子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#66 雇用者報酬の増加率が上昇することを通じて生じる社会保険負担軽減効果も踏まえまして、控除することとした
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
支援金制度は、「歳出改革と賃上げによって社会保障負担額の軽減効果を生じさせ、その範囲内で構築する」と政府は説明する。
そのため「社会保障負担額の軽減効果」を算出する必要があるが、2023(令和5)年度および2024(令和6)年度の「社会保障負担額の軽減効果」を算出するにあたって、「社会保障負担額」の「増加」に含めなかった項目があると言う。
それは何か。
また、それを含めないことは妥当なのか。
河西 令和十年度までの六年間で社会保険負担の歳出改革、これは便宜上ちょっとプラマイで言わせていただきますけれども、保険料負担の歳出改革をマイナス一兆円分行った上で、新たに、今申し上げた子ども・子育て支援金率を保険料率に加えて、加速化プランに必要なプラス一兆円を徴収をすると。つまり、マクロではプラマイ・ゼロですので実質負担なし、社会保障の国民負担率は上昇しない、こういう御説明を政府からいただいてまいりました。
その上で、その理由に、今申し上げた歳出改革に加えて、賃上げというファクターが昨年の下半期ぐらいから加わってまいりまして、ここが非常に我々も説明に苦慮しておりまして、ちょっと分かりにくいというお声をいただいております。
まず、確認でありますけれども、政府は、歳出改革一兆円を行う六年間のうち最初の二年間、つまり令和五年度及び六年度は薬価改定を中心に〇・三三兆円分の歳出改革で社会保険負担を軽減をしている、こういう御説明であります。一方で、いただいた御説明では、ここに、この〇・三三兆円に算入されていない追加的な社会保険負担があるというふうに伺っております。
この項目と額、また算入しなかった理由、これも含めて厚労省の方に御答弁をいただきたいと思っております。
宮崎 お答え申し上げます。
支援金制度につきましては、歳出改革と賃上げにより実質的な社会保険負担軽減効果を生じさせまして、その範囲内で構築していくことにより実質的に負担が生じないこととされておりますが、今御指摘のございました点についてお答えしますと、令和五年度、六年度の予算編成では、薬価等改定による医療費縮減等の歳出改革により保険料負担が三千三百億円軽減されたわけでございます。
その際に、御指摘のございました追加的な社会保険から控除するもの、これについても併せて公表しておりますが、その内容は、一つは、政府が総力を挙げて行う賃上げの取組の一環として必要となる報酬改定での医療、介護における現場従事者の賃上げ措置として二千百億円、また、前期財政調整の報酬調整の導入、介護一号保険料見直しといった、全世代型社会保障改革の観点から行う、負担能力に応じた負担を求める等のための措置として千三百億円、計三千四百億円となってございます。
これらは、こうした賃上げの取組等によりまして雇用者報酬の増加率が上昇することを通じて生じる社会保険負担軽減効果も踏まえまして、控除することとしたものでございます。
今後も歳出改革の取組を継続して、令和十年度までに約一兆円の保険料負担の軽減効果をしっかりと積み上げてまいりたいと考えております。
河西 ありがとうございます。
医療・介護従事者の賃上げは非常に大事であります。これに二千百億円、また、全世代型社会保障の構築を目指す制度改革、これに対して千三百億円、計〇・三四兆円、これは追加的な社会保険負担からは、考え方としては控除したということであります。これは、賃上げ、そして少子高齢化を見据えた持続可能な制度改革ということで、そういった考えから控除をしているということであります。
ただ、国民にとっては当然社会保険負担であることには変わりはないわけでありますが、そこでどう考えるかということで、社会保険料で見た国民負担率というのは、分子は社会保険負担で考えられ、そして分母は雇用者報酬、またその伸びで考えれば、相殺をできる、あるいは許容できると。ここが多分余り伝わっていないというふうに私は思っているわけであります。
この論点について伺いますけれども、政府として、直近の雇用者報酬の統計を踏まえると、令和五年度及び六年度の社会保険負担について、名目でどこまで相殺、要するに許容ができるのか、国民負担率を維持できると試算をしているのか、これは定量的にお答えいただきたいと思います。
また、あわせて、令和七年度から十年度までの四年間においても、歳出改革と雇用者報酬、いわゆる賃上げ、これを軸に国民負担率を据え置く、こういった方針は変わらない、こういう見解でよろしいか、御答弁をいただきたいと思っております。
宮崎 お答え申し上げます。
御指摘ございましたように、支援金制度の構築に当たって重要なのは社会保障負担率であると考えておりまして、この点、歳出改革と賃上げによりまして、この負担率を増加させないことを目指しております。社会保障負担率の分母は国民の所得でございまして、賃上げによって雇用者報酬の伸びが高まれば社会保障負担率の軽減につながるということで、先ほどのような控除に関しての御説明になったわけでございます。
先ほど申し上げた、控除した医療従事者の賃上げ加算等の制度改革分については、この令和五年、六年度における賃上げ、これは政府経済見通しによる雇用者報酬の伸びを前提として、一定の仮定を置いて試算をすると約六千億というふうに見込んでおりますけれども、これによりまして、こちらの方が十分、三千四百億円を大きく上回るという状況だというふうに想定をしております。試算をしております。
その上で、令和七年度以降につきましては、これも繰り返し国会等の場で政府側から答弁させていただいておりますように、徹底した歳出改革を基本といたしまして、実質的に負担が生じないという状況を実現できるようにしっかりと取り組んでまいることで、歳出改革と賃上げによる社会保障負担率を増加させないということの実現を図ってまいりたいと考えております。
河西 ありがとうございます。
今、六千億という定量的な御答弁がありました。いわゆる令和五年度及び六年度は、見込みでありますけれども、雇用者報酬の伸びが六千億で見込めるので、先ほどの控除、最初は控除ということで、途中から許容するんだというお考えでありますけれども、この三千四百億円は許容ができるということで、ですので、これはまさに春闘、いよいよ本格化しますけれども、持続的な賃上げ、また、これはあくまでマクロ的な、国民負担率というのはマクロでしか語れない話でありますので、やはり、我が党としても重点的に取り組んでいる中小企業の賃上げ、これは非常に大事になってくる。これは引き続き自覚をしながら取り組んでいきたいということを申し添えさせていただきたいというふうに思っております。
参考資料等
「こども未来戦略」における実質的な社会保険負担軽減効果