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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#18 健康保険制度の持続可能性を高めるといったような大きな意味での受益がある

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金は保険料であるが、支援金を充てて行う事業は保険給付ではない。
 全体として反対給付性が保たれていれば、保険料の一部は、何に使用してもよいのか。
 保険料を保険給付以外の事業に使用することは、どのような条件のもとに許されるのか。


日付:2024年4月16日
会議名:衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会
発言者:立憲民主党 藤岡隆雄
内閣府特命担当大臣 加藤鮎子
こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室長 熊木正人

藤岡 基本的なことでございますが、支援金を充てる事業というのは、いわゆる医療保険各法上の保険給付なのか、それとも保険給付ではない事業なのか。これは保険給付ではないという位置づけということになるんでしょうか。
加藤 お答え申し上げます。
 支援金は、医療保険料と併せて拠出いただくものであり、保険料として整理されるものの、支援金を充てる児童手当等は保険給付とはしてございません。

藤岡 今はっきりおっしゃっていただきましたけれども、やはりそこなんですよね。負担をする方からしたら、保険料だといって納めて、保険給付ではないというものに使われるという、このことですね。やはり、これは御高齢者の方にとっても、ある意味、受益を受ける可能性が極めて低いという中で、非常にこのところの基本的なところ、やはりなかなか納得ができないという話だと思うんです。
 私、初代の元老健局長の堤元老健局長のちょっと御見解などもお伺いしてきたんですけれども、やはり保険者が保険料を保険給付以外の事業に使うことが認められるのは、言葉をそのまま申し上げますけれども、その事業が保険給付の実施にとって有用であること、保険者自身の観点から、その保険者に属する被保険者の合意があることというふうなお話をお伺いしております。
 今回、例外的に保険料を保険給付ではない事業に充てているというふうな整理になっているのかなというふうに思うんですけれども、やはりここは、何でもかんでもそういうふうに整理していいというわけでは私は全くないと思いますし、今回の支援金というのは一兆円というすごい規模で、多くの皆さんに負担を求めてもらうということで、私は、やはり保険料だけれども保険給付ではないというところが非常に納得がなかなかできないところです。
 今日、熊木室長にお伺いもしたいと思います。
 この間、考え方は非常に、私、ちょっと違いますけれども、いろんな御答弁を聞いておりまして、一つの考え方として大変必要な答弁、分かりやすい答弁であったというふうに私は思っております。そこは本当に敬意を表したいと思いますし、また、何というのか、総理が非常に、ある意味、勝手な思いでというふうに申し上げますけれども、保険料だ、そして実質負担ゼロだという中で、非常に結論ありきの中で制御されているということも何となく理解をいたしますけれども、もちろん、私はその考え方を取ることは全くできませんけれども。
 やはり、保険料を保険給付ではない事業に充ててよいとする、このところの例外の歯止めというんでしょうか、基本的なそこの、私は一線を越えているというふうに思いますけれども、この前、大西健介先輩議員が話していたように、このところのどこをある意味防衛ラインとして考えているのか、そのところを室長にお伺いしたいと思います。
熊木 まず最初に、結論的に申し上げますと、何でもかんでもよいということではないというふうに考えております。
 少し説明させていただきましたが、医療保険制度においては、保険料を保険給付以外に充てている例というものはいろいろとございます。保健事業しかりでございますし、それから後期高齢者の支援金ですとか出産育児支援金というのは、医療保険制度ではないですけれども、別の医療保険制度に対してお金を出してございます。
 さらに、介護納付金、これは医療保険とは異なる介護保険という制度、別の制度に対してお金を出してございます。医療保険の保険給付ではないですけれども、医療保険の各法に基づいて介護保険料として頂戴をいたしまして、それを別の介護保険制度というものにお出しをしている。介護保険におきましては、介護保険の給付のみならず、地域支援事業といいまして、これまた保険給付でないものにも出してございます。そういう意味ではいろいろな幅がまずあるということは前提でございます。
 その上で、今回のものは、医療保険の仕組みを通じて行うことが目的の範囲内であるという整理をさせていただきました。まずもって、ずっと申し上げていますように、次世代の育成というのが健康保険制度の持続可能性を高める、確保するという観点で重要でございます。
 それから、健康保険制度におきましては、出産育児一時金ですとか出産手当金といったような形で、分娩のものだけではなくて、出産、育児に関わる給付を行ってまいりました。支援金を充てる事業というのは、児童手当ですとか十万円の給付ですとか、そういったものでございますので、こうした出産を起点とするような保険給付と連続的なもので、地続きという言い方もさせていただいております、そうしたものであるということ。それぞれの事業が、当然ながら、子供の心身の健康の維持向上にもつながることが期待されるものであるということも踏まえさせていただきました。こうしたことに鑑みまして、支援金の賦課徴収を医療保険の仕組みを通じて行うことは健康保険の目的の範囲内であるというふうに考えてございます。
 保険給付が被保険者にとって有用かどうか、あるいは、それが保険給付ではなくて、事業が被保険者にとって有用かどうかということも当然重要だということ、それは間違いございません。これは、今申し上げましたような、広く児童手当ですとか保険給付という形は取っておりませんが、被保険者に対して直接的な受益が大きいということと、今申し上げましたような持続可能性を高めるといったような大きな意味での受益があるということでございます。
 被保険者が合意ができるかどうかというのは、まさにこの国会での御審議を通じまして、民主的なプロセスの下でこれが成立するということが一番重要なんだろうというふうに考えてございます。

藤岡 被保険者は、やはりなかなか納得ができないんじゃないかなというふうに思います。各種の世論調査を見ておりましても、やはり六三%とか、いろいろな、なかなか反対であるというふうな結果も出ております。非常に、やはりまだまだ、この制度についての納得感というのは私は得られていないというふうに思うんですね。
 今、いろいろ御説明いただきました、本当に。いろいろな、例えば出産一時金というのは、療養の給付に代わるようなものということで、非常に医療に関わるというか、そういうふうに近いようなものであると私は思いますし、また、いろいろな拠出金というのは、何だかんだ言って、将来、自分たちが受益をする可能性もあるということで。今回の支援金制度というのは、特に御高齢者の方にとって、児童手当を受けるというのは、なかなか、ほぼ可能性というのは低いというふうに思いますし、非常に、今まで入っていたものからすると、今回のものは、やはりちょっと、これは別物だよね、そういう認識はまず持っておいていただかないといけないと思うんですけれども、熊木室長、御見解、いかがですか。
熊木 これは、全世代、全経済主体が子育て世帯を支える、そういう連帯の仕組み。したがって、これは連帯の仕組みを基盤となす社会保険制度を活用するということを申し上げております。
 この連帯の仕組み、何が連帯の中に入るのか、何が助け合いの輪に入れるべきなのか、これは、当然ながら時代とともに一定の変遷がありながら、基本的なところはしっかりと担保しながら、基本的な考え方はしっかりとしながら考えていくということだと思っています。
 確かに、子育てに対して社会保険の活用をするということはこれまでしておりませんでした。したがって、今回は新しい提案でございます。新しい分かち合いなり助け合いの提案をさせていただいている。これは、これまでの考え方とプラスアルファの部分、それは、当然ながら、今の少子化というものが、誰にとっても、医療保険制度にとっても被保険者にとっても大変大きな課題であるということを認識した上で、充てる給付は厳密に議論をさせていただきまして、かなり健康保険制度の目的に沿ったものにした上で、そうした受益があるということを鑑みまして、このような提案をさせていただいた。
 したがって、私どもは、これまでにあった連帯の仕組みそのものだと申し上げているものではありませんで、新しい分かち合い、新しい助け合いの仕組みなんだ、そういう提案をさせていただいているということであります。ただ、基本的なところの連帯の考え方というものは変わるものではございません。

藤岡 新しい提案だということは、まずお認めをいただきました。今までとはやはり違う、踏み込んだ提案ということだと思うんですけれども。
 やはり、連帯という、ちょっと恐縮ですが、美辞麗句で何でもかんでも片づけていいという話では私はないと思うんですね。基本は、やはり保険の原則に沿ってやられなければ私はいけないと思うんですよね。
 そういう中で、今回、少なくとも、例えば医療保険各法の出産に関してとか、今、出産は地続きという話、浅野議員も以前質問されておりましたけれども、ある意味、逆に、医療保険の各法のところを、法律をもうちょっと改正をして、もうちょっときちっと法律上位置づけていくとか、そういうことは考えなかったんでしょうか。室長、お願いします。
熊木 いろいろなミクロの観点、マクロの観点がございますが、ミクロの観点で、今委員が御指摘した文脈で申し上げれば、保険給付という構造にするかどうかというのはあったかと思います。ただ、既に児童手当というものが今まで自治体において支給されているとか実績なり経緯がございますので、あえて児童手当を保険給付という形に変えるということの必要性はないというふうに判断をいたしました。
 したがって、元々、保険給付でなければ保険料を充てられないということではないと思っておりますので、そういう意味では、保険給付化はしないで、事業のまま提案をさせていただいたということでございます。

藤岡 保険給付でなければもちろん保険料を充てられないということではないというふうにおっしゃいました。そのところが、やはり今回、ちょっと決壊してしまっているんじゃないかな、一線を越えてしまっているのではないかなというふうに私は感じるわけなんでございますが、このいわゆる支援金を充てる事業と支援金の負担については、熊木室長にお伺いしたいと思いますけれども、やはり、これは政府としても、受益と負担の関係はやはり少し遠いな、そういう要素があるなというふうに思っているということでよろしいですか。
熊木 受益と負担の関係が遠いとは、実は必ずしも思ってはございませんです。受益と負担の関係はむしろ明確で、この児童手当なり、十万円の給付だったり、共働き、共育ての支援というものに対して、しっかりと法律上明確にして、そのために支援金、これを医療保険各法上は医療保険料とは区別をして規定をさせていただいて、しっかりとした、これに充てるものとしての支援金であるということでございます。したがって、その意味で、受益と負担の関係は非常に一対一で、マッチしたものであるということでございます。
 それで、受益ということでいうと、申し上げたように、それによって、その給付によって被保険者に対して大きな給付が、保険給付ではないですけれども、事業としての給付、大きな給付、大きな便益といいますか、そういったものになりますし、申し上げましたように、持続可能性の向上といった、間接的といいますか、大きな意味での受益というものがありますので、一概に給付と負担の関係が遠いというふうには考えてはございません。

藤岡 回り回って持続可能性を高めるとか少子化対策にということでということで、ただ、御高齢者にとってはやはり、改めて、重ねてなんですけれども、自らはなかなか、直接の給付という点では受ける可能性というのは極めて低い。実際、保険料として納めるということに今なかなか反対の声が多いのも、何で保険料なんだろうという、やはりそういうことだと思うんですよね。
 そこの中で、今、必ずしも受益と負担の関係、いやいや、遠いとは考えていないと。やはり、でも、これはなかなか、反対給付性と言ってもいいんですけれども、ここはちょっと、少し遠いということは少なくともお認めいただいた方がいいんじゃないんですか。室長、いかがですか。
熊木 済みません、若干私の方で誤解していた面もございまして、おっしゃられたように、例えば高齢者の方ですとか子育てを終えた方々からすれば、給付というものがなかなか考えられないという意味において、給付と負担の関係が遠い方もいらっしゃる、そういう御趣旨だというふうに理解をいたしました。
 それにつきましては、もうずっと申し上げているように、医療保険制度においても出産育児一時金という仕組み自体がそもそもずっとございまして、これはまさに、高齢者ですとか子育てを終えた方についてはなかなか給付がないという中で保険料をいただきまして、そこで給付を行っております。
 更に言えば、出産育児一時金については、今回、四月から、健康保険法の改正によりまして、給付の一切ない後期高齢者が後期高齢者医療制度の中から保険料を納めていただいたもので現役世代の出産育児一時金を賄うという仕組みを導入いたしました。これはまさに、給付がない方々に新たに保険料の拠出をお願いして、出産育児一時金を四十二万円から五十万円にさせていただいたところでございます。
 こういったことを考えますと、健康保険制度全体の関係の中で、必ずしも給付と負担の関係がやはり遠いというふうには思ってはございませんが、先生おっしゃったように、給付のない方がいるということを踏まえて、しっかりと説明を尽くしていかなければならないというのは全くおっしゃるとおりでございますので、そこは、政府において足りない部分があるということであると思いますので、しっかりと引き続きやってまいりたいと思います。
藤岡 今、後期高齢者からという話もあったんですけれども、やはり、保険料を保険給付ではない事業だとか、ある意味そういう、ちょっとなかなか給付を受けられないという方が保険料として納めて、それがちょっと何か自分が受益を受けないところに使われちゃうというのは、ちょっとこれは非常に、慎重にといいますか、もう少し、今総理が言われて、もう総理がかたくなだからそれはどうしようもないという、そこも、理解はできませんけれども、しかし、そういうふうになっていることは、理解はできませんけれども、そうなっているんだなということはお察しをいたしますけれども、ちょっとこれはやはり、官僚の皆さんの矜持を示して、これは駄目だよということは言っていただかないと私はいけないと思うんですよね。
 これは何でもありという、そうしたら、当然この国会としても、租税法律主義ということで、何でも本当は法律で、税であれば法律でちゃんと料率等も決めなくちゃいけないのが、内閣の方であるいは保険者の方でということになって、これは租税法律主義を、ちょっとこれを骨抜きにされてしまう、そういうこともあるわけなんですよね。
 だから、議員みんな、本当にこういうことは、国会議員としてももっともっと問題意識を持って私は考えていかないといけない課題だと思うんです。総理一人暴走して、ああ、どうしようもないですねということで本当に済ませては私はいけないというふうに思うんですよ。


参考資料等

出産育児一時金の費用の一部を後期高齢者の保険料から支援します

 少子化に歯止めをかけ、子育てを全世代で支援するため、出産育児一時金を全世代で支え合う仕組みが令和6年4月から始まりました。
 出産育児一時金に必要な費用のうち一部(7%)を、後期高齢者の保険料から支援することになります。なお、後期高齢者医療制度が創設された平成20年4月より前は、出産育児一時金を含め、子ども関連の医療費については高齢者世代も負担していました。
 7%という割合は、後期高齢者と現役世代の保険料負担の金額をもとに設定されています。
 なお、令和6・7年度については、負担の急激な増加をやわらげるため、後期高齢者の負担は半分の3.5%となります。

厚生労働省ウェブサイト「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」 より

租税法律主義

法律の根拠に基づくことなしには、国家は租税を賦課・徴収してはならず、国民は納税の義務を負わされることはありません。この原則を租税法律主義といい、日本国憲法第84条に記載されています。

日本税理士会連合会「大学生向け講義用テキスト-標準版-」より

https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/cpta/business/education/11-1_lecturetext2023university_normal.pdf

日本国憲法

第84条 課税あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

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井川夕慈
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