T2でなければ撮れない写真はあるのか?
表紙はCONTAX T2でよくありがちな失敗写真。全体像はこちら。
ピラカンサスにピントが合っていません。
赤外線アクティブAF、こういう場面は苦手。
被写体を見て「これは赤外線が返ってこないな」と判断したら、絞って目測MFにしないと(T2では)厳しいです。
でもそういう「判断」なんて、私は、いちいちしない。「撮りたい、を、撮る」。今は1990年ではなくて2022年。「OM-1で撮りましょう」。私が間違っていました。
こちらもT2によくある例。いったいどこにピント?カメラ任せの絞りとシャッター速度で撮ったのですが、感度400なので解放に近かったのかもしれない。あと、測距点付近にうまく赤外線が当たっていなかった可能性も考えられます。
逆に、これにピントが合ったのは謎。プログラムAE、明るい場所だったので絞り値は高かったのでしょうが、無限遠にピントが抜けてしまっているようには見えない。車両前面のボルトが見える一方、正面ガラスに映り込んだマンションの手すりや車内のつり革にもピントが合っています。謎が多いんです、T2。
T2のレンズは38mm。やや広角。明るくて広い場所に強い。ここは、撮影前に「だいたいこんな絵になるだろうな」と思っていました。そのとおりになりました。
ただ、ここが「T2でないと撮れないか?」というと、それは違う。
OM-1。ピクチャーモードNatural。
T2+PREMIUM400風に補正してRAW現像してみます。
RAW現像でフィルムに色を似せるのは難しい。上手な人ならもっと近づけられるのでしょう。
一番記憶に近いのは、OM-1をRAW現像した絵のような気がする。T2は少しマゼンタが強い。ということで、今度はT2で撮った方を補正してみます。
こちらも記憶に近いような気がします。
いや、やっぱりちょっとコントラスト高いか?
結局「どれが本当なのか?」
それは「どれでもいい」です。「べんり菜の畑」には違いない。それで充分。
「記憶と完全に同じ色を再現したい」とまでは思わないです。個人の感想ですよ。私の感想。
記憶は記憶。写真は写真。これは感想ではない。
だいたい「写真」なんて翻訳がいかんのですよ。「真を写す」なんて出来ないし、誰もしていない。英語は「Photograph」。「光の画」。その表現は実態に近い。
写真技術は、手描きより速く「正確な形に近いもの」(実際の形と完全に同一じゃないですよー、収差とか色々あるので)を記録しやすい。
写真技術は、画材より速く「そこにある色に似た色」(同じじゃないですよー、レンズとフィルムの特性、センサー+RAW現像次第)を記録しやすい。
それらの記録は「記憶」ではなく「そこにあった光を記録したもの=写真」。
けれど、OM-1「Natural」の常用はちょっと考え直すことにしました。
こうして並べてみると、好みに合わないな。
タイトルに戻りまして「T2でなければ撮れない写真はあるのか?」についてですが、ないです。ないと思います。
「べんり菜」の例の通り、デジタルならRAW現像でいかようにも味付けを変えられます。レンズの描写力にしても、M.Zuiko 12-45mm/f4が劣っているようには思えない。画角も19mm(4/3なので)で撮れるのですから。実際、気がつくと18mmをちょっと超えたあたりで撮っていることが多いです。Nikonは単焦点で40mmを出していますし、GR IIIxが40mm相当なのも理由あってのこと。
ただ、この記事に出している「T2+PREMIUM400」は、4BASEのJpeg(横幅1545pixel)でしかスキャニングしていないので、ここに挙げた例でT2の真価を問うのは無理があります。
T2、「被写体まで距離があり、明るい」場面には強い。
近い被写体は苦手のようです。MFを使った方がよさそう。
こういう失敗があるのも事実。赤外線がうまく返ってこなかったのでしょう。背景のフェンスにピントが合っています。
そして、
ここでピント外すとは思わなかった。
これらの失敗例に限って言えば、OM-1ならAFで合焦していたと思います。
現実問題として、「T2で撮れない写真はあるか?」の前に「T2で失敗しやすい写真」を考慮しないといけない。
でも、驚くほど緻密に写っている時もあって、「成功すると喜びは大きい」という楽しみはあります。仕事には使いたくない・使えない・今時使う必要もないですが、「予想外の絵が撮れるかもしれない」という、気まぐれな期待感はあると思います。
同じ場所、同じタイミングで、OM-1を構えていればOM-1で「写真は撮れます」。
OM-1に限らず、今時のデジタルカメラであれば、少なくともそれなりには撮れるでしょう。
確かに「T2と同じ写真」を得ることは難しい。RAWを調整して、完全に同じ色味、レンズの歪み、周辺光量の落ち、それが再現できるかと問われると、それはとても難しい。これは、やってみて分かりました。
私には出来ない。
やりたくない。
やっても(私には)意味がない。
再びOM-1(Natural)。色をRAW現像でもっと持ち上げられるのは、さきほどの「べんり菜」を見れば想像がつきます。
RAW現像してみた。これがお手本です、とか、これが正しい、とか、そういうことではないです。T2+PREMIUM400に似せた訳でもありません。「好みの風合い」にしてみました。
Adobe Vividをベースに、少しいじっています。実際に見た色は、OM-1のNewtralの方が近かったような気がします。でも、華やかな色が好きなので。
カメラ設定(OM-1)のVividという選択肢もあるのですが、色彩の研究はAdobeの方が微妙に上手な気がします。
「T2では、こうならないでしょう?もっと違う絵になるでしょう?」
そうでしょうね。そう思います。今、何が何でも「T2の画でなければならない」という気持ちは、私にはないのです。
繰り返します。
T2でなければ撮れない写真、というのは、ないと思います。
けれど、光があって緻密な被写体がある時に、一呼吸置いてシャッターを切るなら、T2も良いのかもしれない。
フィルムなので「RAW現像出来ない」ですが、フィルムの選択によって「いい色」を得ることがある。
そして、OM-1のRAWをT2+PREMIUM400の風合いに近づけようとしてみたけれど、相当難しい。「そんなことをしている暇があったら、最初からフィルムで撮った方が速い」。
今回使ったのはカラーネガですが、ネガカラーというのはどうしてもポジより色があっさりと仕上がりやすい。今回のPREMIUM400の仕上がりも、ポジの記憶には届いていない。
今、銀塩ポジフィルムって感度100までしか発売されていません。でも明るければT2(焦点距離38mm)、手持ちに耐えます。
30年前には、感度50のVelviaをT2に詰めていました。あれはいくら何でも厳しかった。ピントを外すことがあるのは変わりませんが、ぶれ、アンダーが多かった。けれど必ずしも「全滅」ではなかった。
桜。T2、Velvia50。
いい写真とは思わないですよ。仕事を辞める最後の出勤の朝、職場の近くの桜。まあそんな話はどうだってよいのです。感度50で撮っていたんだなあ、RAW現像なしでこういう色が出ていたのか、と。
これからですが、たまにはT2にフィルムを詰めて撮ってみたい、と思います。
久しぶりにポジ試したいな。Velvia50はきついな、Velvia100で何か考えた方がよいかな、と考えております。