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【小説】田舎暮らし案内人奮闘記 第17話

こんにちは、移住専門FP「移住プランナー」の仲西といいます。
ここでは、これまでの17年間の活動、2500組以上の移住相談対応から
皆さんに役立つ情報を書いています。
今回は、これまで受けた移住相談を小説風に書いてみました。
気に入った方は、フォローをしていただけると嬉しいです。


第17話 共有名義でトラブル!裁判沙汰?


私の朝の日課。

5㎞のジョギングとシャワー、梅干しと卵かけご飯、そしてスマホで為替相場をチェック。
やがて、遠くから小学校のベルが聞こえてくると、私も子供たちと同じ様に、書斎に向かいデスクに向き合う。
そして、教科書の代わりに、PCを開けて電源を入れる。

まずは、メールチェックが仕事のスタート。
本日も受信トレイには50件の未読メッセージ。
移住に夢見る人からの熱いメッセージが届いている。

相談メールをフォルダー移動し、着信の古いものから内容を確認。
子供のようにワクワクした気分でメールを開く。

本日の相談

○○市に住む近本といいます。
年齢は70歳です。
そちらの町の「空き家バンク」に掲載されている、物件番号〇番を内覧したいのですが、サポートを戴けますか。

「空き家バンク」〇番の物件。
宅地に戸建て、畑地が300坪ついた物件であった。

早速、私は所有者に確認を取り、内覧の段取りを済ませた。

当日、内覧に訪れた近本さん。
少し調子のよさそうな雰囲気を感じた。
また、話しをしていると、自我が強そうなところも気になった。

所有者と面談。
私は少しの不安があり、所有者と相談をしたが、近本さんの押しの強さに負けて、所有者も売買が決めた。

その数日後。所有者から連絡が入る。

「売買の媒介と登記変更を依頼していた司法書士から、畑地の共有名義の相手が見つからない」と連絡が入った。

私も70年近く住んでいるが、共有名義の相手に会ったこともない。
恐らく、先々代ぐらいの小作人だろうとのこと。
戸籍等を追跡したが、身元が解らないそうである。
仕方がないので、このまま共有名義のまま、私の共有分だけを売買したいのだがどうだろうか。

こうした事例は、私は何度か経験している。
残念ながら、今の法律では対処が難しい。
現に、100年近く、共有名義の一方の所有者もしくは、その相続人も現れていない。

私はそのことを購入予定の近本氏に連絡をした。
すると、近本氏は激怒し、賠償問題を取り上げた。

共有名義では納得がいなかないようである。

初対面の時に感じた、近本氏に対する違和感が思い出された。

数日後、所有者から助けを求める連絡が入った。
どうやら購入者から、直接、所有者の元に、金銭の要求や、裁判などの脅迫があるとのこと。

私は、所有者に対し、弁護士への相談を進めた。
また、売買契約の締結前であることから、売買の取り消しを進めた。

私の立場としても、すぐに裁判を持ち出すなど、自己主張の強い人が地域に来ることは避けたいからだ。

また、近本氏にも連絡を取り、説得を試みた。
そして、直接、所有者に連絡をせずに、私を通すように伝えた。

しかし、その後も、近本氏の執拗な行動は変わらなかった。
結局、所有者は早い解決を望み、賠償金の支払いに応じることにした。
その旨を、売買契約書に記載することで話は落ち着いた。

明治→大正→昭和そして平成、令和と時代の移り解りとともに、土地の所有権の不透明なものが、田舎では特に多くみられる。
まして、未登記の建物もたくさんある。
そのようななかで、空き家の売買ではトラブルも多いと言える。

本来は、こうしたトラブルも、常識を持って対応できれば、トラブルは避けられるのだけれども。



一期一会

所有者の方にお疲れ様とお伝えして・・・
そして、購入者の方が、これから地域でトラブルを起こさないことを祈って・・・

(終わり)


#創作大賞2024 #お仕事小説部門


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移住プランナー| 田舎暮らし|プロ|
移住専門FP「移住プランナー」として活動をしています。これまで18年間2500組以上の移住相談に対応をしてきました。ここでは、私の経験からお役に立てる情報を日常的に綴っていきます。「移住」という夢の実現にお役に立てればうれしいです。大阪出身、北海道と鹿児島の3拠点生活中。