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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#20 例えば経済成長戦略は、医療保険制度の存立基盤にとって重要な受益に私はなると思いますよ

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

 支援金は保険料であるが、支援金を充てて行う事業は保険給付ではない。
 保険給付以外の事業に保険料を充てるにあたっては、その事業が「被保険者にとって有用かどうかということも当然重要」と政府は言う。
 政府は「少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となる」から、少子化対策事業は医療保険の被保険者にとって有用である、と言いたいようだ。
 しかし、その程度の間接的かつ抽象的な有用さで足りるとすれば、保険料を充てて行い得る事業の範囲は限りなく拡がってしまうのではないか。
 逆に言えば、国益に資する事業の財源はすべて社会保険料、という構成が可能になってしまうのではないか。


日付:2024年4月3日
会議名:衆議院 厚生労働委員会
発言者:日本維新の会 足立康史
厚生労働大臣 武見敬三
厚生労働省保険局長 伊原和人

足立 少子化対策に医療保険料、医療保険の枠組みで上乗せしたものを少子化対策に使う、それは、元々軒先を貸しているだけなんだということであれば、それはそれでもう諦めもついたんですね、我々。ところが、昨日の本会議で、これまでも政府もおっしゃっていることだと思いますが、昨日、総理はこうおっしゃったんですね。少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となる。まさに受益と負担との関係で、これは受益なんだとはっきりおっしゃった。受益と拠出との対応関係が不明確ではないかという一谷さんの質問に対して、それは当たらないとおっしゃったわけです。
 だから、総理は、軒先じゃないんだ、これはまさに医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となるとまで、昨日は総理はおっしゃった。局長、そうであれば、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤にプラスになるものは全部、社会保険料を使っていいということになるじゃないですか。非常に難しい質問だと思うんですが、一応、ちょっと一言いただけますか。
伊原 まず、医療保険制度については、先ほど引用されたとおりの答弁にあるように、子供たちが生まれ育っていくこと自体が医療保険制度の持続可能性に貢献するというふうに考えておりまして、そういう意味において、医療保険制度から拠出する理由はあると考えてございます。
 多分、先生の方から、他の制度もあるんじゃないかということですけれども、もちろん、年金制度を始めとして、次世代が生まれてくればその持続可能性に資すると思いますが、片方、年金制度の場合は被保険者は二十歳から六十歳までと限られておりますし、介護保険制度についても四十歳以上と対象者が限られておりまして、やはり、そういう意味で、どういう制度で受益というものを評価し、御負担をいただいていくかというのは、一つの判断としてあるんじゃないかと思います。

足立 ほかの社会保険もということももちろんあるんですけれども、私が一義的に申し上げたのは、社会保険料を使う歳出の先が少子化対策ということに今回拡張したわけですけれども、少子化対策が受益と負担の関係で受益に当たるから適用してもいいんだというのが今回の議論なんですけれども、そうであれば、少子化対策だけじゃなくて、例えば経済産業省がやっている様々な、半導体だって、半導体で国が豊かになって、賃金が上がって、それが医療保険の受益になるんだと言えないこともないわけですね。
 だから、今までの議論、例えば今日も議論があった出産育児支援金あるいは介護保険、これはまだ、出産であり、あるいは、医療、介護というのは一体ですから、国民から見たときにまだ分かる。でも、少子化対策までいくんだったら、それは少子化対策でとどまらずに、医療とか、要は、日本の経済社会、日本の繁栄に関わる出口は全て同じことになるじゃないかというのが今日の議論なんですね。
 これはもう伊原保険局長ののりを越えていて、多分、武見大臣も、いや、それは俺が決めたんじゃないということですが、一応、閣内なので、大臣、何か御見識はありますか。長くなくていいですよ、端的に。
武見 短めにお答え申し上げますと、やはり、社会保険という仕組みの中で、医療保険というものから始まって、それが確実に介護、後期高齢者と、それぞれまた役割が広がる、この過程は高齢者対策が中心になって広がってきたわけでありますけれども、しかし同時に、出産一時金を通じた支援という形を通じて少子化対策にもこの仕組みを使うということが始まって、その両者の組合せの中で社会保険の仕組みというものが機能する、こういう理解で私は頭の中では整理しております。
足立 今日はこれぐらいにしておきますが、やはり医療保険なのでここでやらせていただいています。今日午後また地こデジ特委がありますので、そこに出張しまして、少子化大臣、こども大臣、加藤大臣にも同じことを聞いていきたいと思いますが。
 ちょっと、局長、覚えておいていただきたいのは、私が今日強調しているのは受益ということです。総理は、本会議場で、これは医療保険制度の存立基盤に重要な受益なんだとおっしゃった、少子化対策は。それは、だから、少子化対策じゃない例えば経済成長戦略は、医療保険制度の存立基盤にとって重要な受益に私はなると思いますよ。では、なぜ少子化対策は対象で、経済成長政策は対象ではないのか。そこにロジックが本当に引けるんですか、線は引けるんですかということが今日議論があったということなので、これはまた継続してやります。


参考資料等

2024年4月2日 衆議院 本会議

発言者:日本維新の会 一谷勇一郎
内閣総理大臣 岸田文雄

一谷
 今回創設される子ども・子育て支援金は社会保険料です。言うまでもなく、社会保険料は所得をベースとしているため、現役世代に重くのしかかります。さらに、年収約一千二百万を境に負担は頭打ちとなり、中間層の負担が最も重くなる負担構造を有しています。受益と負担と対応関係が不明瞭な少子化対策にまで保険料を適用することは、保険料の目的外使用であり、かつ少子化対策にも反すると考えますが、いかがでしょうか。総理の答弁を求めます。
 政府は、全世代型社会保障を目指す改革の道筋、改革工程において、能力に応じた負担構造、いわゆる応能負担について言及し、預貯金口座へのマイナンバー付番の状況を検討すると明記しています。受益と負担と対応関係が不明確な少子化対策にまで社会保険料を活用するということであれば、少なくとも応能負担の仕組みを構築してからにすべきではないか、総理の見解を求めます。(…)
岸田 (…)子ども・子育て支援金を社会保険料と位置づけることについてお尋ねがありました。
 少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となるものであり、支援金が保険料の目的外使用との指摘は当たりません。
 支援金の拠出に当たっては、医療保険料の賦課方法に準じたものとしており、一定の上限を設定することには合理性があると考えておりますが、基本的には拠出能力に応じた制度設計となっています。その上で、支援金は、抜本的に拡充する児童手当等の給付に充てられ、子供、子育て世帯にとって大きな給付の充実につながるものであることから、少子化対策に反するとの指摘は当たらないと考えています。
 子ども・子育て支援金制度と社会保障の改革工程との関係についてお尋ねがありました。
 先ほどお答えしたとおり、少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となるものであり、支援金について、受益と拠出との対応関係が不明確という御指摘は当たりません。
 また、御指摘の社会保険における応能負担の仕組みについては、昨年末に閣議決定した改革工程においては、社会保険料における金融資産等の取扱いを含め、幅広いメニューが列挙されておりますが、これらは、一義的には、社会保障の持続可能性を高め、全世代型社会保障を構築する観点から盛り込まれたものであり、議論を続けていかなければなりません。これらのメニューの中から、実際の取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることがないよう、見直しに当たって生じる影響を考慮しながら、丁寧に検討してまいります。

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井川夕慈
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