【小説】田舎暮らし案内人奮闘記 第11話
こんにちは、移住専門FP「移住プランナー」の仲西といいます。
ここでは、これまでの17年間の活動、2500組以上の移住相談対応から
皆さんに役立つ情報を書いています。
今回は、これまで受けた移住相談を小説風に書いてみました。
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第11話 0円物件を提供したオーナーの悲劇
私の朝の日課。
5㎞のジョギングとシャワー、梅干しと卵かけご飯、そしてスマホで為替相場をチェック。
やがて、遠くから小学校のベルが聞こえてくると、私も子供たちと同じ様に、書斎に向かいデスクに向き合う。
そして、教科書の代わりに、PCを開けて電源を入れる。
まずは、メールチェックが仕事のスタート。
本日も受信トレイには50件の未読メッセージ。
移住に夢見る人からの熱いメッセージが届いている。
相談メールをフォルダー移動し、着信の古いものから内容を確認。
子供のようにワクワクした気分でメールを開く。
本日の相談
売却先を移住者に限定していることから、市の「空き家バンク」の利用が適切なのか、確認が必要であった。。
そして、何よりも売買金額の0円が気になる。
「タダほど怖いものはない」とよく言われるが、0円物件は問題がいくつかあったからだ。
私は佐野様にメールを返すと同時に、市の空き家バンク担当者とも連絡を取った。
結果、「移住者だけが購入可能」という条件付き物件として、空き家バンクに掲載するということで話がついた。
ここで言う移住者は、市外の居住者ということも確認をし、佐野氏にも了解を取った。
翌日、市の空き家バンク担当者にも同行をいただき、佐野氏の案内で物件の内覧を実施した。
外壁は傷みがひどく剝がれ落ちてはいたが、まだまだ居住可能な物件であることが確認された。
定期的に管理されていることも確認できた。
佐野氏の市に対する熱い思いを受け止め、良い移住者に譲渡することをお約束した。
佐野氏からも「譲渡する相手は、お会いしてから決めたい」と申し出があり、「是非内覧の時には立ち合いたい」と希望された。
「もちろん、譲渡先の決定権は佐野氏にありますので、どうぞ宜しくお願いします」と、私はお答えをした。
3日後、佐野氏のお家が「空き家バンク」に掲載された。
すると、早速、私の所にも購入希望者から連絡がきた。
私は佐野氏にさっそく電話をした。
翌日の午後、佐野さんは自家用車を運転し、現地に来られた。
佐野の家からだと、ちょうど片道100KMの距離であった。
2時間少々の距離である。
私は「遠方の所をお手数をお掛けします」とお声をかけた。
佐野さんは、購入希望者に対し、とても熱心にお家を案内された。
そして、購入希望者からは「ぜひ譲ってほしい」と申し出があったが、その場での即答は避けて、お帰りいただいた。
その後、佐野さんと別れた私は、事務所に戻り何気なくメールを確認すると、佐野さんの物件の購入希望者のメールが20件も来ていた。
同時に、市の空き家バンク担当者からも、「佐野さんの物件の購入者からのメールが10件近く来ている」と連絡があった。
「これは大変なことになった」と、私は思った。
取り急ぎ、メールを整理し、記載されている連絡先に一件ずつ電話を掛け始めた。
こうなれば、メールでやり取りをするより、電話の方が早いからだ。
とにかく、佐野様にも慌てて連絡を取り対策を練った。
その結果、一週間以内に内覧に来られない方には、事情を説明し御断りをすることとした。
私は電話で希望する内覧日をお聞きし、スケジュールをたてていく。
結果、毎日2~3件の内覧でスケジュールが埋まっていった。
そして何よりも、佐野さんは1週間、毎日片道100㎞のドライブをすることとなった。
一週間後、さすがに疲れ果てた佐野氏がいた。
そして翌週、移住者の選定にも大変苦労をすることになった。
佐野さんの市への熱い思いから、自宅の無償提供をすることになったが・・・
無事に購入者が決定した後に、私は佐野さんとお互いに「お疲れ様」と言葉を掛け合った。
一期一会
佐野様と、佐野様の家の譲渡を受けて移住された方の幸せをお祈りして・・・
(終わり)