集客が辞めた人系強いスズメさん
PM4:44
言うまいと思っていたが、暑い。
ドアを開けた瞬間、その野暮な言葉を吐き出した。
SASUKEの1stステージの丸太を一歩目で踏み外すように。
まぁいい。だってなんかもう、凶々しいもん。
先日、雷で遅延している埼京線の満員電車で隣がデニスロッドマンの2Pカラーみたいなサンアントニオ時代の緑頭の人にずっと舌打ちされたときの、あの凶々しさと心地悪さと人恋しさ。
夜勤明けの気怠い目覚め。
ネタ合わせをしたらまた直ぐ夜勤。
「皆が不思議がる部分を、自分の人生から消去していく」
コンビニ人間を思い出す。
とにかく明日から頑張ろうと思い続けている。
AM5:30
「豆乳を飲みたい」という利用者さんの願望とルーティンに従い車椅子を押しながらマルエツへ。
凸凹の道の避け具合、日陰の道を誘うスムーズさ、優秀な工作員のような最低限の口数、妖精芸人フェアリーシモさんに「ステルス」と呼ばれるだけあって、車椅子の操作も馴染んできた。まだ新聞配達のバイクの排気ガスの残り香が漂うこの時間でも、車椅子を押しながらだと汗が滴る程に暑い。でも、人が少ないというかほぼいないこの時間が好きだ。人も車も通っていない道の赤信号を待つ時間も悪くない。なんだか心に余裕が出来てきた。いや逆上がりが出来るまで帰れなかったあの時間は返して欲しい。夜勤明け前にもう浴びれる朝日はとても眩しい。
PM7:30
「漫才で掴みたい」という相方からの熱量10理屈0の要望に加担して三輪車を押しながらマイクスタンドへ。
凸凹の道はないし、太陽の光が届かない地下だが、優秀な工作員のような人(ニン)はそのまま残る。私の中で介護と漫才の円と円の重なったところ。
「どうも実行犯と受け子です」
ここから一切使われない三輪車がネタの途中に何度も目に入る。
いつも掴みのためだけに使われる三輪車はどんな気持ちなのだろうか。私のスズメのワッペンのように泣いているのか。私のアイデンティティのように消滅して違和感を無くしてくれているのか。なんでもいい抱きしめたくなる。
PM23:59
日付変更線が超えるか超えないか。
近所の銭湯仲間のジミー・アレックスさんと水風呂に浸かっていた。
「フゥー！水風呂もお宿も最高ぉ〜！」
ネタ終わりの決め台詞
「it's wonderful！」と特大のテンションとジャンプで終わるそれは水風呂の中ではなかったけど、終始いつものハイテンションで、私の右耳はデジャブを感じた。爆笑オンエアバトルと熱唱オンエアバトルが大好きな初代ファンタジー王。あなたこそ最高だ。
石を投げれば評価に飢えている賞レースを控えた芸人に当たるこの時期は、暑いし熱いしやっぱり暑いから、こういう時間が必要だ。ドラクエの祠のBGMが脳内再生される。
ついこないだまでしっかり夏バテした身体を銭湯が行けるまで回復してきたが、ここから何面クリアしなくてはならないのか、
余計なことを考えると、ジミーさんと一緒にいるのに、私は家にいるときと同じ天井を見つめてポカーンとしてしまっていた。。
「いや、こっから売れんの！？そっから捲るの！？ってのやる！」
横須賀歌麻呂さんが映画を撮り終えた後におっしゃっていた。「東京アディオス」と「YARIMAN HUNTER」。私のAppleMusicの再生リスト一位は「よだか」だしYARIMAN HUNTERのTシャツはパジャマで勝負Tシャツだ。
「あなたは神様だ〜あなたは神様だ〜」
オムツ交換をしているときに毎回過剰に褒めてくれるおじいちゃん。オムツ交換のときは神様になるが部屋のカーテンを開け閉めするときは「この無礼者！」になる。
「集客が辞めた人系強いスズメさん今月も助かります！」
褒めてるのか貶してるのか、一度刺したら身体から抜けない加工をされた婉曲なナイフで刺してくるような、キャラで誤魔化されて気付きづらいふとしたときに言い放たれてる相方の発言は、メモを取らざるを得ない。
あ…
金髪の方が何人かいたから、途中ジミーさんは入れ替わっていて知らない人に声をかけそうになって、危ねってなった。
風呂上がりに飲む牛乳は私の奢り。
KOCの予選で使わせて貰った小道具のマイクの恩は今年いっぱいかけて返したいからだ。
帰りはバイク。
夜風が筆舌に尽くしがたい気持ち良さ。
しかしもう数日で乗り換えることになるSR400。
2年しか乗れなかったけど最高の思い出が詰まっている。
以前ホーネットを売ってしまったときも長い期間引きずってしまったから、今度は気持ちの良いお別れを出来るか快男児の本懐が試される。フルメタルジャケットの太ったやつみたいに銃と会話して恋人になる首の皮一枚まできたかゆうま日記より。
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