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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#77 経済団体、労働団体、医療保険者、学識経験者等にお集まりをいただいた大臣懇話会において御意見を頂戴した上で、政府案を取りまとめてございます

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金制度の創設に関しては、法案の委員会審査開始に合わせて「緊急声明」を発表した学会がある。
 どのような内容か。


日付:2024年4月5日
会議名:衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会
発言者:立憲民主党 藤岡隆雄
内閣府特命担当大臣 加藤鮎子

藤岡 大臣、今日、朝、一つ、緊急声明というのが発表されております。委員の皆様にも資料をお配りしておりますけれども、「緊急声明 「子育て支援金」制度の撤回を求める」というふうな緊急声明が出されております。今朝というふうに聞いておりますけれども。
 この中で、健康保険から取ることは根本的に間違いである。あるいは、少子化対策は医療保険にとっての受益であるというのはもはやへ理屈であるということまで言われておりますが、これを認めれば、観光振興も環境対策も健康にプラスの効果を与え、医療保険の受益となるなどもはや何でもありとなる、将来の各種施策の財源確保にも禍根を残す大失策になりかねない。あるいは、負担は生ずるとして、政府は実質的な追加負担は生じないと主張するが、この政策で保険料負担が増える以上、詭弁であるということが言われております。
 まあ、下の方の、ちょっと児童手当の話は別としまして、これだけ危機感を訴える声明が出されていて、二ページ目に約三十名の賛同者のお名前が載っております。この中には、西沢先生始め、社会保険庁の元長官でありました堤修三元社会保険庁長官や、あるいは元日本社会保障法学会の代表理事だった加藤智章先生始め約三十名の方が、本当に日本を代表する有識者の方が強い危機感を訴えております。
 これは、本当に、子育て支援金を撤回し、財源の在り方について改めて議論し、制度設計を改めるべきとの指摘がされておりますが、加藤大臣の見解をお伺いしたいと思います。
加藤 お答え申し上げます。
 御指摘の声明文では、支援金制度の具体的内容について御意見を頂戴しているものと認識してございます。
 支援金制度は、今般の加速化プランに基づく、子育て世帯に対する大きな給付拡充を支える財源の一つとして、全世代、全経済主体が子育て世帯を支える仕組みでございます。
 声明文におきましては、児童手当の所得制限撤廃を例とし、少子化対策の在り方について検証し直すべきとの御指摘をいただいてございますが、政府としましては、二〇三〇年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスであるとの認識の下、個々人の結婚や子育ての希望の実現を阻む障壁を取り除いていくための施策を議論し、加速化プランを取りまとめ、その財源確保を図る一つの方策を支援金制度としてございます。
 支援金制度なくして、今年十月から予定する児童手当の拡充を始め、子供、子育て施策の抜本的拡充を実現することはできません。支援金の法的性格や医療保険制度との関係等については既にこの委員会でも御議論をいただいていますので個々に申し上げることはいたしませんが、引き続き、支援金制度の考え方について説明を尽くすとともに、若い世代の結婚、出産を応援するという基本的な政策の方向性について国民の皆様にお伝えしてまいりたいと考えております。

藤岡 私も、この児童手当のところ、ここはいいと言っているわけではありません。あくまでも財源の在り方ということで、支援金制度が、あくまで令和八年度からですよね。したがって、まだ時間はある。その中で、財源の在り方についてここまで非常に強い危機感を訴えているというのは、私はすごく、少なくとも重く受け止めていただく必要はあると思うんですね。
 大臣、ここまで有識者の方が名前を連ねて訴えているんですけれども、これはちょっと重く受け止めて、しっかり一回検討した方がいいんじゃないですか。
加藤 お答えを申し上げます。
 こども家庭庁におきましては、経済団体、労働団体、医療保険者、学識経験者等にお集まりをいただいた大臣懇話会において支援金制度の具体的設計について御意見を頂戴した上で、政府案を取りまとめてございます。
 様々な御意見があると思いますが、引き続き政府案の考え方について説明を尽くしてまいります。
藤岡 非常に、これだけの危機感を訴えているというのは、やはり本当に重く受け止めていただく必要があると思うんですね。


参考資料等

緊急声明 「子育て支援金」制度の撤回を求める

 政府は、少子化対策の財源として「子育て支援金」の新設を提案し、今国会に関連法案を提出した。健康保険料に上乗せして国民と産業界から徴収するとの案だが、根本的な欠陥がある。

1) 健康保険から取ることは根本的に間違い
・そもそも健康保険は、疾病のリスクに備える社会保険である。少子化対策への流用は、その本来の目的から外れる。
・何ら合理的理由がないにもかかわらず、こうした提案がなされるのは、「取りやすいところから取る」ということにほかならない。
少子化対策は医療保険にとっての受益であるというのはもはや屁理屈である。これを認めれば、観光振興も環境対策も健康にプラスの効果を与え、医療保険の受益となるなどもはや何でもありとなる。将来の各種施策の財源確保にも禍根を残す大失策になりかねない。

2) 負担は生じる
・政府は「実質的な追加負担は生じない」と主張するが、この政策で保険料負担が増える以上、詭弁である。
・上乗せ分は世代一律ではなく、現役世代に偏って負担が増す。高齢世代の負担がわずかであることは不公平であり、かつ、子どもを産み育てる世代の支援という少子化対策と逆行する。

3) その他
・保険者があたかも徴収のみを担うかのような政府の説明は偽りである。実際には保険者が納付義務者になる。
・医療保険財政にとって、後期高齢者支援金、前期高齢者納付金、介護納付金負担が既に極めて重くなっている。子ども子育て支援金は、医療保険財政を一段と圧迫する。
・企業の健保組合など保険運営者は、納付「集金」は求められるが、その資金の規模と使い方は子ども家庭庁が決める。上乗せ分については保険者機能が発揮できず、ガバナンスを効かせられない。

 政府は、明らかに欠陥のある「子育て支援金」提案を撤回し、財源のあり方について改めて議論し、制度設計を改めるべきである。その際、家族出生率が1.9と高い水準にある等、少子化の主因は婚姻率低下という見方も踏まえるべきだ。多額の費用を要する児童手当の所得制限撤廃が本当に少子化対策に有効なのかなど、少子化対策のあり方については、EBPMの視点から検証し直す必要がある。

緊急声明 賛同者(2024年4月5日時点、五十音順)

井伊雅子 一橋大学大学院経済学研究科教授
池田信夫 株式会社アゴラ研究所代表取締役所長
磯山友幸 千葉商科大学基盤教育機構教授
伊藤由希子 津田塾大学総合政策学部教授
大林尚 ジャーナリスト
小黒一正 法政大学経済学部教授
鬼木甫 大阪大学名誉教授
柏木恵 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
加藤智章 北星学園大学社会福祉学部教授
岸博幸 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト、東京大学先端科学技術研究センター客員上級研究員
島澤諭 関東学院大学経済学部教授
鈴木亘 学習院大学経済学部教授
高橋洋一 嘉悦大学ビジネス創造学部教授
竹中平蔵 慶應義塾大学名誉教授
田中耕太郎 元放送大学客員教授
土田武史 早稲田大学名誉教授
堤修三 元大阪大学大学院人間科学研究科教授
内藤朋枝 成蹊大学経済学部専任講師
中川雅之 日本大学経済学部教授
中里透 上智大学経済学部准教授
中条潮 慶應義塾大学名誉教授
西沢和彦 株式会社日本総合研究所理事
新田哲史 株式会社ソーシャルラボ代表取締役
八田達夫 アジア成長研究所理事長
早川英男 東京財団政策研究所主席研究員
原英史 株式会社政策工房代表取締役社長
松山幸弘 武蔵野大学国際総合研究所研究主幹
八代尚宏 昭和女子大学特命教授

※この緊急声明は、一般社団法人制度・規制改革学会(会長:八代尚宏・昭和女子大学特命教授)の有志が発起し、学会外の識者も含め賛同者を募ったものである。

支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会

支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会構成員(五十音順)◎座長

五十嵐克也 日本商工会議所理事・企画調査部長
伊奈川秀和 東洋大学福祉社会デザイン学部教授
井上隆 日本経済団体連合会専務理事
◎遠藤久夫 学習院大学経済学部教授
菊池馨実 早稲田大学理事・法学学術院教授
北川博康 全国健康保険協会理事長
権丈英子 亜細亜大学経済学部長
佐藤麻衣子 株式会社ウェルスプラン代表取締役
佐野雅宏 健康保険組合連合会副会長
袖井孝子 NPO法人高齢社会をよくする女性の会副理事長
原勝則 国民健康保険中央会理事長
三日月大造 滋賀県知事 全国知事会子ども・子育て政策推進本部本
部長
村上陽子 日本労働組合総連合会副事務局長
横尾俊彦 全国後期高齢者医療広域連合協議会会長

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井川夕慈
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