子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#62 必要な保障が欠けることがないように進めていかなければならない
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
政府が検討する歳出改革のメニューには、新たに「自己負担」が生じる項目が含まれている。
このことと「実質的な負担が生じない」という政府の説明は、どのように理解すればよいのか。
高橋 それで、今年一月十九日の社保審、社会保障審議会医療保険部会では、支援金ということは結局はお金が出ていくわけで、被保険者の追加負担になるのではないかとか、どうして税金ではなくて医療保険の仕組みを通じて財源を求めるのかという意見とか、社会保障改革の中で一兆円を生み出しますよという議論に医療保険部会も関わるならなかなか大変だ、こうした意見が噴出しています。当然だと思うんですね。
それで、政府の説明とすれば、例えば利用料が二割負担のところを三割負担にすれば、保険者は、これまで八割給付していたものが七割に減るわけで、そういう意味で公費が減るんですよと説明しているんだと思うんですね。だけれども、この委員の中には、例えば薬価が安くなって自己負担分も安くなりますよといったって大した額じゃないよ、せいぜい薬価くらいでしょうというふうな指摘がありました。一方で、医療の負担増というのは命に関わる問題なんだという指摘もあったんです。
改革の工程表には、入院時の食費の見直し、生活保護の医療費扶助の適正化、更に過激なのは、生活保護については医療保険、介護保険へ加入することも検討する、つまり、医療扶助をなくしてしまうという意味ですよね。介護保険は、ケアマネの有料化、利用者負担二割、三割の見直しなどが盛り込まれていますが、これらは負担増そのものじゃないでしょうか。
宮崎 お答え申し上げます。
今委員御指摘がございました項目を含めまして、昨年末に閣議決定された改革工程におきましては、これから生まれる将来世代を含む全ての世代にとって安心できる社会保障とするために、将来にわたって社会保障制度を持続させる観点や、あるいは、年齢に関わりなく全ての国民の皆さんがその能力に応じて負担し支え合うことによって、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障がバランスよく提供されることを目指す観点から、社会保障制度の改革や、あるいは、これらを通じた歳出の見直しに取り組むこととしております。
この改革工程の中には、今御指摘のございました入院時の食費の見直し、あるいは医療、介護の窓口負担、これにつきましては一定以上の所得の方の範囲についての検討といった項目も含まれておりますし、一方で医療DXによる効率化や質の向上など、幅広い検討項目を盛り込んでいるところでございまして、こうした検討項目を検討した上で、全世代型の社会保障の実現に向けて取り組んでいくということでございます。
実際に実施する取組につきましては、二〇二八年度までの各年度の予算編成過程において検討し、決定をしていくこととなりますけれども、これらの検討、実施に当たっては、当該取組が与える影響を十分配慮しながら、必要な保障が欠けることがないように進めていかなければならないというふうに考えているところでございます。
高橋 負担増の一部であるということをお認めになったと思います。
この手法としては、小泉改革のとき、毎年二千二百億円削減する、これに近い考え方だと思うんですね。あのときは自然増分を見込まないという考えを予算にしたものでありました。毎年何をやるのかと大変悩まれたと思うんですね。生活保護の老齢加算の廃止などがやられて、毎回毎回いろいろな削減メニューが加わっていきますので、猛烈に大変でした。これが今回と同じように五年間で一兆一千億円の削減と積み上げたわけです。
現在の社会保障予算は、自然増分にとどめるというふうに考え方、基本となっていると思うんですけれども、その上での今回の社会保障改革というのはどういうふうに理解すればいいんでしょうか。自然増分だけは確保した上でという理解なんでしょうか。
宮崎 お答え申し上げます。
これまでも歳出の改革につきましては、骨太の方針等におきまして決定をいたしました一定の目安の対応など、一定のルールを決めた上で、持続可能な社会保障制度の確立のために必要な改革を様々な関係方面とも検討しながら進めてまいりました。
今後の、改革工程でお示しした内容も、これまでの歳出改革の努力を引き続き続けていくことで必要な社会保障制度の構築に向けて必要な改革を行っていくということで、そのような観点から改革を行います。その改革の効果として、少子化対策における財源についても、公費、保険料における影響が出てくるということで、そういう枠組みの中で今取組を進めているところでございます。
高橋 はっきりしないですよね。
それで、大臣に伺うんですが、総理は何度も、新たな負担は生じさせないときっぱり答えているわけですね。何をもってそう言えるんでしょうか。
熊木 少子化対策の財源、何をもって新たな負担を生じさせないと言うのかということでございました。
医療保険料と併せて支援金というものをつくってまいります。その中で全体として実質的な負担が生じない、こう申し上げております。
したがいまして、この支援金を構築するに当たりましては、社会保険の負担の軽減というものを図るということが重要でございます。徹底した歳出改革等によって保険料負担の軽減効果を生じさせまして、その範囲内で子供、子育てに要する支出の財源をいただく、こういうことをもって、一つ、新たな負担を生じさせないということを申し上げております。
もちろん、三・六兆全体の中で、歳出改革と既定予算の活用、これを最大限行いまして、まず一・〇兆円の支援金まで収めるといいますか、そういった、先生おっしゃいました複雑な財源構成をした上で、今申し上げたような歳出改革の中で、その支援金についてはその効果を相殺するという考え方でございます。
高橋 ですから、今、社会保障の改革の中で、負担増になりますよね、痛みがあるわけですよ、それを言ってから聞いたのに対して、社会保険の軽減で実質負担増にならないって、これは全然答弁がやはり矛盾していると思うんです。
参考資料等
第174回社会保障審議会医療保険部会 議事録