子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#14 給付の在り方は時代に即して変わってきている
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
支援金は保険料だが、支援金を充てて行う事業は保険給付ではない、と政府は説明する。
保険給付が何もないのに、そのための費用を保険料と称してよいのだろうか。
足立 武見大臣、もう紙を見なくていいので。普通に考えたら、なぜ今回こんなに問題になっているかといったら、社会保険料を少子化対策に使うからです。でも、大臣、まず武見大臣、社会保険料というのは社会保険給付に使う、これは原則ですよね。原則だということだけ。
武見 社会保険の保険料に基づいて、さらに、社会保険の仕組みの中で行われる給付、これはもう委員御承知のとおり、医療保険だとか介護保険だとか、それから後期高齢者医療制度、それから出産一時支援金、給付金とか、ありますよね。こういう形で、高齢化対策、さらには少子化対策と組み合わせて、実際に、この方式の中で、国民の皆様方に、全世代型の社会保障という観点で、応能負担という考え方で給付と負担というものを組み立てて実施する、しかもその基本理念に社会の連帯がある、こういうふうに御理解をいただけるとありがたいと思います。
足立 急に、一応通告の、大きな通告の枠内なので、立憲民主党のようにクイズみたいなことはいたしませんが、でも、これは大原則です、社会保険料は社会保険給付に使う。これは、そうですねと言えないですか。
武見 今申し上げたようなそうした枠組みの中で、社会保険の保険料に基づいてこうした支援金というものを行うという考え方は、全世代型社会保障の考え方、さらには社会保険という方式の中で位置づけられている社会の連帯という理念の中で私は理解されるものと考えます。
足立 いやいや、支援金の説明をしてくださいと言っているのではなくて、それは加藤大臣の仕事だから。武見大臣には、社会保険の原則について問うています。
社会保険制度において、社会保険料は社会保険給付に使う。それはやはり厚生労働大臣として、それは原則はそうだと。いや、例外はあっていいですよ。例外はいろいろある、それはいろいろな理屈で、ロジックで、ある。でも、柱の部分は、社会保険料は社会保険給付に使う。それはやはり、大臣、原則についてここで御答弁いただけないと、論戦にならない。さっき私は、戦況は不利だ、負けつつあると言っておりますけれども、大逆転しますよ、これ。ちゃんと、社会保険の原則について聞いているんです、社会保険料は社会保険給付に使う。
武見 何度もさっきから申し上げているとおりでありますけれども、社会保険の保険料と給付との関係、これはまさに負担と給付を考える上での考え方の中で整理されるべきものということについては、私も十分に理解しております。
しかし、給付の内容というものについては、私が先ほどから何度も指摘されているように、高齢化対策、さらには少子化対策と、様々に、全世代型の社会保障の考え方の中で、その給付の在り方も時代に即して変わってきているということについての御理解を是非していただければと思います。
足立 いや、もう全然、申し訳ないですけれども、答弁になっていないですね。五分上げるから、ちょっと議論して。五分上げるから。いやいや、それはおかしいでしょう。(武見国務大臣「あっちから答えさせる」と呼ぶ)誰でもいいですよ。
鹿沼 お答えいたします。
社会保険につきましては、これまでは、基本的には社会保障給付に充てられることがほとんどだったというふうに思っております。
ただ、社会保険自体については、民間保険と比べまして、強制加入にし、それはまさに社会連帯で支えるということでございますので、そういったことになじむものが出てきたときに、今後それは一切社会保障給付以外に充てないということではないのではないかというふうに思っているところであります。
ただ、現状は、いずれにしても、社会保障給付が中心だと思っております。
足立 鹿沼さんがおっしゃったとおりですよ。当たり前ですよね。社会保険料は社会保険給付のために集めているんですよ。
かつ、社会保険とは何か。これは教科書に書いてあるじゃないですか、給付と負担、受益と負担の関係が明確なんだと。だから、ああいう負担構造が認められているんですよ、逆進性の高い。なぜ逆進性の高い負担構造が認められているかといえば、それは受益と負担が明確だから。だから、今、鹿沼さんがおっしゃった、ほとんどは、それは例外はありますよ、でも、ほとんどは社会保険料は社会保険給付に使われているんです。だから、それを私は原則と言った。
大臣、そこは認めてください。認めていただいた上で論戦が始まるんだから。それはそうだと。
武見 ただいま実務の方からも答えたとおりであります。
その上で、是非委員に御理解をいただきたいことは、社会保障全体の中で考えるという、各世代全体の中で考えること、それから、給付の対象というのが、そうした、医療保険から始まって、高齢化対策、さらには少子化対策と、時代に即して給付の内容についても整備が進んでいくということについての御理解は是非いただきたいと思います。
足立 いや、だから、今回、社会保険制度の原則の例外をつくっているんだということが確認できればいいんだけれども、大臣の御答弁を聞いていると、何か、社会保険というものの在り方が変わってきているんだと聞こえるんです。
いやいや、社会保険制度の原則は変わらないでしょう。でも、例外的に、今回、いろいろ理由があって、例えば、さっき申し上げた、総理がしようもないことを言うからですよ、実質的な追加負担を生じさせないとか、何かいろいろ。そういうしようもないことを言うから。大体、トップがしようもないことを言うと、チームは無理をするんですよ。その無理をした結果、原則がゆがめられる。
だから、私は、今日は、この支援金というのは例外なんだと、社会保険の在り方からすれば、原則にのっとったものではなくて例外なんだということをやはり認めてほしいんですよ。そこからその在り方について議論したらいいんだけれども、いやいや、そもそも社会保険というのは連帯だから、足立さんが言っている、教科書に書いてあるやつは古いんだと。
古いんですか、大臣。
加藤 現行の医療保険制度におきまして、保険料が充てられている費用として、子育てを終えた方々は支給の対象とならない出産育児一時金や保険給付に該当しない保健事業、これがあるほか、後期高齢者支援金や出産育児支援金はそれぞれ、それによる直接的な給付のない現役世代、後期高齢者の保険料を既に充てておりますし、介護納付金は、社会連帯等の観点から、医療保険とは異なる制度への拠出に充てているところでありまして、給付と負担の関係も、これまでも様々であると考えております。
したがいまして、保険料の反対給付性につきましては、健康保険法上の保険給付や各事業等と個別の一対一対応で判断されるものではなく、全体として判断をされるものであります。
その上で、支援金につきましては、児童手当など対象者の広い給付に充てられることに加え、少子化対策によって医療保険制度の持続可能性を高めることにより被保険者に受益があるものでございます。
支援金が医療保険各法上の保険料の中でも大きな部分を占めるものではないことも併せて考えますれば、保険料全体としての反対給付性が失われるものではないと考えております。
足立 加藤大臣はこども担当だけれども、今までの厚生行政、今までの社会保険制度改革は、基本的に、先ほど申し上げた、受益と負担、給付と負担の関係の明確性、この社会保険としての原則を守るために税を入れてきたんです。今までは、社会保険料は社会保険給付に使う、でも、少子高齢化の中でそれがきしんできたので、税を入れてきたんです。それが今までの流れじゃないですか。
今回の法律は、そうじゃなくて、その宝の医療保険制度を守るために、大変大切な医療保険の社会保険料、医療保険料を、医療保険と違うところに使うんです。だから、逆噴射しているんですよ。
今までは、保険制度を維持するために税を投入してきた。今度は、今まで税でやってきたところに保険料を使う。逆噴射していませんか、大臣。端的に。
武見 端的に言えば、先ほど申し上げたとおりの、御納得はされておられないようでありますけれども、私の今までの答弁と同内容になります。
参考資料等
医療保険制度の財政状況(2020(令和2)年度決算)
出産育児一時金
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001000562.pdf
保健事業
https://www.mhlw.go.jp/content/001092486.pdf
後期高齢者支援金
出産育児支援金
介護納付金
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gyoukaku/H27_review/H28_fall_open_review/siryo/2.pdf