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SF創作講座2023非公式梗概「僕の彼女がケネディ殺した」

裏SF創作講座への投稿を目的とした、SF創作講座の非公式梗概です。
形式や文字数上限はSF創作講座2023に倣っています。

ゲンロンSF創作講座2023
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裏SF創作講座


第7回テーマ:
「ワンシチュエーションで書いてください」

梗概

「僕の彼女がケネディ殺した」

 高校生になった「僕」に初めてできた彼女。一つ下の後輩の鈴村愛良は不思議な印象を抱かせる女性で、可愛げの中に謎めいた魅力があった。

 付き合い始めて三ヶ月後、僕は愛良の家(マンションの3階)に行くことになる。家に上がった直後、愛良は買い物に出てしまう。

 「戻ってくるまで家で待つこと」と言われ、僕は彼女の部屋で待つことにした。ふとクローゼットの扉が開きかけているのに気付く。扉を閉め直そうとクローゼットに手を掛けると、奥の壁に違和感を覚えた。罪悪感を感じながらも開け放つ。スナイパーライフルと拳銃が壁には掛かっていた。

 驚いた弾みで身体が本棚に当たる。落ちたファイルの一つには暗殺事件当日のケネディの行動が集積されていた。読んでいくと「どうすればケネディを殺せるか」を想定するようなメモまで残されている。

 精巧な作りに「彼女がケネディを殺したのか?」と一瞬疑いまでする僕。化かされたような状況を有耶無耶にしようと部屋の各所を調べ始める。するとケネディ暗殺の証拠らしきものがどんどん出る。パレード進行の想定速度や罪を擦り付けるオズワルドへの工作まで。本物ではと思いさえする僕だったが、そもそも生きる時代が違うだろうと笑おうとする。

 頭を冷やそうとキッチンへ行く。冷蔵庫から飲み物を取ろうとしたとき、ケーキ箱の後ろに紙の入った瓶を見つける。これまでの積み重なりから僕は瓶を手に取り、蓋を開けた。入っていたのは英語で書かれた指令書のような文書。内容は分からないが、日付から現代の組織のようだ。同時に日本語のメモも見つかる。書かれていたのは時間跳躍の方法。その時代を強く意識して特定の時間帯に高所から落下する。

 眉唾物だがこれが本当なら、と思ったところで携帯が鳴る。「部屋で変なことしてない?」と愛良から聞かれ、思い切って彼女に真実を尋ねた。すると彼女は大笑い。ドッキリだったらしいと思った瞬間、電話の向こうで銃声が響く。彼女は声色を変えない。同時に家の玄関を誰かが激しく叩く。「追手が来た」と言う彼女は僕に「逃げて」と告げる。

 騒ぎの中で愛良は真実めいたものを話し始める。自分はある組織に属していて、歴史を飛んでケネディを暗殺する任務を請け負った。任務には成功したが、計画にないオズワルドの排除を見て自分も排除されると悟る。人を殺したのでそれは受け入れるつもりだったが、せめて普通の人間らしく恋がしたいと元の出発地点の時間から数カ月前に跳躍で戻った。

 彼女からの告白を、これもドッキリなのだろうと僕は疑う。しかし銃声の後に彼女は倒れ「もう少し普通の恋がしたかった」と言って息絶える。玄関のノックは激しくなる。もしもこれが本当だとしたら。だとして、自分に何ができるのか。考えた末、僕は時間跳躍で追手を排除し、今日をやり直すことを決意する。嘘なら大怪我だが、そのときは素直に怒ろう。

 彼女の拳銃を握り、僕は窓から過去へ飛び出した。

(1199字)

アピール

アイデアブレスト会で一番印象に残ったアイデアをこの形で仕上げました。
彼女の部屋という甘酸っぱい状況を突拍子もない単語と組み合わせてみました。歴史改変ミステリというよりは「お前が殺したのか……?」という状況のありえなさを真実味を持って語り、そのズレから笑いを誘いたいです。

最終的には彼女を信じるか信じないのか、その選択を主人公に迫る話に変化していきます。彼女への愛情から荒唐無稽な話を信用してしまう、人間の憎めない部分を描けたらなと思います。愛良は守りたくなるキャラクターとして演出できたらいいですね。本当だった場合、何故バレるように情報を置いたかというと「自分の素性を知ってほしかった」とする予定です。
ワンシチュエーションという制約上、できれば部屋を出る=物語の完結でありたいとは思っています。嘘みたいな本当の話だったかのか、はたまたただの嘘だったのか。ここを揺さ振れるような作劇を目指していきたい。

(400字)

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