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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#19 子ども・子育て拠出金は、税でも保険料でもございません

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金は保険料、と政府は説明する。
 ところで財源には、税でも保険料でも国債発行でもない負担の仕組みがあるらしい。


日付:2024年4月11日
会議名:衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会厚生労働委員会連合審査会
発言者:立憲民主党 大西健介
内閣府特命担当大臣 加藤鮎子
厚生労働大臣 武見敬三

大西 次に、新たな支援金が、一体、これは税金なのか、それとも社会保険料なのかという問題です。
 この点については三月二十六日に藤岡委員が非常に的確な質問をされておりますけれども、会議録を資料としてお配りしています。藤岡さんは、国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当する全ての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法八十四条に規定する租税に当たる、こういう最高裁判決を引いて、高齢者は支援金を負担しても児童手当を始めとする特別の給付を受けることができないので、支援金は租税に当たるんじゃないか、こういう質問をしました。
 これに対して、会議録をまた見ていただきたいんですが、加藤大臣は、介護保険の地域支援事業のように保険給付以外に保険料を充てている例がほかにもある、また、子育て世帯を支えて少子化対策を図ることで社会保険全体を持続可能なものにしていくことが、ひいては高齢者の方々を含め社会全体の利益にかなう、こういう関係性があるという理由で、支援金を保険料として拠出することには問題がないんだ、こういうふうに答弁をしておられます。
 ただ、確かに、介護保険の地域支援事業は、保険料が在宅医療であったりとか介護連携のための普及事業などに充てられています。ただ、これは、充てられていて、保険料が給付に直接反映しているわけじゃないんですけれども、それでも、介護保険制度の円滑な実施とか、要介護状態になっても地域で自立した日常生活を営むことができるように支援するという一定の関係性というのは、これはぎりぎり私は説明できると思うんです。
 しかし、社会保険制度の持続可能性を高めるためとか、子育て世帯を支えることがひいては高齢者を含む社会全体の利益になるなんて言い出したら、それこそ何でもありですよ。これでは風が吹けばおけ屋がもうかると同じです。
 例えば、住宅政策だって、防衛政策だって、何でも子育て支援にひっかければ、ひいては社会全体のためになるんだ、だから保険料で出してもいいんだ、こういうことになっちゃうんじゃないですか。加藤大臣、いかがですか。
加藤 お答えを申し上げます。
 現行の医療保険制度におきましては、保険料が充てられている費用として、子育てを終えた方は支給の対象とならない出産育児一時金や保険給付に該当しない保健事業があるほか、後期高齢者支援金や出産育児支援金はそれぞれ、それによる直接的な給付のない現役世代、後期高齢者の保険料を充ててございますし、また、介護納付金は、社会連帯等の観点から、医療保険とは異なる制度への拠出に充てているところでありまして、給付と負担の関係は様々、今、現時点でも様々あります。
 御指摘の平成十八年の最高裁判決におきましては、保険料が出産育児一時金や後期高齢者支援金の前身である老人保健拠出金にも充てられていた中で、国民健康保険の保険料全体について反対給付性があるとして、憲法第八十四条の直接的な適用はない、つまり、税ではないと判示されているものと承知をしてございます。
 したがいまして、保険料の反対給付性につきましては、健康保険上の保険給付や各事業等との個別の一対一対応で判断されるものではなく、全体として判断されるものでございます。

大西 さっきも言いましたけれども、ひいては社会全体の利益になるなんて言ったら、何でもありになっちゃうんですよ。
 だから、我々も、絶対広げちゃいけないとは言っていないんですけれども、一対一まで求めていないけれども、やはりぎりぎりの関係性というのは説明できないと、これは余りにも遠過ぎるでしょうと藤岡さんもこの間繰り返し言ったんですけれども、全く、今の答弁、私は納得できないと思うんですけれども、武見大臣、今の加藤大臣の答弁を聞いていただいて、納得できますか。
 私は、安易な保険料の流用には、本来、医療保険を所管する武見大臣が体を張って反対しなきゃいけないんじゃないかと。厚労省内には、支援金を保険料として拠出することに反対がなかったのかどうか、武見大臣、御答弁をお願いします。
武見 社会保険方式の仕組みの中で、医療保険から発足をして、そして高齢化対策として介護保険が導入をされて、そして二〇〇八年には、国民健康保険に余りにも高齢者が集中して持続可能性がなくなると、今度は後期高齢者医療制度が導入をされる。そして、新たに、少子化対策が高齢化対策とともにより重要な位置を占めるようになると、出産一時金に関わる給付が行われる。
 これに加えて、改めて、少子化対策という、まさに高齢化対策と少子化対策というのは表裏一体のものとして考えられ、そして、その少子化対策の中で支援金という方式が加えられることになりました。この枠組み自体に対しては、私は、妥当性の極めて高いものであり、御指摘の反対給付性に関する観点からいっても、給付と負担との関係で、一体として、その整合性はあるものとして考えます。

大西 医療保険を所管している大臣からの答弁としては非常に残念だと思いますね。風が吹けばおけ屋がもうかるですよ、これは。
 今るる大臣が言っていただいた歴史を見ると、結局、国民のアレルギーが強い増税を避けるために、安易に社会保険料の使途の拡大を少しずつ図ってきた、これがこれまでの歴史なんじゃないんですか。それを更に進めるのが今回の支援金で、本来は、税として国民に正面から負担をお願いするのが私は筋だと思います。
 今までも社会保険料の流用はなかったかといえば、今大臣も言われたように、ありました。でも、私、そこには一定の後ろめたさみたいなものがあったと思うんです。ところが、支援金によって、そのたがが外れてしまうんじゃないかということを私は懸念しているんですね。
 例えば、その一つに、次の資料のページを見ていただきたいんですが、子ども・子育て拠出金というのがあります。資料として配っているこの会議録を見ていただきたいんですけれども、国会で、これが税なのか保険なのかというのを問われて、当時の大臣は、税、保険、また手数料のいずれとも性格が異なるものと答弁しているんです。だから、この答弁にはまだ遠慮があったと思うんですよ。
 ところが、加藤大臣は支援金を保険料として拠出すると明言しているので、これは私、一線を越えたんじゃないかと。だから、これからは何でもかんでも保険料からやって、増税するのは嫌だから保険料を使っちゃえ、こういうふうになる、こういう一線を越えたんじゃないかと思うんですけれども、加藤大臣、いかがですか。
加藤 お答えを申し上げます。
 子ども・子育て拠出金は、仕事と子育ての両立を支援し、将来の労働力の確保に資するため、被用者を対象に、厚生年金の徴収システムを活用して、事業主の皆様から拠出をいただいているものでございます。その性格は、特定の事業目的のために、事業主という特定の者のみが費用を拠出する仕組みであり、これは税でも保険料でもございません。
 一方、社会保険制度は、社会連帯の理念を基盤として共に支え合う仕組みでありまして、支援金制度も、こうした連帯によって全世代、全経済主体が子育て世帯を支える仕組みであり、支援金は保険料と整理されるものでございます。
大西 私は、まだ子ども・子育て拠出金の方が関連性が説明できると思うんですよ。それでも保険でも税でも手数料でもないと言っていたのを、今回は堂々と保険料から流用しちゃうというのが、これがちょっと怖いなと思うんですね。


参考資料等

事業主拠出金(子ども・子育て拠出金)

子ども・子育て支援法に基づき、以下の事業に要する費用に充てるため、政府は事業主から拠出金を徴収。
①児童手当の支給(0歳~3歳未満の被用者分)
②地域子ども・子育て支援事業(放課後児童クラブ、延長保育事業、病児保育事業)
③仕事・子育て両立支援事業
④保育の運営費(0~2歳児相当分)

令和5年12月11日 第2回支援金制度等の具体的設計に関する大臣懇話会 参考資料1 より

2018年4月4日 衆議院 内閣委員会

発言者:立憲民主党 稲富修二
国務大臣(少子化対策担当) 松山政司

稲富
 この拠出金ということなんですけれども、社会保障の中では、基本的には、税あるいは社会保険が中心でこれまで議論をされてきたものと思います。あるいは、利用者負担というのももちろんございます。介護保険であれば、当然、その利用者負担と税と保険によって、制度として維持をしているわけでございます。その他の社会保障制度は、すべからく、保険か税か、そして負担かという組合せの中で維持をしているわけでございます。
 その社会保障という枠組みの中でいくと、この事業主拠出金というのは一体どういう性格のものなのか、答弁をお願いします。
松山 お答えいたします。
 事業主拠出金につきましては、子ども・子育て支援法の第六十九条に基づきまして徴収する拠出金でございます。特定の事業目的のために連帯して費用を負担し合う仕組みと位置づけられておりまして、税、保険、また手数料のいずれとも性格が異なるものというふうにされております。
 この事業主拠出金は、児童手当、また、地域子ども・子育て支援事業のうち放課後児童クラブ、病児保育また延長保育、さらには企業主導型保育事業に充当されておりまして、企業等に勤めている方の仕事と子育ての両立を支援し、また、事業主にとって、子供のいる従業員の離職の防止あるいは労働力確保に資するものとして大きな役割を担っているところでございます。

子ども・子育て拠出金という大問題の制度がすでにある

現実の日本の財政制度には、以上のような大問題を抱えた財源が、子育て予算にすでに使われている。健康保険の保険料に上乗せしようとするのは、この延長線上にある発想なのだ。

大問題を抱えた財源とは、「子ども・子育て拠出金」である。これは、会社や事業主から「社会全体で子育て支援にかかる費用を負担する」という名目で、従業員の厚生年金保険料とともに徴収されているものだ。

これは保険料なのかといえば、年金給付の財源になるわけではないので、保険料ではない。では税なのかといえば、税法に基づいて徴税機構が徴収するわけではないので、税でもない。性格がまったくはっきりしない。

拠出金額は、従業員数から計算される。従業員に子どもがいるかどうかは関係ない。独身であっても、厚生年金加入者全員が対象となる。社会保険料は雇用者と従業員が折半で負担しているが、この拠出金は、全額を雇用者が負担する。

なお、国民年金ではこのような負担はない。だから、公平性の点でも大いに問題だ。

東洋経済オンライン 野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」第92回「子育て政策の為に「健康保険料」引き上げる大問題 筋違いのところに負担を求めようとしている」より

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井川夕慈
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