前の記事で、家族の変容に関する講演を紹介した。
同シリーズの次の講演も、「その通り!」と思える指摘が多かったから紹介しよう。
今、家族像がバトルフィールドになっている、という内容である。
「変わる『 家族』」(2) 宮本太郎・中央大学教授 2024.7.25
キーワード
(家族の)昭和モデル・ネオ昭和モデル・不都合な真実モデル
(家族政策の)主婦支援型・両性支援型・市場志向型
(昭和モデルの独自性)①安定就労確保 ②皆保険・皆年金 ③税・保険料控除
(現在の3つの層)「安定就労+社会保険加入層」「新しい生活困難層」「福祉受給層」
「新しい生活困難層」:低所得不安定就労層・ひとり親世帯・軽度の知的障害・低年金世帯等
同類婚(パワーカップル・ウィークカップル)
(結婚の条件)配偶者の安定所得>家族にかかる負荷とリスク
ワーママvs主婦パート
家族依存から家族選択へ
裏目に出る社会保険偏重
日本の昭和モデルは、ドイツ・フランスなどの主婦支援型に近いが、現金給付が少ない点で異なる。その点を補う仕組みの一つが、皆保険・皆年金の社会保険制度だが、これが現在裏目に出ているという。
3層間の対立
家族の昭和モデルが崩れた。その結果、現在は3つの層の間で家族の形が異なってきており、対立が生じているという。
3層とその家族モデルは、以下である。
①「安定就労+社会保険加入層」からなる昭和モデル・ネオ昭和モデル
②「新しい生活困難層」からなる(『万引き家族』的)不都合な真実モデル
③「福祉受給層」からなる単独世帯
片手落ちの異次元少子化対策
政府の少子化対策である「こども未来戦略」(加速化プラン)の〝建付〟については、下の投稿などで紹介した。
同じ点が講演でも指摘されていた。
そして家族像がバトルフィールドに
◇
上に引用した4つの内容は、まったくその通りと思われた。
同時に、国会議員になるような「層」の人たちは、現状がこのようであることを認識しているのだろうか? と疑問に思った。
少子化対策にしても、少子化だけを解決しようとしてもダメだろう。
もっと大きな視点が必要だろう。諸制度を、家族形態に中立的なものに変えて行く必要があるだろう。
そうでなければ、どのような対策をしても国民の間の対立が深まるばかりで、社会的安定が保てるとは思えないからである。
(追記)
記事にはしないが、同シリーズの4つ目の講演の内容も面白かった。
困窮家庭の子どもたちに関する話である。
「変わる『家族』」(4) 渡辺由美子・認定NPO法人キッズドア理事長
面白かったというより、ショッキングだった。
一方で、このようなリスクがあるから、長期安定収入に余程の自信がない限りは、リスクを回避するために子を持たない選択をする人が増えているのだろう(自分のように)、とも思った。
子が貧困に陥るリスクに社会的に対応することなしに、「加速化プラン」程度のことをやっても、やらないよりはマシかもしれないが、出生率の向上にはほとんど効果がないだろうと思う。
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