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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#73 政府が支援金の総額や使途を勝手に増加させられるものではない

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金の総額は、2026年度に6000億円、2027年度に8000億円、2028年度に1兆円を目安としている。
 2029年度以降はどうなるのか。


日付:2024年4月16日
会議名:衆議院 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会
発言者:日本維新の会 一谷勇一郎
内閣総理大臣 岸田文雄

一谷 総理は、二〇三〇年に入るまでに少子化傾向の反転ができるかどうかのラストチャンスとおっしゃいます。これは、鼓舞される意味もありますが、反転しなかったらどうなるかという議論がないことを踏まえると、私は大変恐怖感も感じております。
 そこで、総理に御質問をさせていただきたいんですが、一旦、支援金制度が創設されれば、少子化対策の拡充のために支援金の規模が拡充していくものと考えます。少子化対策のためにこども家庭庁の予算の倍増ということもうたわれていますが、総理の今後のこの支援金の規模拡大に対しての考えをお聞きいたします。
岸田 児童手当あるいはこども誰でも通園制度など、支援金が充てられる事業、そしてその充当割合、これは法定化されているため、そもそも政府が支援金の総額や使途を勝手に増加させられるものではないと考えています。
 そして、今般提出された法案において、附則第四十七条において、支援金の導入によって社会保障負担率は上がらないということ、これを具体的にお約束するとともに、附則第四十九条において、被用者保険の支援金の料率の上限を定めるときに附則第四十七条の規定の趣旨を考慮しなければならない、このようにしております。
 こうした現状を考えますと、附則四十七条に違反して支援金の料率を政府が勝手に引き上げる、こうしたことはないと考えています。

一谷 勝手に増やすことはできない、国会審議が必要だということなんですが、先ほどの質疑の中で加速化プランは走りながら考えていくということで、エビデンスが今少ない中、根拠も出てきて、これをやれば少子化反転に効果がかなりあるということが分かれば、これは、歳出削減の中だけで今サービスをつくっていますが、その歳出削減の中だけではサービスを充当できない、サービスが出せないということになってくると、支援金を上げていかないといけないというふうになると思うんですが、それはどうでしょうか。加速化プランを進めながら根拠が出てきて、今後。
岸田 まず、現状においては、先ほど申し上げたように、支援金というのは勝手に上がるものではありません。そして、将来において更なる効果的な対策、政策、これが議論されるということ、これは当然あることだと思いますが、それはそれで、また国会において、それを支えるためにはどうあるべきなのか、こういう議論が行われることになると思います。
 いずれにせよ、今、この法律を審議、お願いしている中にあって、この加速化プラン、三・六兆円、これを実施するためにこの支援金制度を用意したい、そして、それについて説明をさせていただいている、この範囲内で是非まずはこの加速化プランを実行させていただきたい、こういったお願いをさせていただいている次第であります。

一谷 私は、やはり、サービスの積み上げによって予算をつくるべきではないかと思うんですが、今回、三・六兆円という予算が確保できたから、その範囲内だけでサービスをつくっていくということになると、なかなかこれは反転の効果というのは薄らぐのではないかなというふうに思いますので、質問をさせていただきました。
 それでは、次の質問をさせていただきます。
 厚生労働大臣は、医療保険等に応能負担の考え方を導入していくとおっしゃっていますが、支援金についても、今後、同じような、同様の考え方でいくのかということを総理にお伺いをしたいと思います。
岸田 医療保険制度を含め、社会保障制度の持続可能性の観点から、全ての国民がその能力に応じて負担し、支え合う全世代型社会保障の構築は重要であり、御指摘の厚生労働大臣の答弁は、こうした方向性について申し上げたものであると承知をしています。
 支援金は、医療保険料と併せて徴収するものであり、医療保険制度に準じて負担能力に応じた仕組みとしています。このため、医療保険制度において応能負担を徹底する観点から、保険料の賦課徴収を見直す場合には、支援金も同様の取扱いをすることが基本になると考えております。
 いずれにせよ、そういった考え方について、支援金についても取り扱っていきたいと思います。

一谷 今の答弁ですと、医療保険に準じるということでよろしいんでしょうか。やはり、資産課税も考慮するという記載があるんですが、どうしても今の構造ですと若者に負担がかかってくる。考えると資産がやはり少ない若者に負担をなるべくかけないように、この資産課税も今後考慮していくということが必要だと思うんですが、もう一言、総理のお考えをお願いします。
岸田 税との関係についての御質問ですが、昨年末にこども未来戦略でお示ししたとおり、少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担、これは考えておりません。
 そして、若い世代の負担軽減を図るためにも税構造を見直すべきであるという御指摘だと聞きましたが、若い世代の所得を増やしていくことは重要であり、こども未来戦略においても、児童手当の抜本的拡充、出産育児一時金の大幅な引上げ、出産・子育て応援交付金、育児休業給付の充実、こうした長年指摘されながら実現できなかった経済的支援の強化についても、これは歳出面から抜本的に取り組んでいく、このようにしており、若い世代の可処分所得を増やしていく、こういった取組はしっかり進めていきます。
 一方で、税構造全体の話については、これは、公平、中立、簡素の観点から、絶えず、税制はどうあるべきなのか、こういった議論は行っていくべきであり、その際に、若い世代の負担はどうあるべきなのか、こういった議論が行われる。こういった議論は絶えず行われるべきであると考えております。


参考資料等

子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案

(子ども・子育て支援納付金の導入に当たっての経過措置及び留意事項)
第四十七条 政府は、この法律の施行にあわせて、(…)こども未来戦略(…)に基づき、社会保障負担率(…)の上昇の抑制に向けて、全世代型社会保障制度改革(…)の徹底を図るものとし、子ども・子育て支援納付金(…)の導入に当たっては、次項各号に掲げる各年度において、子ども・子育て支援納付金(…)を徴収することにより当該年度の社会保障負担率の上昇に与える影響の程度が、令和五年度から当該各年度まで全世代型社会保障制度改革等(…)及び労働者の報酬の水準の上昇に向けた取組を実施することにより社会保障負担率の低下に与える影響の程度を超えないものとする。

2 政府は、(…)加速化プラン実施施策(…)を実施するために必要となる費用については、全世代型社会保障制度改革等を通じた国及び地方公共団体の歳出の抑制その他歳出の見直し、(…)消費税の収入、(…)拠出金の収入、加速化プラン実施施策に係る社会保険料の収入並びに(…)支援納付金対象費用(…)に係る財源により賄うものとし、次の各号に掲げる各年度における子ども・子育て支援納付金(当該年度の支援納付金公費負担額に相当する部分を除いた部分に限る。)の総額は、それぞれ当該各号に掲げる額を目安とするものとする。
一 令和八年度 おおむね六千億円
二 令和九年度 おおむね八千億円
三 令和十年度 おおむね一兆円

第四十九条
 政府は、新健康保険法第百六十条の二第一項の政令を定めようとするときは、附則第四十七条の規定の趣旨を考慮しなければならない。

新健康保険法第百六十条の二第一項 子ども・子育て支援金率は、各年度において全ての保険者が納付すべき子ども・子育て支援納付金の総額を当該年度における全ての保険者が管掌する被保険者の総報酬額の総額の見込額で除した率を基礎として政令で定める率の範囲内において、保険者が定める。

こども未来戦略

○ 経済を成長させ、国民の所得が向上することで、経済基盤及び財源基盤を確固たるものとするとともに、歳出改革等による公費節減と社会保険負担軽減の効果を活用することによって、実質的な負担が生じることなく、少子化対策を進める。少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない。

(財源の基本骨格)
① 財源については、国民的な理解が重要である。既定予算の最大限の活用等を行うほか、2028年度までに徹底した歳出改革等を行い、それによって得られる公費節減の効果及び社会保険負担軽減の効果を活用する。歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、実質的な負担が生じないこととする。
 「加速化プラン」の実施が完了する2028年度までに、②の既定予算の最大限の活用等、③の歳出改革による公費節減及び支援金制度の構築により、3.6兆円程度の安定財源を確保する。
 なお、消費税などこども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした増税は行わない。


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井川夕慈
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