盆の昼寝

昼夜問わず、大人になっても夢をみる人はどれぐらいいるのだろう。

私は子どもの頃からしっかりした夢をみて、かつ覚えていることが多い。1回の睡眠で何度でもみる、続きだってみる、違う日に見た街とその日の街がリンクしていることもある。相当眠りが浅いタイプの人間だ。

例になく、今日も沢山の夢をみた。

うちのばあさんが出てくる。
実際にはもう亡くなっているのだが、そこは同じだ。
何日間だけ帰ってくるという設定なのだが、その前日夜〜最終日の朝の夢だった。
彼女は生前、美容師で生計を立てていた。

慌てた私は「着付けのしかた、着物のこと聞かなきゃ」「私と同じ歳の時、どうやって鋏一本で生計をたてていたの」など、聞きたいことが目一杯あった。目一杯あったが夢なので、口が思うようにきけない。そうこうしている間に最終日の朝になってしまう。

ばあさんは笑っていた。
凝っている私の肩をマッサージしてくれた。
綺麗な黒の着物をきていた。
どこかわからない玄関先には明るい朝日のような光がさしていた。

聞きたいこと、沢山あるのに結局きけなくてしどろもどろしながら、もう離れたくない、寂しいからそばにいてと気持ちがこみ上げてくる。

「そんなことより、次いつ会えるのかわからんのだし、大好き有難うって伝えなきゃ。」

口で言えばいいのか、さっとメモをかけばいいのかどちらにしようか迷っている間にばっと目が覚めてしまった。


雨降る夕方の居間は電気もなくて薄暗かった。

鼻が詰まって息ができなかった。

現実に気づいた瞬間、私は大声で泣いた。涙が止まらなかった。


こころが帰る故郷をずっと失っている私は、本当に本当にばあさんに会いたかった。


しばらくして泣き止んで、冷静に考えてみると、

・数日だけ帰ってくる
・その前日

完全に今日のことだ。
明日は盆の送り火。

ひやりとした夕方だった。

実は子どものころ、それこそ夏休みにばあさんちで見た夢がある。
同じ盆の時期に。

その時の夢は、寝室に床の間があったのだがそこに仏様の掛け軸をして、小さな堂のようなものをばあさんは作っていた。
そこの掛け軸の裏からひょいと知らない優しい笑顔の禿げたじいさまが白衣装でてくる。ばあさんはそのじいさまに向かって深々頭を下げ、敬っているようだった。

言葉が聞こえず、朝起きてそのことをばあさんに伝えると、
「ご先祖さんが来られたか、しばらく墓にいってないからな」
とさらっと返され肝を冷やした。

そんな日もある。

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泉美 izumi
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