子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#54 これまで拠出をいただかないという形で国民の皆様に還元されていた歳出改革と賃上げによる軽減分の範囲内で子育て世帯のための新たな政策を実現をする
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
支援金は、「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で構築する」と政府は言う。
歳出改革は、これまでしていなかったのか。
していたとすれば、歳出改革によって生じていた社会保険負担軽減効果の果実は、どこに行っていたのか。
井坂 少子化対策の財源として、社会保険料に上乗せをして集める支援金、実質的な負担は生じないと政府は説明しているのに、国民の皆様から厳しい反発の声が届いています。
反発の理由は三つあると思います。
一つ目は、今の裏金問題です。
事件発覚から三か月たったのに、自民党が行ったのは手ぬるいお手盛りの調査のみで、関係者の処分もされておりません。裏金を自分の口座に保管したり、使途が不明だったりと脱税が疑われるケースも多々あります。国民は増税、自民は脱税では納得できない、裏金をもらった政治家が国民に負担を求めるのはおかしいという怒りは当然です。
支援金に国民が反発する二つ目の理由は、厳しい経済状況です。
日本は現在、二十一か月連続で実質賃金がマイナスになっています。賃金が物価を下回り、満足に物が買えない。若い世代が結婚や出産のためのお金も準備できない中で、これ以上の負担は勘弁してくれという国民の願いは当然です。
三つ目の理由は、実質負担ゼロという説明の怪しさであります。
社会保険料に上乗せして支援金を集めるのに、同時に歳出削減も行うから実質的な負担は生じませんと政府は説明します。それでも結局社会保険料は上がるんでしょうという国民の疑問は当然です。
本日、この三つ目の理由、本当に支援金の実質負担はゼロなのかというところから、丁寧に解きほぐして議論したいと思います。
パネル、資料の一番を御覧ください。
これは政府が配布している説明資料です。下の部分に赤と青の図があって、高齢化で社会保障の経費が伸びるけれども、赤い公費、つまり税金の支出と、青い社会保険料の部分を歳出削減で同時に減らします、その浮いた税金一・一兆円を子供、子育て予算として、また、浮いた社会保険料一兆円を支援金として少子化対策に使いますというのが政府の説明であります。
総理は繰り返し、歳出削減と賃上げにより、支援金の実質的な負担は生じないと答弁をしています。しかし、パネルでいえば、右の黄色い矢印の歳出改革で削減をした社会保険料の範囲内で支援金を集めるということで間違いないでしょうか。賃上げの有無に関係なく、主に歳出削減だけで実質的な負担は生じないということか、こども政策担当大臣に伺います。
加藤 お答え申し上げます。
今回の子供、子育て予算の財源確保に当たりましては、まずは徹底した歳出改革に取り組むことを原則としております。
支援金について申し上げれば、歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、子供、子育てに充てる支出の財源をいただくことを基本としております。その際、社会保障負担率が重要であると考えており、その社会保障負担率の分子は保険料負担、分母は国民の所得でございます。
分子の保険料負担につきましては、先ほど申し上げたとおり、歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせることを基本としております。さらに、分母につきましては、賃上げによって雇用者報酬の伸びを一層高めることとしており、この分子を減らす、そして分母の取組の両面で、確実に社会保障負担率を軽減をしていきます。そのことをもって、実質的な負担は生じないと申し上げております。
このような考え方の下、令和五、六年度の予算の歳出改革による保険料負担軽減効果は合計〇・三三兆円程度としており、これを令和十年度まで継続をすると一兆円程度の軽減効果が生じ、支援金制度の導入のために社会保障負担率が上昇することにはなりません。
その際、賃上げによって雇用者報酬の伸びが高まれば社会保障負担率の一層の軽減につながり、支援金の導入のために社会保障負担率が上昇しない、すなわち実質的な負担が生じないということが確実になりますので、政府として賃上げに総力を挙げて取り組んでまいります。
井坂 いろいろまぶして長く答弁されましたが、事前に当局とやり取りしている限りは、基本的には歳出削減の範囲内で支援金の財源を確保する、賃上げは、プラスアルファの効果としては、分母、分子でおっしゃったようなことはあるだろうけれどもというふうに承っております。
実は、この歳出削減は、支援金のために今から始めることではありません。
配付資料の二番を御覧ください。
これまでも、政府は社会保障費の歳出削減は行っている。その浮いた財源で、二〇一三年度から二〇二二年度まで九年間で、子供、子育て関連予算を年平均一千八百億円のペースでこれまでも増加をさせてきました。そして、配付資料の右下、囲んでありますが、今後も、同じく年平均一千八百億円のペースで歳出削減を続けて、子供、子育て関連予算の財源を生み出すということであります。
先ほどのパネル一に戻りますけれども、社会保障費の財源は、下の赤い公費、つまり税財源と、青い社会保険料の組合せです。歳出削減をすれば、赤い部分と青い部分は同時に削減をされます。
厚生労働大臣に伺いますが、これまでも、社会保障費の歳出改革で年平均一千八百億円の公費を削減をして、子供、子育て関連予算の財源にしてきました。同時に、これまでも社会保険料は一定程度の削減をされていたということで間違いないでしょうか。これは単純な事実の確認ですから、端的にお願いいたします。
武見 おっしゃるとおりです。
井坂 ありがとうございます。そのとおりなんです。
こども政策担当大臣に伺いますが、じゃ、今後もこれまでと同様のペースで社会保障費の歳出改革を進め、年平均一千八百億円の公費とそれから同程度の社会保険料を今後も削減をする、その範囲内で子供、子育て予算の財源とそれから支援金を捻出するということでよろしいでしょうか。多分、これも事実の確認です。
加藤 加速化プランにつきましては、若い世代の所得を増やす、その理念との調和を図るべく、歳出改革をまずは徹底をして、財源を確保することを原則としております。
医療保険や介護保険は保険料と公費を財源として運営されていることから、医療、介護の歳出改革によっては、公費を節減する効果だけでなく、御指摘のとおり、社会保険負担を軽減する効果も生じます。
公費節減効果におきましては、二〇一三年度から二〇二二年度にかけての歳出改革により生じた公費によって、子供分野において九年間で一・六兆円の予算確保がなされています。(発言する者あり)
小野寺 ちょっと、加藤大臣、一度戻っていただいて、もう一度、井坂信彦君、質問をしてください。
井坂 今後もこれまでと同様のペースで社会保障費の歳出改革を進め、年平均一千八百億円の公費とそれから同程度の社会保険料を削減をする、その範囲内で子供、子育て予算の財源とそれから支援金を捻出するということでよろしいですか。もう政府のポンチ絵どおりの確認です。(発言する者あり)
小野寺 御静粛にお願いいたします。
加藤 はい、そのとおりです。
井坂 ありがとうございます。端的にお答えいただきまして、ありがとうございます。
これまで議論してきた内容を簡単な図にまとめました。
パネル、資料の三番を御覧ください。
まず、上の段は支援金のないとき、つまりこれまでの状況であります。上段の左の図、厚生労働大臣に確認をしたとおり、これまでも社会保障費の歳出削減は行われており、赤い公費と青い社会保険料の両方を節約してきました。上の右の図、その浮いた公費を、これまで赤い公費の分に上乗せして、子供、子育て関連予算に回してきたわけであります。
次に、下の段は支援金制度のあるとき、つまり今後の状況です。下の左で、先ほどこども政策担当大臣に確認したとおり、今後もこれまでと同様のペースで社会保障費の歳出削減は行われますと。下の右で、結局、唯一変わるのは浮いた公費だけでなくて、浮いた社会保険料も今後は支援金として少子化対策に使いましょうということであります。
あと、この右下の図の左側で、プラス、既定予算の使い換えということで更に追加をするということで、これは先ほどの一番の資料に書いてあるとおりであります。
こども政策担当大臣にこの図で伺いますが、これまでと今後を比べると、要は、歳出削減の部分というのは、実はこれまでも今後も全く変わっていないんですね。唯一変わるのは、右下、右の上下を比べると、社会保険料に支援金が上乗せを今後はされますよというだけで、もうまさに絵に描いたような負担増なのではないでしょうか。大臣に伺います。
加藤 これまでは歳出改革による社会保険負担軽減効果に着目をしてはおりませんでしたけれども、少子化対策の必要性に鑑み、これまで歳出改革によって生み出されていた軽減分、歳出改革と賃上げによる軽減分の範囲内で子育て世帯のための新たな政策を実現するということであり、その意味において、国民に新たな負担を求めないものでございます。
支援金制度は、歳出改革と賃上げによって社会保障負担軽減効果を生じさせ、その範囲内で構築をすることで、全体として実質的な負担が生じないこととするものです。
井坂 大臣、今の資料三を見ていただきたいんですけれども、この図は私が都合よく描いた図ではなくて、まさに社会保障の専門でいらっしゃる橋本岳理事にもよくよく見ていただいて、確かにこのとおりだねと認識を共有させていただいた図なんです。
これまでと今後の図を見比べて、新たに国民の負担が減る要素がありますか。支援金の財源を生み出すために、これまでの年一千八百億円の歳出削減に加えて、新たな歳出削減を何か追加をするんですか。
加藤 繰り返しになりますけれども、これまでは歳出改革による社会保険負担軽減効果は、実際に生み出されていたわけですが、これについて着目はしておりませんでしたが、少子化対策の必要に鑑みて、国民の皆様にこれまで拠出をいただかないという形で国民の皆様に還元されていた歳出改革と賃上げによる軽減分の範囲内で子育て世帯のための新たな政策を実現をするということであり、その意味において、国民に新たな負担は求めないものでございます。
井坂 例えば、生活実感で、あるお店がずっと割引、常に一〇%割引でお客さんに商品を提供していましたと。一〇%割引していたんですけれども、一〇%分支援金でこれから追加でいただきますと言って、そうなったら、これはもう完全な値上げだと思うんですよね。これまでずっと安かったのが、支援金分を上乗せして、更に払うお金も明確に増えますし。
私は、最初、支援金をいただくからには、追加で更に歳出削減をその分深掘りするんだと思っていたんですよ。それであれば、実質負担は生じませんという政府の説明にも一理あるなと思っていたんですが、この間議論してきたように、追加の歳出削減は一切しないんです。ここ十年やってきたことをこれからもやるだけなんです。歳出削減のペースも一緒なんです。変わるのは、支援金がただ保険料に上乗せをされるだけなんです。これはやはり実質負担増なんじゃないんですか。
こども担当大臣にお伺いいたします。
加藤 これまでも歳出改革による社会保険負担の軽減効果を生じさせることをずっと続けてきたわけでありますが、そこについてあえて着目をして説明はしておりませんでしたが、今回の少子化対策の必要性に鑑み、社会保険負担の軽減効果、この範囲内で支援金を構築するという形でもって、全体として実質的な負担が生じないこととするものでございます。
井坂 大臣、その答弁は大分問題があると思います。
じゃ、その歳出削減、これまでもずっとやってきた歳出削減に急に着目して、その分をいただいても実質負担はないんだ、そういうやり方をし始めると、実は、社会保障費全体も、もうずうっと毎年毎年、年一千八百億とは別の枠組みで年一千三百億とか年二千二百億とか削り続けているんですよ。今後、そこも、実はこれまでただ黙って安くしてきたんですけれども、これからはその分いただきます、国民の負担はありません、新たな財源です、こういうことをやるんですか、政府は。
今の御答弁はさすがにまずいと思いますから、修正してください。
加藤 繰り返しになりますけれども、歳出改革による社会保険負担軽減効果に着目をこれまではしておりませんでしたが、少子化対策の必要性に鑑み、今般、歳出改革と賃上げによる軽減分の範囲内で子育て世帯のための新たな政策を実現するということであり、その意味において、国民に新たな負担を求めないものであります。
言い換えれば、支援金につきましては、国民お一人お一人から平均すれば月に五百円弱の拠出をいただき、既定予算の最大限の活用等や歳出改革の努力による公費と併せて、子育て世帯の給付の充実に充てる仕組みでございます。現役世代のみならず、高齢者も含めた全ての世代が皆で子育て世帯を支える制度であることについて、国民の皆様に御理解をいただけるように説明を尽くしてまいります。
井坂 ちょっと、私、今日は時間があるので、これをずっと最後までやろうかなとも思いますが、実は、配付資料の四を御覧いただきますと、この実質負担ゼロという政府の説明には、もう与党内からも疑問の声が出ているんです。
保険料引上げは、単体で見た場合、負担増でしかなく、国民に分かりにくいと自民党中堅の方がおっしゃったり、財務省幹部も、いつまで相殺できるか分からないと明かしたとか、あるいは、自民党内からも、国民負担を上げずに子育て支援をやれと言われてもできるわけがないと不満がくすぶったりですとか、あるいは、公明党の政調会長も、先日、十四日の記者会見で、分かりにくい、国民理解がなかなか進まない要因の一つではないか、こういうふうに指摘をされているわけであります。
与党の皆様にも、特に社会保障にお詳しい方は、聞いていただいていたら、ちょっと苦しい答弁を超えて、さすがにこの答弁はまずいんじゃないかなと思われる方はいらっしゃるのではないかと思うんですよね。
だって、毎年減らしている歳出削減が、突然、黙って減らしていましたけれどもこれからは財源として使います、それは黙って減らしていたけれども実質負担はないんですなんて、そんなの、まず実質的にも増えますし、名目的にも増えますし、増えないという理由が全く分からないんですよ。
着目って、何か謎の答弁ですけれども、増えないという理由は何なんですか。
武見 もう先生御指摘のとおり、過去の歳出改革というのは、薬価の改定であるとか、あるいは後期高齢者に関わる負担の在り方を変えるとか、そうした様々な歳出改革努力の積み重ねで、これだけの歳出改革をしてきたわけであります。
引き続きこうした歳出改革の努力を確実に続けることをお約束をして初めて、こうした歳出改革が実現でき、そしてまたその幅も深めることができる。その中で、実際に負担をしっかりと、支援金の分に関する負担を軽減させるところにちゃんときちんと充てますよというのが私どもの考え方で、是非そこは皆様方に御理解いただければと思います。
井坂 本当に、厚生労働大臣に逆にそんなことを答弁していただくのは何か申し訳ない感じがするんですが。
実質ただですよと言われてお店に入ったら、しっかりお金を取られたぼったくりバーみたいな、私はぼったくり保険料になると思いますよ。これは説明ぶりは変える必要があると思います。全く実質負担がないというような説明ぶりは事実ではありませんので、説明ぶりを変えていただく必要があると思います。このままこの説明を続けたら、お得な、有利な取引だと消費者に誤解させる、消費者に、見つかったら取り締まられるような違法な説明をしていると私は思います。
少子化対策の支援金は、実質ゼロどころか、実質子育て増税なのではありませんか。説明ぶりについてお伺いします。
加藤 まず、国会等において様々な御意見があることは承知をしておりますが、その上で、歳出改革と賃上げによって社会保障負担率の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金を構築する、これにより全体として実質的な負担は生じないと申し上げているところであり、歳出改革と賃上げにしっかりと取り組むとともに、引き続き丁寧な説明を尽くしてまいります。
井坂 もう予算委員長まで苦笑いしているじゃないですか。問題ある答弁だと思いますよ。もし説明ぶりを変えないということであれば、これは引き続き厳しくさせていただきたいと思います。