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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#78 反対する最大の理由は、子ども・子育て支援金制度に関して、多くの重大な問題があるからです

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金制度を創設する法案は、起立多数で衆議院を通過した。
 野党は最終的にどのような理由で反対したか。


日付:2024年4月19日
会議名:衆議院 本会議
発言者:立憲民主党 坂本祐之輔

坂本 立憲民主党・無所属の坂本祐之輔です。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論を行います。(拍手)
 初めに申し上げます。立憲民主党は、チルドレンファーストの考えの下、社会全体で子供の育ちを応援する政党です。子供や子育てにお金がかかるのは当然のことであり、子供、子育て政策にかける予算は、より拡充する必要があると考えます。
 それでも政府提出法案に反対する最大の理由は、政府が新たに創設する子ども・子育て支援金制度に関して、多くの重大な問題があるからです。
 第一に、支援金の負担額に関する政府の説明が小出しで、極めて不誠実だったことです。
 今年二月には、子供を含む医療保険加入者一人当たり月平均五百円弱を徴収することとされました。我々立憲民主党の強い要求の結果、被保険者一人当たりを含む医療保険ごとの試算が示されたのは三月末です。そして、今月九日に政府はようやく被用者保険の年収別の試算を示し、その後、十一日に国保の年収別試算を、十六日に後期高齢者医療制度の試算を提出いたしました。
 子供を含む保険加入者一人当たりの数字を強調したせこさも含め、このように小出しで、後手の説明に終始した背景には、金額を小さく見せたいという政府の思惑が透けて見えます。このような政府の情報開示に対する後ろ向きの姿勢が国民の不信を招いたことは明らかです。
 第二に、今般の支援金制度が明らかに国民負担を強いることです。
 政府の試算では、被用者保険の場合は年収六百万円で被保険者一人当たり月千円の徴収となり、国保の場合は年収四百万円で月五百五十円の徴収、後期高齢者医療制度の場合は年収二百五十万円で月五百五十円の徴収となります。
 岸田総理は、歳出改革と賃上げで実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築すると主張しますが、歳出改革による負担軽減は本来そのまま国民に還元すべきものである上、賃上げで実質負担軽減というのであれば、賃上げがあれば消費税を増税しても実質負担なしと強弁するのでしょうか。総理の発言は詭弁であり、支援金制度によって国民負担が増えることは、もはや火を見るよりも明らかではないでしょうか。
 第三に、支援金制度が社会保険制度の趣旨を大きく逸脱することです。
 今般の支援金制度は、現行の医療保険料に追加する形で徴収するものであり、これでは保険の本来の機能を毀損しかねません。医療保険を始めとする社会保険は、基本的には、保険料負担の見返りに給付を受けるものです。しかし、子ども・子育て支援金は、医療に直結しない費用を医療保険の枠組みで徴収するもので、給付と負担の関連性が極めて希薄であり、問題であると言わざるを得ません。
 第四に、支援金制度が現役世代の手取り額を減じさせ、子供、子育て支援策や少子化対策と逆行してしまうことです。
 支援金制度は、社会保険料と同様、収入の多い現役世代に負担が偏ります。これでは、子育て世帯を支えるべき政策が、本来の意に反したものになることが懸念されます。
 第五に、支援金制度が賃上げや安定雇用に与え得る負の影響についても触れなければなりません。
 今般の支援金制度は、被保険者だけでなく、事業主にも新たな負担をお願いするものです。本来であれば、その分を社員の給料や新社員の採用に回せたかもしれません。支援金制度が賃上げの原資を減らしたり、安定雇用に対して逆効果になったりしたら本末転倒です。
 るる述べてきたように、子ども・子育て支援金制度は数多くの欠陥を抱えています。そのため、立憲民主党は、政府案の子ども・子育て支援金制度を廃止し、その代替財源として、日銀が保有するETFから得られる分配金収入を充てることとする修正案を提出いたしました。
 先日の委員会では、我が党のこの提案に対して、日銀が保有するETFの分配金収入は既に国の一般財源として活用されており、子供、子育て政策の財源と考える余地はない旨、岸田総理が答弁されました。しかし、修正案の趣旨説明の中で詳細に明らかにしたとおり、そもそも政府は、ETFの分配金収入を歳入として見込んでいないのです。したがって、この総理の答弁は、国民の誤解を招くものであり、我が党の提案を不当におとしめるものであることから、速やかに撤回すべきであります。
 最後に申し上げます。
 政府案の子育て支援拡充策は、児童手当拡充が第三子以降に限定されているなど不十分な点はありこそすれ、一歩前進ではあると考えます。本来であれば、与野党の垣根を越え、議論を尽くし、共に前へ進めたかっただけに、財源について政府・与党の皆様から理解が得られなかったことは残念です。しかし、私たち立憲民主党は、自民党の裏金や脱税の疑念が全く払拭されない中、国民に対して、負担増をごまかし、真摯に説明をせず、不公平な形で新たな負担を強いる本法案には、断固として反対いたします。
 立憲民主党は、引き続き、分断をなくし、社会全体で子供の育ちを支えるという理念の実現に向けて全力で取り組んでいく所存であることを申し上げ、討論を終わります。


参考資料等

議案審議経過情報

衆議院審議時賛成会派:
自由民主党・無所属の会
公明党

衆議院審議時反対会派:
立憲民主党・無所属
日本維新の会・教育無償化を実現する会
日本共産党
国民民主党・無所属クラブ
有志の会
れいわ新選組

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井川夕慈
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