子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#24 社会保険料については、各制度の目的に沿った形で、それぞれの制度において徴収されていく
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
「少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となる」と政府は言う。
しかし、「少子化、人口減少に歯止めをかけること」は、「医療保険制度
だけでなく、「年金保険制度」や「介護保険制度」の「持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となる」とも言えないだろうか。
とすれば、年金保険制度や介護保険制度においても、今回の支援金に相当するような保険料を集め、少子化対策事業を行うことが可能ということか。
柚木 ちょうど今振り返ったら加藤前厚労大臣もいらっしゃるから、ちょっとお尋ねしますけれども、通告もしているから。社会保険料、特に健康保険を子育て支援金に回すことについて、当時、加藤厚生労働大臣はこうおっしゃっています。医療や介護、年金など、既存の社会保険料を財源とすることについて、医療は医療に使う、年金は年金に使う、それぞれ目的と負担の関係で制度をつくっていて、例えば、医療に使うお金、まさに今回ですね、これを子供に持っていくというのは、正直余地はないと明確に否定されているんですよ。
この考え方は、厚生労働省として、じゃ、変えたんですか、いかがですか。
武見 現在、私、厚生労働大臣として仕事をさせていただいておりますけれども、その立場からの御説明というものは、健康保険法の改正案の中で、子供、子育て支援金に関わる料率は、医療保険に関わる料率とは区分をしております。本来医療に充てるものとして徴収している健康保険料を子供、子育て支援金に充てるものではないという、まず基本的な認識を申し上げておきたいと思います。
その上で、先生御存じのように、健康保険制度の中では、疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する給付を中心としつつも、国民の生活の安定と福祉の向上を目的として、予防的かつ広範な事業も含んでおりまして、後期高齢者支援金や出産一時支援金など、世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれております。
このため、将来の健康保険制度の担い手の育成を支援をして、健康保険制度の持続可能性を確保するという観点から、今般、子供、子育て支援金に関わる料率の設定をして、その支援金の徴収は制度の目的の範囲の中であるというふうに私どもは考えております。
今後とも、社会保険料については、各社会保険制度の目的に沿った形で、それぞれ制度において徴収されるものでございまして、この考え方にのっとって、引き続き適切に対応していきたいと思います。
柚木 今、驚くべき答弁ですよ、厚生労働大臣。そんなことを言っていたら、何でも流用できちゃうじゃないですか。今のロジックでいったら、年金保険料だって将来の年金の払い手を確保するためにとか、雇用保険だって言えちゃいますよ、全部。今、後ろで加藤前厚生労働大臣は、変わっていないとおっしゃっていましたよ、厚生労働省の方針は。今のようなロジックでやるんだったら、全部流用できちゃいますよ。
今後、同じような形で、健康保険のみならず、年金保険、介護保険、雇用保険、こういった保険も今のような形で、それぞれ、年金の担い手、雇用の担い手、介護のまさに支え手、こういった方々を確保するためには流用することはあり得るんですか。
武見 私は今、今後のことを申しているわけではなくて、この支援金というものの性格について申し上げているわけであります。
したがって、今後のことについては、将来どういう形のものが改めて検討されるか、今ここの場で申し上げることはできないと思います。
柚木 否定されないんですね。非常に私は驚きますよ。
武見大臣のこの間の論文、レポート、国会図書館から取り寄せていろいろ拝見しました。大変御所見を有していらっしゃることは重々承知していますよ。だからこそ驚いているんですよ、大臣。健康保険についてもいろいろなレポートを書かれているじゃないですか、今後の持続可能性、負担の公平性。どこに負担の公平性があるんですか、今のようなロジックで。十円、二十円上げるのも大議論しているじゃないですか、審議会で。
もう一回だけ聞きますよ。今後、今否定しませんでしたけれども、健康保険料はもとより、年金保険、介護保険、雇用保険を子育て支援金のような形で流用、転用する可能性はあるんですか、否定しないんですか。
武見 先ほども申し上げたとおりでありまして、社会保険料については、今後とも、各社会保険制度の目的に沿った形で、それぞれの制度において徴収されていくというふうに考えております。この考え方にのっとって、引き続き適切に対応していきたいと思います。
柚木 私は本当に、今後の厚生労働行政、大変不安ですね。解釈改憲じゃないけれども、それぞれの保険の趣旨を、目的に沿ったといって、これは何でもやれちゃいますよ。
病気になったときのために保険を掛けている。全額自己負担は大変ですからね、一定の負担で必要な医療が、全国どこでもフリーアクセスで一割、二割、三割負担で受けられるように。これをどんどん子育て支援金に入れて、その分保険料が上がっていく、そんな流用を今後もその他の保険も含めて許していく道を開くような今の答弁、私は到底認められませんが、ちょっと時間がないので、これはまた厚労委員会でもやります。
参考資料等
健康保険法
国民健康保険法
厚生年金保険法
国民年金法
介護保険法
雇用保険法