初めての大腸内視鏡検査体験記 検便で「陽性」になるとどうなるか?
井川夕慈のKindle電子書籍『初めての大腸内視鏡検査体験記―検便で「陽性」になるとどうなるか―』より一部を抜粋して公開します。
午前6時、アラーム音で目が覚めた。
意外に大きな音をアマゾン・エコーが出した。
アラームの場合は音量が2割増しになる設計か、と勝手な推測が働いて苦笑する。
シャワーを浴びる時間は無い。
上半身だけ裸になり、頭部を浴槽の上に突き出して、洗髪を済ませる。
電気ケトルに飲料水を入れ、《寝覚めの一杯》を作る。
体温を計測せねばならない。
俺は忙しいのだ。
電子体温計を左脇の下に挟みつつ、右手を使って白湯を飲む。
35.7度。
低過ぎやしないか? と思いつつも、発熱は無さそうなのでホッとする。
すると有難いことに、再び便意を催してきた。
本日2回目の排便に行く。
1時間前よりもユルめの便が出た。
ヨシヨシという感じがする。
時間が無い。
前日用意しておいた防寒着に着替える。
6時27分、戸締りをして家を出た。
周囲はまだ薄暗い。
今日は特別な日なのである。――
説明が必要だろう。
筆者は1980年生まれの42歳である。
2022年11月、自治体が行う大腸がん検診に2日分の便サンプルを提供した。
同12月、検査結果を知らせるハガキが郵便受けに届いた。
どうせ「異常ありませんでした」の通知だろうなと思ってシールを捲ってみたところ、
……つきましては大腸検査説明会に出席ください、という内容の案内だったのである。
説明会の日時は決め打ちされており、有無を言わせぬ雰囲気を漂わせていた(よく読めば、都合により出席できない場合は云々とも書かれていたが)。
そして2023年1月、筆者は人生で初めて、大腸内視鏡検査なるものを受けることになった。
本書はその時の体験を記録するものである。
一度受けてしまえば要領が知れてしまうものだが、初めて受ける方(とりわけ不安を感じていらっしゃる方)にとっては、参考になる点もあろうかと思う。
目次
午前6時27分に家を出た
要点を先に……
説明会に〝出頭〟した
「これは一大プロジェクトだ」と思った
検査前々日は楽勝だった
検査前日は難儀した
砂糖湯を「ちょっと美味い」と感じた
下剤はスポーツドリンクの味がした
検査前夜は嫌な夢をみた
腹下しの客たちを乗せてバスは走った
バスはパーキングエリアに停車した
水はドンドン飲んで下さいと言われた
待機部屋の片隅で問診が始まった
看護師は「わたし、見る」と言った
検査中は田舎のカエルを思い出した
検査後のトイレでは一滴も出なかった
待合室では食べる気が起こらなかった
帰路には抽象的な思考が駆け巡った
「しっとりたまご蒸しパン」は美味かった
検査料は1分あたり1000円だった
内視鏡にメスは仕込まれていなかった
下剤の効果発現時間を先に教えてほしかった
付記
(続きはKindleでお楽しみください。)