労働審判手続について詳しく知りたい方へ
飯田橋法律事務所では、内定取り消しにあった/試用期間中に解雇された/正社員であったにもかかわらず解雇された/解雇通知を受け取ったが理由がわからない/というご相談に対応しています。
そのなかで、迅速な解決が期待できる労働審判の申立てを選択する方が多くの割合を占めています。
そこで、労働審判の手続や内容について記事を記載します。弁護士に相談する前に基本的な内容を知っておくと有益であると思います。
例えば、以下のようなご相談者が、いらっしゃいます。
第1 労働審判の特徴|通常訴訟と比べた場合の違いとは
1.早期解決を可能にする
労働審判は、解雇などの労働問題の早期解決を可能にする制度です。
労働審判は、原則3回以内で審理を終結しなければならないと法律で定められています(労働審判法15条2項)。通常の民事訴訟と比較して早期に解決に至ることが期待されています。
実際に、労働審判の97%以上が3回以内に終わっており、約7割は2回以内の期日で終了しています。
最高裁のデータによると、労働審判事件の平均審理期間は、107.5日でした。3か月程度で一定の解決をみているとの評価が可能です。
(最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の「2.地方裁判所における民事第一審訴訟事件の概況及び実情」表16、令和3年7月30日公表、https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/09_houkoku_3_minji.pdf)
なお、労働審判の平均審理期間は、前回の報告書(令和元年7月19日公表)では80.7日であり、審理期間が長くなっています。しかし、新型コロナウィルス感染症の感染拡大や緊急事態宣言の影響により、裁判所において労働審判期日が開催できず、開催の頻度が減ってしまったためであると考えられます。
他方、通常の民事訴訟は、裁判迅速化法により、一審手続は2年以内のできるだけ短い期間内に終えることが努力目標とされていますが、何回法廷を開くか期日の回数に特段制限は設けられていません。
特に労働事件は事実関係も法律関係が激しく争われることが多いため、概ね8~10回程度(1年)の期日が開かれることが多いです。
2.裁判官だけでなく「労働審判員」も審理に加わる
労働審判は裁判官だけでなく、「労働審判員」という労働組合の役員(労働者側代表)や企業経営者・人事担当者(使用者側代表)を含めた3名から成る「労働審判委員会」が審理を行います(労働審判法9条)。
このように、裁判官以外の第三者が審理に加わるのは、民間企業の労務管理や実情に詳しい方が参加することにより、適切かつ妥当な解決を図る趣旨です。
3.直接口頭主義
通常の民事訴訟の場合、準備書面という書面と紙の証拠を交互に提出する方式で審理が進んでいきます。これに対し、労働審判は原則として書面や証拠を出すのは第1回期日前までで、期日当日は口頭でやり取りがおこなわれます。
その上で、第1回期日においては、予め双方の主張と証拠を読み込んでいる労働審判委員会から、直接双方当事者(労働者や会社の担当者)に質問がなされ、当事者がその場で答えなければなりません。
直接口頭でやりとりをすることにより、証人尋問や本人尋問を先取りするからこそ、第1回期日で、労働審判委員会が、事件に関する心証形成をすることができ、当事者双方に、具体的な和解が提示することができるようになります。
4.権利判定機能
労働審判の大きな4つ目の特徴として、権利判定機能があると言われています。
労働審判の流れとして、3回目期日までに双方が提出した準備書面や証拠を吟味し、当時者双方が、お互いに譲歩して妥当な解決水準を模索することになります(労働審判法15条2項)が、合意に達せない場合は、労働審判委員会が調停を成立させるべく「調停案」を提示するなどして、調停の成立に尽力します(労働審判法1条、規則22条1項)。
調停が成立し、これを調書に記載したときは、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有します(労働審判法29条2項、民事調停法16条)。
そして、当事者において見解の隔たりが大きい場合などに「調停」は打ち切られることがりますが、このようなときは「労働審判」が言い渡されます(労働審判法20条1項)。
双方の主張立証を踏まえて、労働審判委員会が、妥当と考える解決内容を具体的に労働審判という形で、提示することになります。
労働審判手続では、相手方が裁判所の呼出しを無視すれば、欠席判決ならぬ「欠席労働審判」が出るリスクがあるため、会社側が出廷しないことはほとんどありません。
また、「労働審判」は裁判所のれっきとした判断(公権的判断)ですから、確定すれば判決と同一の効力があり、差押え等の強制執行をすることも可能となります。
労使双方にとって、通常の民事訴訟を行って時間をかけて判決をもらうよりも、労働審判の段階で、双方に納得のいく「調停」を成立させようという動機が生まれます。
この権利判定機能こそが、労働審判制度の成功(順調な利用件数推移、高い調停成立率)の要因といわれています。
5.異議が出れば通常訴訟に移行する
調停が成立せずに「労働審判」が言い渡された場合、これに不服があれば異議を申立てることができます。
異議の申立ては訴え提起とみなされる(労働審判法21条1項、22条)ため、通常の民事訴訟に移行することになります。言い渡された労働審判の効力は失われるので注意してください。
労働審判を経由した場合、基本的に双方の主張立証をいったん済ませており、いったん労働審判が出されているという段階になりますので、裁判所より第一回の口頭弁論期日から和解勧告があるなど、最初から通常の民事訴訟を起こした場合よりも、解決までのトータルの時間は短くて済むことが多いように思います。
第2.労働審判を申し立てられる内容
労働審判手続の対象は、「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(個別労働関係民事紛争)」(労働審判法1条)です。
実際の手続では特に解雇の効力を争う事件や賃金や退職金を求める事件が主を占めています。なぜなら、解雇事件等は、争点が明確な場合が多く、直接口頭主義を採用している労働審判手続に適しているからです。
なお、労働審判制度は、個別労働関係民事を取り扱いますので、労働組合等の労働者団体は、労働審判の申立をすることができません。また、公務員が懲戒処分の取り消しを求める紛争は、行政事件になりますので、労働審判の申立をすることができません。
また、労働審判制度は、「事業主との間に生じた民事に関する紛争」(労働審判法1条)であり、パワハラやセクハラの被害を受けた方は、会社ではなく加害者本人を相手方として労働審判の申立をすることができません。
1.対象は権利関係のみ
労働審判として申し立てられる対象は、次から紹介するような「賃金に関するトラブル」、「解雇に関するトラブル」などの、いわゆる労働者としての権利・利益に関わる争いです。
賃上げ交渉などの利益闘争には労働審判を利用することができません。利益闘争については労働組合などに相談すると良いでしょう。
2.賃金に関するトラブル
賃金に関するトラブルには次のものが挙げられます。
①残業代未払い
②給料未払い
③退職金、賞与未払い
④労働条件の不利益変更 など
労働契約書や就業規則等に記載されている内容と、実際に支払われている賃金が少ないなどの場合は、会社に確認をしましょう。会社がきちんとした説明ができない場合など、労働基準監督署や弁護士に相談した上で、適正な賃金の支払を求める趣旨で労働審判を申し立てることを検討できます。
3.雇用に関するトラブル
雇用に関するトラブルとしては次のものがあります。
①不当解雇、整理解雇
②雇い止め
③退職強要、退職勧奨
仮に、あなたが、会社から退職勧奨を受けて辞表を提出するように求められていたり、特に理由が思い当たらないのに解雇通知を渡されたりなど、会社による不当な扱いを受けたと感じた場合は、労働基準監督署や弁護士に相談した上で、労働審判を検討することができます。
4.労働組合と会社の争いは、労働審判でできない
上記したとおり、労働組合と使用者との争いは、労働審判で対応していません。
労働審判法に「個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」(労働審判法1条)とあり、労働組合は団体であって「個々の労働者」ではないとされているからです。
5.パワハラやセクハラなどの、対個人の労働審判はできない
パワハラやセクハラなどでは、労働審判で、加害者個人を相手方として争うことはできません。なぜなら、個別労働関係民事紛争(労働審判法1条)ではなく取り扱ってもらえないからです(労働審判法第6条)。
もっとも、パワハラやセクハラについては、会社には労働者に対する安全配慮義務がありますので、会社を労働審判の相手方とし、安全配慮義務やパワハラ防止等の法令上の義務に違反したとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。
証拠を収集した上で、弁護士に依頼をし、交渉、労働審判、民事訴訟の手続選択を検討するのがよいでしょう。
6.原則として、公務員の労働審判はできない
公務員は、国家公務員法や地方公務員法に基づき採用されておりますので、公務員と国・地方自治体との紛争は、民事に関する紛争に該当しないものとして、労働審判の対象にはなりません。
第3.労働審判の申し立て手続き3つのステップ
労働審判を行おうと考えた場合、まず何から始めればよいでしょうか。
こちらでは、労働審判を申し立てるまでの手続を説明します。
①証拠を集める
まずは、申し立てる事件に関する証拠を集めましょう。
賃金関係のトラブルの場合には、
雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、タイムカード、作業日報、業務日誌、勤怠表、給与明細等についてあらかじめ準備しておきましょう。
雇用に関するトラブルの場合には、
労働条件通知書、雇用契約書、就業規則、人事評価表、解雇通知書、解雇理由証明書等について、
あらかじめ準備しておきましょう。
さらに、自分で申立てをする場合は、提出する証拠を説明する「証拠説明書」も作成すると良いでしょう。作成方法については、裁判所の作成した「証拠説明書の作成要領等」(https://www.courts.go.jp/hiroshima/vc-files/hiroshima/file/30208004.pdf)が参考になります。
当事者は証拠を収集することが重要です。労働審判は、証拠によって認められた事実に基づいて判断が行われるからです。証拠をもって事実を立証できるかは、裁判所の判断傾向などの理解が必要不可欠になります。経験のある弁護士への依頼をおすすめします。
②申立書の作成
労働審判の手続は、申立てをすることから始まります(労働審判法5条)そして、申し立ては書面でしなければなりません。まずは、申立書の作成から始めましょう。正式には「労働審判手続申立書」です。
なお、労働審判においては申立書の作成が重要です。なぜなら、労働審判において、異議が出た場合には申立書が訴状とみなされる(労働審判法22条3項)ことから、申立書は、訴状と同様に記載する必要があるとされています。そのため、申立書には、労働者側の主張を、その請求が妥当であると法律の要件に沿って記載する必要があるからです。
また、裁判官や労働審判員は申立書を読み、第一回の期日までに「心証」、つまりどのような結論を出すかの大まかな枠組みを決めます。申立書の内容が不十分であると、あなたに不利な心証を形成させてしまうかもしれません。
申立書の作成については、
裁判所が作成した記事「労働審判手続申立書の見本」(https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minjibu/index.html)が参考になります。
しかし、本社が他県にあるなどの場合は、勤務地を管轄とする裁判所で審理を行うなど、労働審判では労働者に配慮された規定もあります。
法律の専門家である弁護士に相談し、労働審判の申立てを依頼することを検討してみましょう。
第4.労働審判の手続きの流れ
①第一回審判期日の決定と呼び出し
申立書を提出すると裁判所から第一回期日を指定するとの連絡があります。会社側にも裁判所から通知が届き、第一回期日が知らされ、出頭するように呼び出しがあります。
第1回期日は、原則として、申立てされた日から40日以内の日に指定されます(労働審判法14条、規則13条)。
②第一回審判期日
指定された期日に、裁判所で第一回期日が行われます。提出した申立書、証拠と会社側の用意した答弁書と証拠をもとに、裁判官と労働審判員を交えて事実確認や、当事者同士の話し合いが行われます。手続は、非公開で行われます(労働審判法16条)。
第1回期日で双方の互譲により解決方法が定まった場合には、第1回期日で終了することもあります。裁判所が調停調書を作成し、裁判所が職権で判断する場合は審判という決定が下されます。話し合いでまとまらない場合は、審判期日は続行します。
③第二回審判期日
第二回期日では、第一回期日で提出された申立書、答弁書、証拠、事情聴取により獲得した事実関係に基づき、調停を試みます。
④第三回審判期日
事実確認で双方の意見が大きく食い違い調停が成立しない場合など、第三回期日が行われます。
原則として労働審判は、第3回期日までで終了します。3回目の期日で話合いがまとまれば調停により終了し、まとまらない場合には、裁判所による審判が下されます。
以上が、労働審判の流れになります。
労働裁判は、話し合いで解決する「調停成立」か、裁判所が「労働審判」を行うという、どちらかの結果になります。労働審判に異議が出なければ、当該紛争が終局することになります。
裁判所のデータによると、調停成立により終局する割合は68.1%です。そして、労働審判により終局するのは16.2%です。調停で解決に至る方が多いことがわかります。
話合いがまとまり調停が成立する割合が7割弱ですので、紛争の実情に即した迅速で適正かつ実効的な紛争解決になっていることがわかります。
最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の「2.地方裁判所における民事第一審訴訟事件の概況及び実情」表15、令和3年7月30日公表、https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/09_houkoku_3_minji.pdf
第5.労働審判によってもたらされる3つの結果
労働審判は、大きく3つの結果に分かれます。
話し合いで解決する → 調停成立
裁判所が決定する → 労働審判
労働審判に異議を申し立てる → 訴訟手続移行
1.調停成立
調停とは、話し合いによる和解のことです。調停が成立すると裁判所が調停調書を作成します。
上述しましたが、調停が成立し、これを調書に記載したときは、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有します(労働審判法9条2項、民事調停法16条)。
調停調書とは、話し合いにより当事者同士が合意した際に作成される合意文書です。裁判所が当事者に確認をした上で作成をします。調停調書に記載されている金員の支払義務を怠った場合、強制執行手続を取ることができます。
2.労働審判の確定
労働審判は、告知を受けた2週間後に確定します。労働審判の確定は判決と同じ効力があり、その内容を覆すことができなくなります。この場合も、金員の支払義務を怠った場合、強制執行手続を取ることができます。
3.労働審判の異議申立てと訴訟手続
仮に、労働審判の結果に不服がある場合は、異議を申し立てします。労働審判の告知から確定までの2週間までの間に異議を申し立てなくてはなりません(労働審判法21条1項)。
異議申立てをすると通常の民事訴訟に移行します(労働審判法22条)。その場合、労働審判の申立書は訴状とみなされます(労働審判法22条1項、3項)。しかし、その他の主張書面や証拠は引き継がれませんので、再度、証拠等を提出し直す必要があります。
第6.平均的な労働審判にかかる期間は?
労働審判は、最大で3回の期日が開催されます。
裁判所のデータによると、労働審判事件の平均審理期間は107.5日であり、訴訟より迅速な解決を実現しています。
平均審理期間は、前回の報告書(令和元年7月19日公表)では80.7日であり、審理期間が長くなっています。新型コロナウィルス感染症の感染拡大や、緊急事態宣言の影響により、労働審判期日の開催ができなかった又は頻度を減らしたことによると考えられます。
(最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の「2.地方裁判所における民事第一審訴訟事件の概況及び実情」表16、令和3年7月30日公表、https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/09_houkoku_3_minji.pdf)
第7.労働審判を行うことのメリット・デメリット
1.労働審判のメリット
(1)迅速であること
労働関係訴訟は平均15.9ヵ月の期間を要し、解決までに1年以上の期間を必要とします(前掲「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」)。しかし、上述したとおり労働審判なら3ヵ月程度で終了します。
(2)専門性が高い労働審判員が担当すること
労働問題を得意とする裁判官が審判官となり、また、労働問題に詳しい審判員(労働審判法9条、労働審判員規則1条)が審理を担当します。申立人が、うまく証拠を集められなかったり、証言がしっかりできなかったりしても、労働審判員が豊富な経験をもとに、事案を見て適切な解決方法を模索してくれます。
裁判所HP「労働審判員」
https://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/roudou_sinpanin/index.html
(3)個人で申立てをしても解決の見込みがあること
労働審判の場合、通常の裁判に比べて審判体が主導して手続を進めてくれます。弁護士をつけない場合であっても、ある程度のサポートを受けられることが想定されます。
客観的に会社の対応が違法又は不適切な事案であれば、弁護士をつけなくとも審判体が主導して妥当な判断に至る(または妥当な形での和解を成立させる)という可能性もあります。
(4)強制的に話し合いに持ち込める
労働問題は、「契約書に書いてあるから」「会社のルールだから」と聞く耳を持たない使用者がいます。その場合も、労働審判の申し立てを行えば、法的な手続である以上、期日前に主張を書面で提出し、期日にも出席することが期待できます。
使用者が審判に参加しなくても、審判が進められることもありますが、使用者が主張を提出しなかったり、理由なく欠席した場合は、労働者側の主張を前提とした審理がなされ、申立書の内容に沿った労働審判が出されることもあります。
2.労働審判のデメリット
(1)異議を申し立てられると、訴訟に発展する
労働審判の異議は、理由なく申し立てることができます(労働審判法21条)。
例えば、会社側が労働審判に問題があると考えた場合に異議を申し立てて訴訟にまで持ち込まれる可能性があります。しかし、民事訴訟において具体的には平均1年以上の期間を必要とするため、労使双方に負担が大きくなります。
(2)法的な要件をおさえ正しく主張・立証するのが難しい
下記のとおり裁判所は労働審判の際に弁護士への依頼を推奨しています。期日当日は主に口頭でやりとりがおこなわれ、その場で直ちに発言を求められるからです。
あなたが有利な結果を手にするには、法的な要件を押さえた上で、主張・立証しなければなりません。
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/roudousinpan/index.html
第8.労働審判を行うかどうかの判断基準
1.労働審判を行ったほうが良い人
(1)会社が話を聞いてくれない
メリットの部分で説明しましたが、労働審判には一定の強制力があります。会社側との協議をしても何も進展が見られない、会社側が全く態度を変えない場合などにおいては、労働審判の活用を検討しましょう。
(2)会社と戦うことに関して情熱と覚悟がある
労働審判は、弁護士を付けずに個人で戦えば費用を低額で抑えることが可能です(印紙代と交通費程度。)。
自分で証拠を収集し、申立書を書いたり、会社側の反論に再反論をするなど、多少面倒なことでもやりきれる覚悟があるのであれば個人でも対応できるかもしれません。
(3)解雇の理由が明らかに不当な場合、会社が支払うべき賃金を遅滞している場合
労働審判のメリットに迅速性があります。会社の解雇理由が不明である、給与が何か月も支払われないなど、会社側に争う材料がない場合においては、労働審判手続で適切に早期に解決することが見込まれます。
(4)忙しく、時間があまり作れない人
労働審判に出向く回数は最大で3回になっています。忙しくて裁判所になかなか行けない人でも対応は可能ではないでしょうか。
2.労働審判を行うかどうかにも法的な判断が必要になります
(1)証拠や交渉材料が少ない
労働審判は、訴訟よりもハードルが低いと考えられがちですが、証拠や交渉材料が全くない場合には、十分な審理はできません。しっかりとした準備をしないまま、労働審判を起こしても問題の解決にならないこともあります。
(2)弁護士に相談を
労働審判を行うべきかどうかも含めて弁護士に法律相談をされることをお勧めします。
第9.弁護士への依頼は労働審判をさらにスムーズに確実に進める必殺技
労働審判を利用すれば、会社側とのトラブルを迅速に解決できる可能性が高まります。費用や審理期間も訴訟ほどかかりません。
裁判官や労働審判員に対して正しく主張・立証するには、申立書の記載内容や提出する証拠がとても重要になります。
裁判所HPにおいても、労働審判手続に関して「期日において状況に応じた的確な主張、立証を行うためには、必要に応じて、法律の専門家である弁護士に依頼することが望ましいでしょう」とされています。
弁護士に依頼すれば、申立書の作成、証拠の収集、労働審判の出頭などを任せることができます。労働審判をすべきかどうかの判断から、労働問題を扱っている弁護士に相談することが肝要であると考えています。
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