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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#86 支援金は、子供、子育て世帯にとって大きな給付の充実につながるものだから、少子化対策に反するとの指摘は当たらない

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

「医療保険料の四から五%」という負担構造は、少子化対策の財源としてふさわしいのか。医療保険料に乗せるよりもふさわしい財源が他にあるのではないか。


日付:2024年4月2日
会議名:衆議院 本会議
発言者:日本維新の会 一谷勇一郎
内閣総理大臣 岸田文雄

一谷 大事なのは、少子化対策の財源をどう支えるべきかという骨太な議論であります。
 総理に伺います。
 なぜ恒久財源の確保を急ぐのですか。骨太な政策を実行していくために財源が必要なことは当然ですが、少子化対策の規模として三・六兆円が適正なのか、そうした歳出よりも社会保険料を低減させる方が有効ではないのか。はたまた、歳出の規模をもっと拡大すべきとの議論もあるでしょう。国民に負担を求める新制度として、子ども・子育て支援金制度の考え方は拙速に過ぎると考えますが、総理の見解を求めます。
 私たち日本維新の会が結党された二〇一二年、自民党、公明党、そして民主党が、いわゆる三党合意、社会保障と税の一体改革に関する合意をし、子ども・子育て関連三法が制定されました。当時の決定の最大のポイントは、子供、子育て支援策の拡充を図るための財源は消費税に求めるということでした。自民党と公明党は政策転換をしたのですか。総理に見解を求めます。
 他方、今回創設される子ども・子育て支援金は社会保険料です。言うまでもなく、社会保険料は所得をベースとしているため、現役世代に重くのしかかります。さらに、年収約一千二百万を境に負担は頭打ちとなり、中間層の負担が最も重くなる負担構造を有しています。受益と負担と対応関係が不明瞭な少子化対策にまで保険料を適用することは、保険料の目的外使用であり、かつ少子化対策にも反すると考えますが、いかがでしょうか。総理の答弁を求めます。
 政府は、全世代型社会保障を目指す改革の道筋、改革工程において、能力に応じた負担構造、いわゆる応能負担について言及し、預貯金口座へのマイナンバー付番の状況を検討すると明記しています。受益と負担と対応関係が不明確な少子化対策にまで社会保険料を活用するということであれば、少なくとも応能負担の仕組みを構築してからにすべきではないか、総理の見解を求めます。
 さらに、社会保険料は労使折半ですから、受益と負担と対応関係が不明瞭な少子化対策にまで社会保険料を活用することは、その負担が現役世代に偏るだけでなく、企業にも過大な負担を求めることになり、非正規雇用へのシフトといった形で企業行動に悪影響を与えかねません。賃金と物価の好循環を実現できるかどうかの正念場にあって、やはり子ども・子育て支援金の創設は間違いであると断じざるを得ません。総理の見解を求めます。
 以上のように、社会保険料を少子化対策のために拠出する新制度、子ども・子育て支援金制度には深刻な問題が内包されています。一、三党合意から大きな変節であること、二、基本的な保険原理に反すること、三、応能負担を支えるためのマイナンバーに係る制度のインフラが完成していないこと、四、企業行動に与える悪影響が想定される等、枚挙にいとまがありません。なぜ、こんな制度案が閣議決定され、国会に上程されてしまったのか。
 私たちは、自公政権が税制に関する議論を封印してしまったからであると考えます。岸田総理は、昨年十一月二十四日の衆院予算委員会で、我が党の質問に対し、社会保障と税の一体改革は終わったものではなく、持続可能な社会保障制度を確立するための継続的な取組であると答弁されましたが、翌月に閣議決定された改革工程に、税制への言及はありませんでした。結局、自公民の三党合意とは、社会保障と一体改革とは名ばかりの、単なる消費税の苦みを包んで国民をだますためのオブラートであったと断じざるを得ないのです。(…)
岸田 (…)子ども・子育て支援金制度の考え方についてお尋ねがありました。
 危機的な状況にある少子化に対し、加速化プランを速やかに実行することこそが必要であり、その際、制度が安定的に維持されることが、これから結婚、出産を考える若い世代が将来のライフプランを考える上で重要であると考えております。
 その上で、新たな政策を掲げ、そのための歳出を増やすには、増税か国債発行ではなく、既存の歳出の改革で恒久財源を確保することが重要であると考えています。既存の歳出を削る一方で、その削減した歳出の範囲内で新たな政策の支出に回せば、その意味において、国民に新たな負担を求めないものとなると考えます。
 ただし、抽象論に陥らないように、支援金制度については、社会保障負担率という具体的なメルクマールを設け、支援金の導入によって社会保障負担率が上がらないということを、国民に新たな負担を求めないあかしとしてお約束をしています。
 したがって、支援金が国民に負担を求めるものであり、拙速であるという指摘は当たらないと考えています。
 子供、子育て予算の財源についてお尋ねがありました。
 今申し上げたとおり、新たな政策を掲げ、そのために歳出を増やすには、増税か国債発行ではなく、既存の歳出の改革が重要であると考えたところです。
 かつての三党合意から転換したとの御指摘ですが、その時々の社会経済状況を踏まえ、必要な施策と財源が適切に選択されるべきものであると考えています。
 子ども・子育て支援金を社会保険料と位置づけることについてお尋ねがありました。
 少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となるものであり、支援金が保険料の目的外使用との指摘は当たりません。
 支援金の拠出に当たっては、医療保険料の賦課方法に準じたものとしており、一定の上限を設定することには合理性があると考えておりますが、基本的には拠出能力に応じた制度設計となっています。その上で、支援金は、抜本的に拡充する児童手当等の給付に充てられ、子供、子育て世帯にとって大きな給付の充実につながるものであることから、少子化対策に反するとの指摘は当たらないと考えています。
 子ども・子育て支援金制度と社会保障の改革工程との関係についてお尋ねがありました。
 先ほどお答えしたとおり、少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となるものであり、支援金について、受益と拠出との対応関係が不明確という御指摘は当たりません。
 また、御指摘の社会保険における応能負担の仕組みについては、昨年末に閣議決定した改革工程においては、社会保険料における金融資産等の取扱いを含め、幅広いメニューが列挙されておりますが、これらは、一義的には、社会保障の持続可能性を高め、全世代型社会保障を構築する観点から盛り込まれたものであり、議論を続けていかなければなりません。これらのメニューの中から、実際の取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることがないよう、見直しに当たって生じる影響を考慮しながら、丁寧に検討してまいります。
 子ども・子育て支援金制度の企業への影響についてお尋ねがありました。
 支援金制度は、歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で構築することを基本としており、このために実質的な負担が生じない点は、社会保険料を事業主が拠出する分についても同様であります。
 支援金の拠出による企業への影響によって、賃上げを抑制したり、非正規雇用を増加させるとは考えておりません。


参考資料等

三党合意による消費税法の改正(2012年)

消費税法の一部を次のように改正する。
第一条の見出しを「(趣旨等)」に改め、同条に次の一項を加える。
2 消費税の収入については、地方交付税法(…)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。

全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)

(2)能力に応じて、全世代で支え合う
「全世代型社会保障」は、年齢に関わりなく、全ての国民が、その能力に応じて負担し、支え合うことによって、それぞれの人生のステージに応じて、必要な保障がバランスよく提供されることを目指すものであり、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心となっているこれまでの社会保障の構造を見直していく必要がある。
(…)
◆ 医療・介護保険における金融資産等の取扱い
・預貯金口座へのマイナンバー付番の状況等を踏まえつつ、資産運用立国に向けた取組や国民の安定的な金融資産形成の促進などにも配慮しながら、医療・介護保険における負担への金融資産等の保有状況の反映の在り方について検討を行う。介護保険の補足給付の仕組みがあるところ、医療保険では、保険給付と補足給付の仕組みの差異や、加入者数が多く保険者等の事務負担をどう考えるかといった指摘があることも踏まえ、検討を行う。

こども未来戦略方針

○ 以上のとおり、経済を成長させ、国民の所得が向上することで、経済基盤及び財源基盤を確固たるものとするとともに、歳出改革等による公費と社会保険負担軽減等の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進める。少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない。

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井川夕慈
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