子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#88 ETFの分配金収入については、国の一般財源として既に活用されているものでありますから、これをもって財源と考える余地はない
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
支援金に代わる財源として、立憲民主党は、日本銀行が保有するETFの分配金収入の活用を提案した。
ETFの分配金収入は、少子化対策の財源として適切なのだろうか。
河西 先般、立憲民主党の皆様から、財源について対案を頂戴をいたしました。これは先般、階議員がここに立たれて御説明をしていただきました。支援金を廃止をする代わりに、日銀が保有をする時価七十兆円程度のETFを政府が簿価、これは三十七兆円でありますけれども、これで買い取って、日経平均株価が三〇%程度下落をしても一兆一千億程度を見込めるだろう、その分配金収入を財源として活用されるという案でございます。
これまで、所得税や法人税、また金融所得課税など、ざっくりとした税目のお示しはあったんですが、具体的な額がなかったために、その意味で、今回の案、率直に評価をさせていただきたいと思います。
今日は、建設的な議論のために、まず財務省、日銀にそれぞれ確認をいたしますが、まず財務省にお伺いをいたします。併せてお伺いしますが。
日銀が保有するETFの分配金収入でありますけれども、これは、日銀法により他の経常利益と同様に必要経費を差し引いて既に国庫納付をされて、既に政府の一般財源として活用されているというふうに考えますけれども、御見解をいただきたい。
併せて日銀の方にお伺いしますが、今回の案、このETFを政府が簿価三十七兆円で日銀から買い取るということですので、差引き、七十引く三十七、三十数兆円の含み益も日銀から政府に移動をするということになります。これが、日銀の財務体質への見方など、市場に与える影響について見解をいただきたいと思います。
まず財務省からお願いいたします。(発言する者あり)
谷 御静粛に願います。
湯下 お答え申し上げます。
日本銀行が保有するETFの分配金収入は、例えば、日本銀行が保有する国債の利息収入といった他の収入と同様に、これまでも、日本銀行の収入になった上で、法律上の納付義務規定に基づき、日本銀行からの国への国庫納付金の一部として一般会計の歳入に計上されており、委員御指摘のとおり、既に国の一般財源として活用されているところでございます。
清水 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、仮に日本銀行の保有するETFを簿価で売却する場合には、実現益は発生せず、含み益も残らないことになります。また、その後は、ETFの分配金がゼロとなりますので、日本銀行の収益は下振れることになります。
その上で、日本銀行では、これまでの大規模な金融緩和の実施に当たりまして、準備金の積立てや債券取引損失引当金の拡充など、財務面の手当てを行ってきておりますが、中央銀行の財務リスクが着目されて金融政策をめぐる無用の混乱が生じる場合、そのことが信認の低下につながるリスクがあります。
日本銀行といたしましては、引き続き、財務の健全性にも留意しつつ、適切な政策運営に努めてまいりたいというふうに考えております。
河西 御答弁ありがとうございます。
ですので、結局、この一兆円、一般財源の中でつけ替えにすぎないということ、あと、市場の混乱リスクもこれは否定できないということを今明確に御答弁いただきました。
その上でありますが、これは総理にお伺いします。
そもそも、先ほどの二点の課題は、それはそれとして、これが安定財源としてふさわしいのかということをお聞きをしたいと思います。
運用収益を社会保障財源に活用するという意味ではGPIF等が想起をされるわけでありますけれども、これは保険料収入と公費という、いわば安定財源のメインエンジン、これに年金積立金の管理運用を加えた、あくまで更なる安定化を図るもの、私はこう理解をしております。運用収益自体をメインの安定財源とするものではない、GPIFは。
そこで伺いますけれども、政府として、ETFの分配金収入を特別会計に入れて加速化プランに必要な三・六兆円の三割近くを占める一兆円に充てる案でございますが、責任ある政府として、子供、子育て政策を支える安定財源の在り方としてふさわしいかどうか、これを総理にお聞きしたいというふうに思っております。
岸田 御指摘の立憲民主党の提案ですが、これは既に一部の有識者の方からも同様の提案がなされていたと承知をしています。ただ、このETFの分配金収入については、ただいま財務省から答弁がありましたとおり、現状、法律に基づいて、日銀から国への国庫納付金の一部として一般会計の歳入に計上され、国の一般財源として既に活用されているものでありますから、これを仮に子供、子育て財源に充てるとすれば、その分、国の一般財源が不足をし、同額の国債を一般会計において発行する必要が生じるため、これをもって財源と考える余地はないと考えています。
いずれにせよ、安定財源をしっかりと確保すること、これは若い世代が将来のライフプランを考える上で極めて重要であります。そういった意味から、安定財源をしっかり確保させなければならない、政府としては、歳出改革を中心として、支援金を含め、安定した財源を確保する今回の枠組みについて、今後ともしっかり説明を続けていきたいと考えております。
参考資料等
日本銀行法