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Power over、Power with、そして、Power asへ

書籍『ヒューマノクラシー』の章立てに沿って、官僚主義的なエピソードや、本の記載内容の背景などを紹介しています。

第3章 官僚主義のコストを計算する 人としてなすべきこと P.123
社会の進化の歴史を通じて、変革への最も強力な論拠となってきたのは、「すべての人は生まれ持った資質を伸ばし、活用し、そこから恩恵を得る最大限のチャンスを持つに値する」という主張であり、また、「その実現を妨げる、人間が作った障害物は不当なものである」という主張だ。だからこそ、私たちは官僚主義に立ち向かう。なぜなら、人はもっとよいものに値するからだ。
 だから、できるだけデータを集めよう。あなたの組織から官僚主義を取り除くための証拠を集めよう。しかし、官僚主義の要塞を長い間守ってきた無関心や利己主義や恐れを突破するうえでは、誰もが知り、心に響く「人としてなすべきこと」が最も強い力を持つと心得ておこう。

私は、上の文の「無関心や利己主義や恐れを突破する」という一文を目にしたとき、クリスティアーネ・ソイス・シェッラーの、『愛、パワー&パーパス : 人と組織の進化力を紡ぐ新たな物語』の中で出てくる「Power as」のことを思い出してしまいました。

よくNVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)や、ティール組織の文脈において、「Power over」や「Power with」という言葉が使われます。「Power over」というのはまさにこの官僚的な状態、権力がヒエラルキーの上方で固定化されており、組織全体はその力によって制圧された状態を指します。「Power with」というのは、権力が全体に分散し、メンバー同士の関係性やパーパスによって駆動する、いわゆる「ティール」の状態を指します。

著者のクリスティアーネは、「Power with」の状態を、必ずしも最良の状態とは見ていません。「Power over」に対して、つまり、再度、力を取り戻そうとするトップの権力に対してはあまりに無力に見えるからです。そして、クリスティアーネは愛とパワーを源とした、生命本来の姿としての「Power as」を提唱しました。その人本人がパワーそのものとなり、駆動の源となった状態を指します。それこそが、「無関心や利己主義や恐れを突破する」力であり、「人としてなすべきこと」に向かう力なのです。
 
『ヒューマノクラシー』の著者、ゲイリー・ハメルは、皆が「Power as」となり、変革のリーダーになることを望んでいます。

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小林範之
最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。