交配
昔から自分と性質が正反対の男が愛しくて、でも実際に関わったら息が合わないことはわかっているから、小学2年生のあの日からずっと、遠くからじっと見つめていた。君のこと。1人だけ見たことのない高そうな茶色い皮のランドセルを背負っていて、1人だけNIKEのスニーカーで大縄跳びを跳んでいた。キラキラと眩しく見えた。確実に君は革命児だった。きっと雄を知らないあの時代から、この身体は遺伝子のかけ離れた個体との子孫を残すことで、強く強く自分の血をこの世に伝わせ這わせていきたかったのだろう。なんという、動物。君は中学に上がると背が高くなり、声が低くなり、少し寡黙になった。知らない冴えない女の子とイオンでデートしていたけれど、全く嫉妬しなかった。できなかった。君はあの無敵の煌めきを、革命の血を、もう失っていたから。私はかわいく快活にケラケラと笑う、小器用なモテる男が好きなのだ。そう、教室を陣取る立ち位置の女子となんともなくフランクに連んでいた君が好きだった。真面目で暗くて不器用な私の血はいつだって沸滾る熱湯のように、そんな男の血を求め渇望していたのだ。
雄を知った気でいる今の私も、食の好みも価値観も全く違うような男が好きだ。少しでも会話を交わせば疲れ果ててすぐに1人になりたくなるような明瞭快活でいて小賢しい男に、挿れられたい。服を着ていれば男根という言葉からは程遠いような、少し憎たらしい男。そんな男の身体にある全ての粘膜を保護している液体が、一滴残らず欲しくて、欲しくて。舌が乾びるまで唾液を吸い取り、涙が枯渇するまで角膜を舐め尽くしたい。そのかわいらしさと無邪気さを含む君の、雄を、遺伝子を、テストステロンを、浴びるように感じたいのだ。
入ってくる時のあの全てを忘れる堪らない硬さ。その硬さは二人がどんな体勢になっても絶妙に私の快部だけには当たらず、私は疼いたまま、もどかしいままに、君だけが果てる。生命体として、君とのあまりの質の違いを痛感する時、私の血はより沸騰してしまうのだろうか。
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