子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#28 支援金は健康保険法の目的の範囲内であり、改正は不要である
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
支援金は、医療保険料とは「全く別のもの」と政府は説明する。
「全く別のもの」を医療保険制度を通じて徴収することは、医療保険制度の目的から外れることにならないか。
浅野 先ほどの大臣の答弁を聞いておりましたら、なぜ保険料として徴収をするのか、社会連帯の理念を基盤とした共に支え合う仕組みであること、制度の持続可能性を高める効果があること、ほかの社会保険制度について、対象者が広いこと、また、世代を超えて支え合う仕組みが組み込まれていることなどが答弁の中に含まれておりました。私は、それはそのとおりなのかなというふうに思うんですね。
ただ、この子ども・子育て支援金、今回、ちょっと健康保険法の改正も絡みますので、その健康保険法の法律の内容とちゃんと整合しているのかという視点で次の質問をさせていただきたいんですが、まず政府参考人の方に確認をしたいと思います。
三問目に準備をしていたものですけれども、子ども・子育て支援金を充当する事業というのは健康保険事業なんでしょうか。健康保険法の第百五十五条を見ますと、健康保険事業に要する費用として保険料を徴収するというのが定められているんですね。つまり、保険料として徴収をされたお金というのは基本的に健康保険事業に使わなければいけないという法のたてつけになっていますが、子ども・子育て支援金は健康保険事業なのか、教えてください。
熊木 お答え申し上げます。
まず、結論的に申し上げまして、この支援金を充てる事業というものは、概念上、健康保険事業の範疇に含まれるものと考えております。
御指摘のとおり、現在、健康保険法第百五十五条におきましては、「健康保険事業に要する費用に充てるため、保険料を徴収する。」というふうに書いてございます。この中で、健康保険事業に要する費用は、幾つか、介護納付金ですとか、後期高齢者支援金ですとか、そういったものが含まれるというふうに書いてございます。
今回、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案におきまして、健康保険法を改正させていただきます。この改正部分におきまして、今申し上げましたような介護納付金等々と同様に、この健康保険事業に要する費用の中に、子ども・子育て支援納付金に要する、支援金の納付に要する費用、これを含ませる改正案を入れてございます。
浅野 ありがとうございました。
そうですね。百五十五条を改正して、保険料として徴収をする対象の中に子ども・子育て支援金というものを追加をするという法改正が今回されるということなんですが、続いて、ちょっと角度を変えて大臣にもお伺いしたいと思います。
これは、百五十五条ではなくて、健康保険法の第一条。この第一条の中では、この健康保険法という法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うものだというふうに書いてあるんですね。
今回、この第一条は改正される予定がありません。ということは、つまり、子ども・子育て支援金というのは、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うためのものなんだということになるわけですけれども、その理解でいいんでしょうか。
加藤 委員の御指摘は、支援金制度が健康保険法の目的の範囲内であるかとのお尋ねと理解をいたしますが、健康保険法の目的には、先ほど委員が挙げられた文言の後に、「もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」という文言があるのですが、健康保険法の目的には国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することが含まれていることや、支援金制度は、将来の健康保険制度の担い手の育成を支援し、健康保険制度の持続可能性を高めるという観点から、同法の目的の範囲内であると考えております。(発言する者あり)
浅野 今、無理があるんじゃないかという声も出ましたが、今大臣が答弁された第一条の前段には、業務災害以外の疾病、負傷、死亡、出産に関する保険給付を行うということ、そして、それをもって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としているということで、これは前段が手段、後半は目的なんですね。
ですから、手段の部分を変えずに、目的に合致しているからいいんだということにしてしまうと、では、条文の前半部分が何でもいいということになってしまうので、それはちょっと法律の拡大解釈なのではないかなというふうに思うわけです。
ですから、私としては、第一条も併せて改正しないとおかしいんじゃないかと。具体的に申し上げれば、現状、業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産。これに加えて、子育てに関する記述を追記をしないと、健康保険法第一条の手段を規定している部分、子育てに対する保険給付を行うというふうに書いておかないと、法律の条文に書いてあるものが形骸化してしまって、何でもありというふうになってしまいかねない懸念があるんですが、そういう改正をすべきではないでしょうか。
加藤 支援金制度は、社会連帯の理念を基盤に、子供や子育て世帯を少子化対策で受益がある全世代、全経済主体で支える仕組み、これは繰り返し申し上げてございます。
そして、現行の医療保険制度におきましても、病気やけがに限らず、出産や死亡に関する給付など幅広い給付のほか、保険給付ではない疾病予防等の広範な事業、これが行われておりまして、またさらに、後期高齢者支援金など世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれているなど、給付と負担の関係は様々であると承知をしております。
さらに、少子化、人口減少に歯止めをかけることは、将来の健康保険制度の担い手の育成を支援し、その持続可能性の確保に資するものであることから、支援金は健康保険法の目的の範囲内であり、改正は不要であると考えております。
浅野 そうなると、やはり第一条の意味がなくなってしまうのではないかなと思うんですね。必要性がなくなってしまいかねないなというふうに思いますので。第一条、疾病予防というのは、やはり疾病に関する保険給付という範疇に含まれると思うんですね。
ただ、今回は、死亡若しくは出産という事象に対する保険給付だけしか規定していなかった法律の中に子育てというものが新しく加わるという変更だと思いますので、やはり、第一条、健康保険制度というものが存在する目的の中に、子育てに対する保険給付を行うんだというのをもっとちゃんと国としても明確にすべきだと思うんですよ。
こどもまんなか社会を目指すのであれば、子育てもちゃんと保険給付の対象にして、そのために子ども・子育て支援金を皆さんからいただくんだということをもっと堂々と言ったらどうかなと思うんですが、いかがでしょうか。
加藤 繰り返しになりますが、支援金制度は、次世代の育成が健康保険制度の持続可能性を確保する観点から重要であること、これは繰り返しになりますが、また、そこに加えて、健康保険制度においてこれまでも出産育児一時金や出産手当金といった給付を行ってきたことを踏まえれば、健康保険法の目的の範囲内であると認識をしてございます。
参考資料等
健康保険法