Empty / Kevin Abstract [和訳,解釈]
BROCKHAMPTOMのリーダーでもあるKevin Abstractの2ndアルバム『American Boyfriend: A Suburban Love Story』(2016) の一曲目”Empty”の和訳、解釈です。
荘厳なストリングスから始まり、リズミカルなピアノが印象的な曲です。しかし、歌詞では対照的に彼の恵まれていたとは言えない高校時代の家族や恋人との関係が描かれています。アルバムの一曲目ということもあり、アルバムの方向性を示す曲と言えるでしょう。彼の心情に伴って変化していくボーカル、深い葛藤が表れた歌詞に注目です。
[Verse]
Sweaty palms as I walk down this empty road
何もない道を歩くとき手が汗ばむんだ
I got a mom but we ain't spoke and I don't know
母親に育てられたけどもう話すことはない、自分でも分からないけど
I had a heart that don't speak to me anymore
今じゃ話すこともないけど恋人もいた
And life get hard but these last days mean many more
生きるのが辛くなってきてる、最近は特にそう
I'm just tryna get my bands up
俺はただ成功するために頑張ってる
band upは金を稼ぐというスラング、彼はバンド(ヒップホップクルーとも言えますが彼らは自身のことをボーイバンドと表現しています)を組んでいるため「バンドを有名にする」という意味とのダブルミーニングになっているかもしれません。
While you running through the banners
君が横断幕を通り抜けてる間も
フットボールなどのスポーツでは試合のオープニングで横断幕を駆け抜ける伝統があります。学校で人気な彼氏とそうではないケビンの対比になっています。
I don't understand us, you should find your way (Home!)
自分たちが何なのかもわからない、君は自分の道を見つけるべきだよ(家へ!)
ケビン(と彼氏)はまだカミングアウトをしていないため、彼氏との関係に確信を持てません。そして、彼に対して自分らしくあるよう、または文字通り家に帰るよう提案しています。
I hate my yearbook photo
卒業写真が嫌いだ
I hate my passport, I hate my last name
パスポートも苗字も
I hate everything it stands for, I should probably fucking transfer
俺を決めつけるもの全てが嫌いだ、転校すべきなのかもね
Blue and brown JanSport, tired of public transport
青とブラウンのジャンスポーツ、通学するのもうんざりだよ
I never went to prom, now I'm stuck on the dance floor
一回もプロムに行ったことないのに今はダンスフロアで動けない
Just holding your hand, just holding your hand
君の手を握ってる、ただ握ってる
文字通り彼は高校時代に一度もプロムに行ったことがありませんでした。しかし今はダンスフロアで特別な相手とただ手を握っている、プロムに行かなかったことは気にしていないのです。
[Chorus]
And I'll be (I'll be)
Right outside your front door on my 12 speed (My 12 speed)
君の家の前で待つつもりだよ 12速のバイクにまたがりながら
I got your emotions tattooed on my sleeve (My sleeve)
君の気持ちのタトゥーを見せびらかすんだ
恋人のことが頭から離れない状況をタトゥーに例え、そのことを他の人にも知ってほしいという気持ちが描かれています。上の12速のバイクは彼と外に飛び出す(比喩としても)ための準備と考えられます。
※"wear your heart on your sleeve"は自分の気持ちをはっきりと周囲に表すという意味の慣用句
I think about you all the time, I've waited for you all my life
君のことをずっと思ってるんだ、人生をかけても君のことを待つよ
I need you right here by my side
そばには君が必要だから
[Bridge]
Blowin' off my mom, I don't wanna go home
母親のことはもう知らない、家には帰りたくないんだ
I'd rather be alone, I don't wanna go home
一人でいたい、家には帰りたくないんだ
It's getting really late so I gotta go home
こんなに遅いから家に帰らないと
Mom's blowin' up my phone so I gotta go home
連絡がうるさいから家に帰らないと
I love my mom, I hate my boyfriend
母親を愛してる、彼なんて嫌い
Do you love my mom? (I love my mom, I love my mom)
ほんとに母親を愛してる?(愛してる、愛してる)
Do you hate my boyfriend? (But I love my mom)
ほんとに彼のことは嫌い?(だけど母親を愛してる)
この部分では彼の心に生じる疑問が表されています。彼は母親が自身のセクシュアリティを受け入れてくれないことを知っていたので、母親を愛するか彼を愛するかの二択に頭を悩ませ、結局母親を選んだように思われます。しかし彼にはまだ未練があり、自問(Do you~の部分)するほど自分の置かれている状況に混乱しています。
[Chorus]
And I'll be
Right outside your front door on my 12 speed
君の家の前で待つつもりだよ 12速のバイクにまたがりながら
I got your emotions tattooed on my sleeve
君の気持ちのタトゥーを見せびらかすんだ
I think about you all the time, I've waited for you all my life
君のことをずっと思ってるんだ、人生をかけても君のことを待つよ
I need you right here by my side
そばには君が必要だから
I'll be (I'll be)
Right outside your front door on my 12 speed (My 12 speed)
君の家の前で待つつもりだよ 12速のバイクにまたがりながら
I got your emotions tattooed on my sleeve (My sleeve)
君の気持ちのタトゥーを見せびらかすんだ
I think about you all the time, I've waited for you all my life
君のことをずっと思ってるんだ、人生をかけても君のことを待つよ
I need you right here by my side
そばには君が必要だから
[Outro]
Empty home
空っぽの家
Empty, empty, empty home
空っぽ、空っぽ、空っぽの家
この部分では子供の合唱隊のような声が聞こえます、emptyの可愛らしいp音と合わさり、印象的なフレーズになっています。
I wanna be American
アメリカ人になりたいよ
彼はアメリカ人ではありますが、アメリカ人になりたいと歌い歌います。ここで人種や性的指向などでマイノリティな面を持つ彼は未だ差別などの残るアメリカ社会を風刺しています。または単純に典型的なアメリカ人になりたいと歌っているのかもしれません。どちらにせよ現代アメリカ社会が透けて見える強烈な一文だと感じます。
My family’s gone, but I don’t care because I love
Them
家族はいなくなった、でも構わない 彼らを愛してるから
彼は二択に対し、家族から嫌われることは承知で彼氏を選びました。しかし彼は同時に心の中では家族も愛しています。
また、ここで彼が高い声で歌うのは家族から愛されていた子どもの頃を表現しているからかもしれません。