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『贋作』
静寂に焦がれ
孤独を愛でる
これが詩だと
夏に捧げよう
空白に染みて
面影を照らす
これが詩だと
夏に告げよう
「違う」
ありふれた救いは
背伸びした言葉に
君のための救いは
雨ざらしの画面に
行方のない悪意が
誰かへ届く矛盾と
込められた拡散が
誰にも届かない事
「全部違う」
それでも僕の内に、宿り続けるもの
記憶とは真空である。
時間に隔てられたその場所で記憶はただ存在している。
かつて抱いていた記憶、寄り添った人や言葉を失った時、我々は悲しみを覚え虚しさを抱く。
その有り余る感情が時間に薄められると、「今は存在しないもの」として真空が存在していることに気がつく。
真空とは記憶である。
我々が生み出すものは架空の贋作ではない。
我々が手放すものは想像の妄執ではない。
ただ生まれ、ただ離れていくもの。
我々は真空では生きていけないのだから。
それでも僕の内に、宿り続けるもの
『贋作』
幸福を享受した僕になんて、何もわかるものか。
生きながら死んでいる。そんな風を装っている。
「君らしくいればいい」
「君の人生なんだから」
わかったふりをする。
何もわかってないのにな。
孤独を知らない誰かが、孤独を詩にしている。
詩なんて書けもしないのに、僕はずっと
そいつらを憎んでる。
さよなら集う日々へ。
君の思想をなぞる心。
戻らない心象を覗く。
面影が夏に変わる。
あの夏が遠くなる。
幸福を享受したあなたになんて、何もわかるものか。
生きながら死んでいる。そんな己に酔っている。
「自分らしくいよう」
「自分の人生なんだから」
わかったふりをする。
何かわかっているのか。
尊厳を知らない誰かが、尊厳を詩にしている。
詩なんて書けもしないのに、僕は今日も
そいつらを憎んでる。
さよなら募る日々に。
君の思想をなぞる言葉。
返らない水を掬う。
面影が夏を告げる。
あの夏が遠くなる。
何も知らない僕らが、知りたいと願うこと。
思い出の寿命とか、自己の成れの果てだとか。
相対する誰かが詩に変わればいい。
そんなことばかり、今日も書いてる。
憎まれたくて、詩を書いてる。
消えたくないから、詩を叫んでる。
記憶の中で生きたい。
君の記憶をなぞる日々を。
離せない想いを綴る。
あの夏が遠くなる。
さよなら真空の日々よ。
僕の記憶の帰る場所よ。
褪せる心を紡ぐ。
忘れ難い夏に染まる。
あの夏が遠くなる。
ーーー
流れ去ってしまったあの年の、あの夏の
本当に素敵な一瞬は
その夏がもう二度と来ないことへの
悲しみや寂しさで覆われているけれど
その中のどれ一つだって
この思い出を穢すことは出来ないんだ
ーーー
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