食卓塩 (イチコジンカン #1)
「食卓塩」
ぼくの居場所はここだ。
と言わんばかりの名前を手に取りながら、
横目で背負わされた使命感が
何より大変そうだと
心中でお察ししながら、
頭を下にして上下に振る。
トマトハシオデクウノガウマイワ
フラッシュで脳内に
表示されては消えていく。
ここにいろと決められてるようで
束縛感に限りなく近い使命感のもとに
あり続けられていることに感謝して
惰性で生きているのが食卓塩だ。
その環境に生かされているのか。
玄関に居ようものなら
疎外感に殺されてしまうだろう。
外履きに何て言われるだろうか、
一人で外を歩けないぐらいの辱めや罵声を
浴びせられるだろう。
虫コナーズ玄関用にさえ怒られる。
ベランダに居ようものなら、
干されている洗濯物に
洗濯物から服に
やっと変わるタイミングで
邪魔すんな。
とか言われるんだろう。
虫コナーズベランダ用にさえ
白い目で見られる。
押入れに隠れても、
押入れにいる奴らが
お前に押入られるなんて
思わんかったわ
なんてみんなで笑うだろう。
虫コナーズ押入れ用にも笑われる
一緒に。
群れた顔しながら。
食卓塩は食卓に置いてあげなきゃいけない。
現代においての食卓に置いてあげよう。
食卓とはあなたがご飯を食べるところ。
一人暮らしの狭い部屋のテーブルの上?
コンビニのイートイン?
オフィスの自分のデスク?
休憩所?非常階段?トイレ?
近くの公園のベンチ?
誰とも会わない公共施設?
君はそこにいればいい。
僕はどこにいればいい?
ワンモアタイム アリトモ