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映画「アメリカン・サイコ」 ~ 結局やってんのかどうか問題の話
年末年始休暇、ヒマなんでアマプラビデオをずっと見てる感じです。
そんな中で有名だけど観たことなかった「アメリカン・サイコ」を観ました。ネタバレしてるので、バラされたくない人は読まないのが良いです。
ただし、バレようとバラされようと作品の主題に関してはあんまり関係ないとも思います。
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1回観て面白かったけどよくわかんないところも多かったのでもう1回続けて見直したら、だいたいわかりました。
面白くて、観てよかったなと思ってYouTubeで感想とか考察系の動画を見たら、最初に見た動画の人の解釈が自分の解釈とまるで違っていて、あれ?と思って続けて他の人の動画も見たら、人それぞれ解釈がけっこう違ってました。その辺の話はまた後で。(それがこのテキストの表題の「結局やってんのか問題」)
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話としては、超エリート金融マンのパトリック・ベイトマン(マシニストのあのすごい男をやった役者が演じてます)が、エリート生活の裏で殺人鬼として犯行を繰り返すっていうもの。
序盤~中盤は大きく分けて2つのパートが繰り返される展開。
ひとつめは、飯食う店とか、着てる服のブランドとか、極めつけは自分の名刺のデザインとか紙の質とか、観てるこっちからするとバカバカしいようなことばっかり気にして、他のエリート仲間に負けまいと必死な主人公の姿を滑稽に描くっていうパート。
自分の価値を身に着けてるものとか行きつけの店とか、自分自身とは実は関係ないものに見出してるっていうバブリーな当時の滑稽な状況を観客一同嘲笑うっていうのパートです。
ふたつめは、エリート生活の裏で人を殺しまくっているというパート。エリートだけど先に書いたように中身空っぽ、だけどそれを認めるわけにはいかないっていう気持ちになってしまっている殺人鬼がその欲望を爆発させて犯行を繰り返すというパートです。
終盤は人殺しでやりすぎちゃってもう逃げられない状況になった後の展開。ただ、こっからおかしなことばっかりになるんです。
ATMに「猫を入れてください」って表示されるとか、明らかに幻覚見てるような描写も出てきて、どうやらパトリックは精神に異常をきたしている様子。
自分の顧問弁護士に罪を告白するも冗談扱いされて信用してもらえないとか、そればかりか自分が手にかけたはずの男が生きていると聞かされたりとか、もういっそ捕まりたいと思ってるのにそれすら思うようにいかないっていう何とも言えない具合に。
・・・というところで映画は終わりです。
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2回目見終わった時点での私の解釈は、終盤になって初めてパトリックが幻覚や妄想と現実の区別がつかなくなってる状態が露見するわけですが、実は最初っからおかしくなってて、連続殺人なんて実はやってないっていうもの。
あの日記帳に自分の願望を絵で描いてるうちに、その妄想と現実の区別がつかなくなっており、単にエリートが精神的におかしくなっちゃったっていう話であると。
実際には殺ってないんだから、死体を隠してあるポールのマンションも片付けられて何事もなかったように次の借り主候補の内覧みたいなことが行われてるわけで。
実際には殺ってないんだから、絶対に防犯カメラがありそうなATMとかビルの受付け付近での犯行があったにも関わらず警察が捕まえに来ないし、逃走の最中にパトカーごと警察官を爆破してもたいした騒ぎにもならない。
実際には殺ってないんだから、ポールは弁護士と飯も食うし、ちょっと前の娼婦の殺害も、あんな状況でチェーンソーが命中するわけがないと。
夢オチとか妄想オチって、そうわかった瞬間にな~んだってなっちゃって醒めがちですけど、それを補って余りある面白さを持った映画で、あ~面白かったっていう感じで私は納得したんです。
ところが私なんかより映画通の人が喋ってるYouTube動画では、私と同じように殺人なんてやってないっていう人は少なくて、全部または一部本当にやってる説の人の方が圧倒的に多かったです。ちょっとびっくりしました。
それぞれの根拠を聞くとなるほどと納得できますし、私の中でやってないで決着してたけど、もしかしたらやってたのかな?って気にもなりました。
でも、別にどっちでもいいかとも思います。
ざっくり言うと、当時のバブリーエリートの滑稽な様子をコメディとして笑うっていう部分と、中身空っぽだと心の奥では自覚しちゃってるエリートが自身のアイデンティティは何なんだと思い悩んでおかしくなっちゃうっていうサイコ展開を楽しむ部分、この2本柱で楽しむ映画ってことにしときました。
身につけてるものとか使ってる家具とか、自分自身とは関係ないものに必死になることの滑稽さっていうところと、妄想と現実の区別がつかなくなってるっていうところ、かの有名な名作「ファイト・クラブ」と似てるなと思いました。