子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#79 少子化を加速させることは疑いようのないことです
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
支援金制度を創設する法案は、参議院で起立過半数により成立した。
野党の反対理由はどのようなものだったか。
片山 日本維新の会・教育無償化を実現する会の片山大介です。
私は、会派を代表し、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論します。
この法案の議論をしているさなかの先月下旬、人口動態統計の速報が公表され、今年一月から三月に生まれた子供の数、出生数は十七万人余りだったことが分かりました。過去最も少なかった去年の同じ時期と比べても六・四%の減で、このまま推移すると、年間の出生数は去年の七十五万人を大きく下回り、初めて七十万人を割り込むという予測すら出ています。このところの少子化の加速は余りにも著しく、そして、一刻の猶予もありません。
こうした中、今回の法案は、異次元の少子化対策の名の下、加速化プランとともに三・六兆円もの財源の確保策が盛り込まれたもので、我が党は、この施策で本当に少子化を止められるのか、そして巨額の財源を本当に確保できるのか、この両面から政府に問いただしてきました。しかし、その疑念は、最後まで解決されないどころか、逆に深まるばかりでした。
まず、加速化プランの各施策について、どこが異次元なのか、結局、腹に落ちる説明はいただけませんでした。長年指摘されながらも実現できなかった施策を盛り込んだとの説明は、規模を三・六兆円にまで増やしたから入れられたというようにしか聞こえませんでした。プランの主な柱は一・七兆円に及ぶ現金給付の拡充で、この中には児童手当も含まれ、所得制限の撤廃や高校生までの延長、それに第三子以降の支給額倍増が盛り込まれています。こうした現金給付の拡充は、子育て世帯への支援としては有効かもしれませんが、政府が目指す少子化トレンドの反転を実現する上で具体的にどれだけ効果があるのか、政府から明確な答弁はありませんでした。
そして、審議の中で、目標の設定と効果の検証が重要だと訴えたところ、政府からもKPIが大切で、こども大綱の中で目標設定をしているという答弁があったので、期待してこども大綱を見てみましたが、愕然としました。そこには、結婚、妊娠、子供、子育てに温かい社会の実現に向かっていると思う人の割合を七〇%に増やすと書かれており、目標設定というより意識調査のようなものでした。これが霞が関文学なのかと思い知らされました。
さらに、先週公表された年間の実施計画とも言えるこどもまんなか実行計画には、どのようなアウトカム、成果目標、成果実績が適切か検討を進め、得られた知見を活用すると書かれていました。三・六兆円もの財源を使うことは決めている一方で、目標設定は今後の検討にとどめていて、お金の使い方の大切さを分かっているとは思えません。
そして、巨額の財源の確保は、既定予算の最大限の活用で一・五兆円、歳出改革による公費節減で一・一兆円、そして支援金制度の構築で一兆円と三つから成りますが、それぞれ本当に集められるのか甚だ疑問です。
一つ目の既定予算の最大限の活用は、毎年度の予算編成の過程で社会保障に関する事業で要求している予算の過剰な上積み分を削って少子化対策の予算に付け替えていくだけの話です。各事業で予算が余りそうなら、最初からその事業に計上すべきではなく、既定予算でもなければ活用でもありません。あたかも無駄なお金を見付け出したような言い方は国民に誤解を与えます。
また、二つ目の歳出改革による公費節減は、医療や介護の制度で歳出改革を行って、国、地方が拠出する公費負担分を一・一兆円節減し、少子化対策の財源に充てようというものですが、机上の理論にすぎません。
政府の説明によると、これまでの二〇一三年度から二〇二二年度までの九年間で子供関連予算を四・三兆円増やしてきたということです。この四・三兆円の根拠として明確になっているのは、消費税の引上げ分と子ども・子育て拠出金の増額分で、合わせて二・七兆円。それを引くと残りは一・六兆円となり、これはきっと歳出改革によって捻出できたはずだとして、年平均にすると〇・一八兆円。その上で、今後も同じように歳出改革できるはずとして、二〇二八年度までの六年分を掛け算すると、〇・一八兆円掛ける六年で一・一兆円になるという全くの都合の良い計算です。
歳出改革の額を言うなら、具体的な改革項目とその金額を出して積み上げていくべきなのに、こんな本当だったのかどうかも分からない根拠を基に今後も捻出できると言われても説得力はありません。
政府が策定した全世代型社会保障の構築を目指す改革工程でも、歳出改革のメニューを羅列しているにすぎず、具体的な実施時期や削減額は記されていません。
歳出改革を本気で行うなら、それには痛みを伴うもので、医療費の患者負担など、高齢者層を中心に負担が増えることにもなります。それなのに、医師会始め業界団体などの利害関係者と合意形成を行った形跡すら見られず、それでもできると断言するのは、捕らぬタヌキの皮算用でしかありません。
さらに、支援金制度について言えば、社会保険の目的外使用であること、そして、社会保険料は現役世代に最も重く負担が掛かるので、財源にすれば少子化を加速させることは疑いようのないことです。にもかかわらず、政府の答弁は、有識者の中にも社会保険料を財源とする支援金制度に賛成する声があるなどと、木で鼻をくくったものばかりで、相入れないまま内閣委員会の審議は過ぎ去りました。
そんな審議の中、身内であるはずの自民党議員から、子供保険を別途つくるならよいが、勝手に医療保険の中から支援金制度と名付けて何%とかを持っていくのは国民の納得を得にくい、医療保険とは別だというのは詭弁に近いという良識的な意見が出たのには励まされました。
そして、一番の問題は、社会保険の負担軽減効果の範囲内というまやかしです。歳出カットできたのなら、それは無駄遣いを削ったことなのだから、まず、当事者たちに返すべく、保険料の軽減に充てるのが本来のあるべき姿です。その上で、もうちょっと出してくれませんかと聞くのなら分かるものの、本当に削れたのかどうかも分からないのにその分を徴収すると言われても、国民からすれば取られたとしか思えません。
幾ら実質的な負担がないと強弁しても、国民にとって新しい負担がのしかかることにほかならず、それに伴う可処分所得の減少や雇用への悪影響などに見て見ぬふりをすることは、政府として無責任だと言えます。
我が党は、財源の在り方について抜本的な見直しを行うべきと主張し、それまでの間は、国会議員の定数削減を始めとする行政改革による出資の削減など歳出の削減を図ること、そして国の不要資産の売却によって歳入を増やすことなどを代替財源として提案しています。
少子化は、人口ピラミッドの形を大きく変え、我々が今享受している社会生活をも大きく変えていきます。それだけに、その対策は誰もが納得できるルールで行っていく必要があります。今回のような問題の多い法案は決して認められるべきではなく、廃案にすべきです。そのことを強く訴え、私の反対討論とさせていただきます。
参考資料等
こどもまんなか実行計画2024