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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#58 歳出改革が進まないという事態を想定しているものではございません

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 歳出改革は、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」に沿って進めるが、具体的に何を行うかは、「毎年度の予算編成過程において検討」する、と言う。
 歳出改革が見込み通りに進まない場合はどうするのか。


日付:2024年5月28日
会議名:参議院 内閣委員会、厚生労働委員会連合審査会
発言者:日本共産党 倉林明子
こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室長 熊木正人
厚生労働省老健局長 間隆一郎
厚生労働大臣 武見敬三

倉林 そこで、社会保障の歳出改革で財源確保だとされているわけで、その合計で見ると二・一兆円になるんですね。これ、歳出改革が工程どおりに進まないという場合は、十分に想定されるわけですが、支援金の不足が生じることになります。その場合どういう選択肢があるか。一つに、子育て支援策を縮小するか、二つ、支援金を増やすか、三つ、特例債の発行を継続するか、これいずれかだと思うんですけれども、明確な答弁を求めたい。
熊木 歳出改革で二・一兆円というのは、歳出改革の下での公費節減の下で増やしていく一・一兆円と支援金の一兆円の合計というふうに承りました。
 現在御審議いただいている法案におきましては、それを含めまして総額三・六兆円程度の加速化プラン、その財源につきましては法の附則に以下のように明記をしてございます。歳出改革等による公費節減、既定予算の最大限の活用等、そして支援金、これで賄うということ、それから、歳出改革の範囲内で支援金を構築し、その金額は令和十年度において一兆円程度であること、これら法案の附則第四十七条第二項でございます。
 歳出改革の具体的な内容につきましては、こうした法案の、法律の規定にのっとりまして、昨年末に閣議決定された改革工程に基づきまして、毎年度の予算編成過程において検討されていくものでございますが、歳出改革につきましては、今申し上げましたように、法律、法案、そして閣議決定した、そういう意味でお約束しているものでございますので、私どもといたしまして、この歳出改革が進まないという事態を想定しているものではございません。
 法案が成立すれば、法律の規定にのっとり、歳出改革を着実にかつ丁寧に実行してまいりたいというふうに思います。

倉林 何ぼ閣議決定したからいうて、できていないこと山ほどありますよ。その上で、増税しないというふうに明言しているので、選択肢としてはいずれかしかないということになると思うんですね。
 私は、この歳出改革ありきということで、二〇二八年という期限を区切って、社会保障費削減の圧力ということに、圧力掛けることになりかねないというふうに思っているんです。
 そこで、介護保険制度改革で二〇二七年までに結果を出すものとしてたくさん項目挙がっているんだけれども、一つ、ケアマネジメントの利用者負担、二つ、二割負担の範囲の対象拡大、そして三つ目に要介護一、二の生活援助サービスの総合事業への移行と、これ盛り込まれております。
 二〇二八年までに介護保険制度改革全体でどれだけの財源を確保しようとしているのか、参考人、お願いします。
 お答えいたします。
 介護保険制度に関しまして、ただいま委員御指摘になられたような二〇二八年に向けて行う歳出改革の具体的内容については、昨年末に閣議決定した改革工程において今後の取組としてお示しをしております。その詳細については二八年度までの各年度の予算編成過程において検討、決定していくこととしており、実施する施策の影響額を現時点でお答えすることは難しいということでございます。
 ただ、いずれにしましても、これらの取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることのないよう、見直しによって生じる影響を考慮しながら丁寧に検討していかねばならないというふうに考えているところでございます。

倉林 積み上げた上でその二・一兆円が出てくる話なんですよ。だから、きちっと、そういう意味で、どこをどう削減して積み上げての二・一兆円かという説明には本当なっていないんですよ。
 今紹介した部分は、二〇二七年までに結果を出すということは、やるということなんですね。このメニューというのは介護崩壊につながるようなメニューなんですね。そして、何度も期限を区切って実施、検討が求められてきたものの、ずっと先送りしてきたメニューでもあるんですよ。これ、強行するなどということは到底国民の理解得られないと申し上げておきたい。
 それでは、医療はどうかということですけれども、メニュー見ますと、三割負担の範囲の拡大、高額療養費制度の見直し、病床削減の推進にとどまらず、国保の、国民健康保険の都道府県保険料水準の統一、こういうメニュー並んでいまして、更なる負担増そして給付削減、めじろ押しになっているわけです。
 二〇二八年までに歳出削減進めるということとですよ、約九百万人、労働者の一四%、医療・福祉従事者の賃上げ、これもやるとおっしゃっているんだけれども、どう両立させようとお考えか、武見大臣、お願いします。
武見 この令和五年度それから六年度予算の編成については、令和六年度診療報酬、薬価改定において、現場で働く幅広い方々の賃上げなどのために必要な水準の改定率を確保しつつ、市場実勢価格などを踏まえた薬価改定を行うなどの取組を行うことによりまして、子供関連予算について公費で〇・三七兆円確保するとともに、こうした歳出改革と賃上げにより社会保険負担軽減効果を〇・三三兆円確保したところであります。これを、委員御指摘、二〇二八年度まで継続をいたしますと、公費で約一・一兆円の確保、保険料負担で約一・〇兆円の軽減となります。
 今後とも、この賃上げに必要性等を踏まえた必要な施策を講じつつ、昨年末に閣議決定した改革工程にのっとって、二〇二八年度までに公費節減効果と実質的な社会保険負担軽減効果を積み上げてまいりたいと思います。
倉林 今般の報酬改定で賃上げを織り込んだと、見込んだというものの、全体での改定率というのは本当に微々たるもので、物価高騰に対抗できないという悲鳴が上がっております。今年度でも実質的な賃上げというのは確保できておりません。総理の今年度の賃上げの約束さえも果たされていないわけですよ。現場の労働者に更なる処遇の低下、これをもたらすことにつながりかねないと、これも指摘をしておきます。


参考資料等

子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案

(子ども・子育て支援納付金の導入に当たっての経過措置及び留意事項)
第四十七条
2 政府は、(…)加速化プラン実施施策(…)を実施するために必要となる費用については、全世代型社会保障制度改革等を通じた国及び地方公共団体の歳出の抑制その他歳出の見直し、(…)消費税の収入、(…)拠出金の収入、加速化プラン実施施策に係る社会保険料の収入並びに(…)支援納付金対象費用(…)に係る財源により賄うものとし、次の各号に掲げる各年度における子ども・子育て支援納付金(当該年度の支援納付金公費負担額に相当する部分を除いた部分に限る。)の総額は、それぞれ当該各号に掲げる額を目安とするものとする。
一 令和八年度 おおむね六千億円
二 令和九年度 おおむね八千億円
三 令和十年度 おおむね一兆円

全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)の概要

2024年1月26日 第32回社会保障審議会 資料1 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」、「こども未来戦略」について より

「医療・介護制度等の改革」の「2028年度までに検討する取組」

・医療DXによる効率化・質の向上
・生成AI等を用いた医療データの利活用の促進
・医療機関、介護施設等の経営情報の更なる見える化
医療提供体制改革の推進(地域医療構想、かかりつけ医機能が発揮される制度整備)
・介護の生産性・質の向上
・イノベーションの推進、安定供給の確保と薬剤保険給付の在り方の見直し
・国保の普通調整交付金の医療費勘案等
国保の都道府県保険料率水準統一の更なる推進
・介護保険制度改革(ケアマネジメントに関する給付の在り方、軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
・サービス付き高齢者向け住宅等における介護サービス提供の適正化
・福祉用具貸与のサービスの向上
・生活保護の医療扶助の適正化等
・障害福祉サービスの地域差の是正(能力に応じた全世代の支え合い)
・介護保険制度改革(利用者負担(2割負担)の範囲、多床室の室料負担)
・医療・介護保険における金融所得の勘案や金融資産等の取扱い
医療・介護の3割負担(「現役並み所得」)の適切な判断基準設定等
・障害福祉サービスの公平で効率的な制度の実現(高齢者の活躍促進や健康寿命の延伸等)
・高齢者の活躍促進
・疾病予防等の取組の推進や健康づくり等
・経済情勢に対応した患者負担等の見直し(高額療養費自己負担限度額の見直し/入院時の食費の基準の見直し) 等

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井川夕慈
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