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選べなかった色
小学生のころ
色を選ぶ場面が
何度かあった
2年生の時の絵の具セットの色
3年生の時の習字セットの色
4年生の時の自転車の色
この3つが特に印象に残っているのは
どれも好きな色が選べなかったからだ
絵の具セットは青が欲しかった
でも、母は色の欄に希望の色を書くのを忘れたので
いかにも女の子な名前の私のところには
確認もなく
当然のようにピンクが手渡された
それが配られた日が転校前の最後の登校日だったユイちゃんは
女の子だけどちゃんと青色の絵の具セットを持って帰ることができていて
すごくすごく羨ましかったのを
ユイちゃんの嬉しそうな笑顔と共に
いまでも鮮明に覚えている
次は習字セット
これは黒か赤だった
私は赤にして欲しいと母に言ったが
私の手元に来たのは今度は黒だった
絵の具セットの時はピンクだったのに
母に聞くと
黒にしておけば弟とふたりで使えるから
というそっけない答えだった
4歳離れた弟が習字セットを必要とする頃
私はもう小学校を卒業している
クラスで黒の習字セットの女の子は私だけ
みんなにお兄ちゃんのお下がりだね
といわれた
世間では兄弟の上の子が新しいものを買ってもらえて
下の子はお下がりばかり
なんていう不満が多かったけれど
兄弟の上の子の私の服はいつも従姉妹か母の知り合いの子供のお下がりで
買うものは下の弟のための色だった
そして最後は自転車
ピンクのキラキラした自転車
どうしても欲しくて
選んだが
「え、ピンク?」
「ピンクじゃ弟が使えないから緑にしなさい」
母はそう言って
緑の自転車を車に積み込んだ
結局弟はマウンテンバイクを買ってもらい
緑の自転車には私しか乗らなかった
これ以外にも
弟のためにと選んだものは
数えきれないほどあったけれど
私のためのものは
ほとんどなかった
こんな思い出だらけなのに
私がいまも
弟と仲がいいのは
弟自身が私にずっと良くしてくれているからだ
誕生日プレゼントも欠かさずくれる
プレゼント選びのセンスは抜群で
要らないと思うものも
使わなかったものもない
いつも感謝している
母親は男の子の方がかわいい
それは本当なのだなと
私はずっと感じながら生きてきた
女同士は
結局親子でも
上手くいかないものなのかもしれない
これを読む誰かに
娘がいたとしたら
彼女に
色々なものを
選ばせてあげて欲しい
例え少し
家計が厳しかったとしても
選べなかったことは
彼女の心に
永遠に残り続けるのだから