、お読みいただきありがとうございました!
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