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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#10 支援金は保険料として整理される

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

「令和三年度の医療保険料額の四から五%」と説明される支援金。
 これは税なのか、保険料なのか。


日付:2024年2月6日
会議名:衆議院 予算委員会
発言者:立憲民主党 早稲田ゆき
内閣総理大臣 岸田文雄

早稲田 実質賃金が下がっている中で、これはまさに、子育て支援金、それでたくさん給付になるからというお話を今大臣されましたけれども、そうではなくて、この部分について、増税隠しですよ。実質の国民負担ゼロどころか、事実上の子育て増税です。これはしっかりと言わせていただきます。
 そして、その上で、給付がこのくらい増えるというお話をされるのなら、それは子育て増税の中でこういう財源をいただいてやるんだということをきちんと説明されればいいと思います。それなのに、まやかしでやっているから、こうやって分かりにくい。
 そして、じゃ、伺いますが、支援金の一兆円、医療保険に上乗せするということですが、保険料ですか、税ですか。
岸田 まず、支援金制度については、先ほど来申し上げておりますように、歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で構築していくということであります。これは実質的な負担は生じないということですから、事実上の子育て増税だという御指摘は当たらないと申し上げます。
 その上で、御質問ですが、社会保険制度は社会連帯の理念を基盤として共に支え合う仕組みです。支援金は医療保険料と併せて拠出いただくものでありますが、これも、こうした連帯によって、将来を担う子供たちや子育て世帯を全世代、全経済主体で支える仕組みとして検討中であり、支援金は保険料として整理されるものであると考えています。

早稲田 これも、はっきりと今、保険料としてとおっしゃいました。
 今まで、これは税でもない、保険料でもない新たな制度です、でも徴収の仕組みだけ医療保険でやりますということが、ずっと当局がおっしゃっていたことですけれども、保険料なんですね。保険料なのに、給付と負担の関係がこれでは明らかになっていないということです。
 全世代と言えば、全部、全世代ですから、それはいい言葉ですけれども、これは結局は第二、第三の税なんですよ。事実上、増税なんです。それについて保険料でやるということは、本当は保険料というのは、もう今更ですけれども、例えばけがをした、病気をした、だからその間働けないところの生活を支えるということを、みんなで、地域で、あるいは組合で支えていくという制度です。それなのに、この子育て支援金を乗せる、そしてそれも保険料だとおっしゃるなら、これは本当に、そもそもの社会保険というその制度が、非常に持続可能性が危うくなります。
 今までもいろいろな部分で、後期高齢者、それから介護などについても、このものに入れてきた。そして、その中で、社会保険料というのが第二の財布、第二の税と言われてきたわけです。それに更に上乗せをするということ。それも、今はっきりと保険料だということが分かりましたので、ここで確認をさせていただきましたが、私は、制度の趣旨からいっておかしいと思っています。


参考資料等

椋野美智子、田中耕太郎『はじめての社会保障 福祉を学ぶ人へ 第13版』有斐閣アルマ 2016年

一般には「保険とは、同様な危険にさらされた多数の経済主体による、偶然な、しかし評価可能な金銭的入用の相互的充足である」とされる。

保険とは、共通の危険にさらされた多くの人が集まって、お互いに保険料という形で少しずつ費用を払い合うことによって、事故時の損失の危険を保険者に移転させ、多くの人の間に危険を分散し、プール(共有化)する仕組みであるともいえる。

ここで大切なのは、保険とは、一定の確率で発生することが予測されているが、いつ、誰に発生するかは誰にもわからない危険(保険事故とか、リスクということも多い)に備える仕組みだということ。危険に備えるには、何よりも、危険の発生を予防すること。これがもちろん基本。しかし、どんなに注意しても手段を講じても、発生を完全には防げない場合も多い。保険は、そんな場合に、事後的に、危険が現実に発生した場合に、その人の経済的な必要に応える仕組み。
 だから、別の言い方をすると、対象となる危険は、各人が制御できないものであることが必要。たとえば、死亡は保険の対象になるが、離婚や子どもの出生は、当人の意思で左右できるので、保険事故にはなじまない。だから、生計維持者の死亡に対しては遺族年金が対応するが、離婚などによる生別ひとり親世帯に対しては児童扶養手当制度、子どもの出生・育児については児童手当制度というように、社会保険を補完する一連の社会手当がつくられたことは、第2章で見たとおり。

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井川夕慈
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