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子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#24 社会保険料については、各制度の目的に沿った形で、それぞれの制度において徴収されていく

(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)

「少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となる」と政府は言う。
 しかし、「少子化、人口減少に歯止めをかけること」は、「医療保険制度
だけでなく、「年金保険制度」や「介護保険制度」の「持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となる」とも言えないだろうか。
 とすれば、年金保険制度や介護保険制度においても、今回の支援金に相当するような保険料を集め、少子化対策事業を行うことが可能ということか。


日付:2024年2月27日
会議名:衆議院 予算委員会第五分科会
発言者:立憲民主党 柚木道義
厚生労働大臣 武見敬三

柚木 ちょうど今振り返ったら加藤前厚労大臣もいらっしゃるから、ちょっとお尋ねしますけれども、通告もしているから。社会保険料、特に健康保険を子育て支援金に回すことについて、当時、加藤厚生労働大臣はこうおっしゃっています。医療や介護、年金など、既存の社会保険料を財源とすることについて、医療は医療に使う、年金は年金に使う、それぞれ目的と負担の関係で制度をつくっていて、例えば、医療に使うお金、まさに今回ですね、これを子供に持っていくというのは、正直余地はないと明確に否定されているんですよ。
 この考え方は、厚生労働省として、じゃ、変えたんですか、いかがですか。
武見 現在、私、厚生労働大臣として仕事をさせていただいておりますけれども、その立場からの御説明というものは、健康保険法の改正案の中で、子供、子育て支援金に関わる料率は、医療保険に関わる料率とは区分をしております。本来医療に充てるものとして徴収している健康保険料を子供、子育て支援金に充てるものではないという、まず基本的な認識を申し上げておきたいと思います。
 その上で、先生御存じのように、健康保険制度の中では、疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する給付を中心としつつも、国民の生活の安定と福祉の向上を目的として、予防的かつ広範な事業も含んでおりまして、後期高齢者支援金や出産一時支援金など、世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれております。
 このため、将来の健康保険制度の担い手の育成を支援をして、健康保険制度の持続可能性を確保するという観点から、今般、子供、子育て支援金に関わる料率の設定をして、その支援金の徴収は制度の目的の範囲の中であるというふうに私どもは考えております。
 今後とも、社会保険料については、各社会保険制度の目的に沿った形で、それぞれ制度において徴収されるものでございまして、この考え方にのっとって、引き続き適切に対応していきたいと思います。

柚木 今、驚くべき答弁ですよ、厚生労働大臣。そんなことを言っていたら、何でも流用できちゃうじゃないですか。今のロジックでいったら、年金保険料だって将来の年金の払い手を確保するためにとか、雇用保険だって言えちゃいますよ、全部。今、後ろで加藤前厚生労働大臣は、変わっていないとおっしゃっていましたよ、厚生労働省の方針は。今のようなロジックでやるんだったら、全部流用できちゃいますよ。
 今後、同じような形で、健康保険のみならず、年金保険、介護保険、雇用保険、こういった保険も今のような形で、それぞれ、年金の担い手、雇用の担い手、介護のまさに支え手、こういった方々を確保するためには流用することはあり得るんですか。
武見 私は今、今後のことを申しているわけではなくて、この支援金というものの性格について申し上げているわけであります。
 したがって、今後のことについては、将来どういう形のものが改めて検討されるか、今ここの場で申し上げることはできないと思います。

柚木 否定されないんですね。非常に私は驚きますよ。
 武見大臣のこの間の論文、レポート、国会図書館から取り寄せていろいろ拝見しました。大変御所見を有していらっしゃることは重々承知していますよ。だからこそ驚いているんですよ、大臣。健康保険についてもいろいろなレポートを書かれているじゃないですか、今後の持続可能性、負担の公平性。どこに負担の公平性があるんですか、今のようなロジックで。十円、二十円上げるのも大議論しているじゃないですか、審議会で。
 もう一回だけ聞きますよ。今後、今否定しませんでしたけれども、健康保険料はもとより、年金保険、介護保険、雇用保険を子育て支援金のような形で流用、転用する可能性はあるんですか、否定しないんですか。
武見 先ほども申し上げたとおりでありまして、社会保険料については、今後とも、各社会保険制度の目的に沿った形で、それぞれの制度において徴収されていくというふうに考えております。この考え方にのっとって、引き続き適切に対応していきたいと思います。
柚木 私は本当に、今後の厚生労働行政、大変不安ですね。解釈改憲じゃないけれども、それぞれの保険の趣旨を、目的に沿ったといって、これは何でもやれちゃいますよ。
 病気になったときのために保険を掛けている。全額自己負担は大変ですからね、一定の負担で必要な医療が、全国どこでもフリーアクセスで一割、二割、三割負担で受けられるように。これをどんどん子育て支援金に入れて、その分保険料が上がっていく、そんな流用を今後もその他の保険も含めて許していく道を開くような今の答弁、私は到底認められませんが、ちょっと時間がないので、これはまた厚労委員会でもやります。


参考資料等

健康保険法

(目的)
第一条 この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害(…)以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

国民健康保険法

(この法律の目的)
第一条 この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。
(国民健康保険)
第二条 国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする。

厚生年金保険法

(この法律の目的)
第一条 この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

国民年金法

(国民年金制度の目的)
第一条 国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。
(国民年金の給付)
第二条 国民年金は、前条の目的を達成するため、国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行うものとする。

介護保険法

(目的)
第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

雇用保険法

(目的)
第一条 雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合及び労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。

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井川夕慈
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